繰り返し眺めることで気づき、深まる世界があるのでは。
山や自然を撮るにあたり、さまざまな写真集を手に取ったという野川かさねさん。
「偉大な先輩の仕事を拝見し、この時代にわたしがどう撮っていくのかを、流れを踏まえてとらえたいと思いました」
そして、百冊を超える写真集を繰り返し眺めるという。
「見るたびに気づきが違うので、間を開けて何度も読みます。とことん深掘るのが好き……職業病ですかね(笑)」
自然:
読後、自然の見え方が変わる……
『FIELD GUIDE』
「彼は研究者で自然に対する造詣が深いけれど、それを再構成し、自然の見方、とらえ方そのものを新たに提示している。その観点がすごいですね」
ヨヘン・レンペルト著 ¥1,800
2016年 IZU PHOTO MUSEUM 160ページ 19.5×15cm
旅の記録:
歩く旅、そのものを作品に
『EL CAMINO』
「ウォーキングアーティストによる、巡礼の道を旅した記録写真集。いつかわたしも個人的な記録を作品にできたら……」
ハミッシュ・フルトン著 $49.5 2008年 Fundacion Ortega Munoz
138p 25×30.5cm
自然:
自然を撮るうえでのバイブル
『野性にこそ世界の救い』
「その自然を見るまなざしに、初めて触れたときは打ちのめされました。とことん眺め、わたしはなにを撮るべきかを考えています」
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー文、エリオット・ポーター選・写真、酒本雅之訳
¥4,900 1982年 森林書房 106ページ 19×24.5cm
山岳写真:
山と共に生きる先人が描いた、山岳世界
『北アルプス黎明 穂苅三寿雄ガラス乾板写真集』
「わたしの山の写真は通って撮ったもの。それとは別の視点で、山と共に生きて撮っているという、人生込みの写真に感銘を受けます」
槍ヶ岳山荘著 ¥2,200 2002年
信濃毎日新聞社 106ページ 24.5×26cm
写真家:野川かさねさん
山や自然をテーマにした作品を発表し、雑誌や書籍などの撮影を手がける。共著『山小屋の灯』(山と溪谷社)ほか、著作多数。
写真集を眺めることは
いろいろな栄養を取ることのよう
「写真集を見るというのは、いろんなものを食べて体を作ることに似ていると思います」
そう語る永易量行さん。写真集に限らず、映画や音楽も、気持ちよいと感じる作品にたくさん触れるという。
「仮に忘れてしまっても、そのとき美しいと感じることが重要。それらを吸収し、消化していれば、いつかそれは自分の表現として、写真に現れてくるものだと思っています」
スポーツ:
作り手の情熱にあふれる、会心の一冊
『XVIII Olympiad Tokyo 1964』
「日が沈み、照明のないなか、ギリで写した一枚が見開きに……。写真家の心情が痛いほど伝わるし、全編にあふれる情熱に震えが走ります」
朝日新聞社 ¥2,800 1964年
217ページ 28.8×19cm
ルポタージュ:
ユーモアあふれる極上の一冊
『Elliot Erwitt Snaps』
「なにを撮っても抜群に上手く、ユーモアが漂う。アーウィットみたいに撮ってという注文が、いちばん過酷な要求でしょう(笑)」
エリオット・アーウィット著 £29.95 2003年 Phaidon Press 240ページ 27×19cm
ピクチャーブック:
スペイン人作家による言葉をもたない絵本
『BIRD』
「言葉をもたない水彩画の絵本です。写真だけでなく、絵画や映画などよいものを取り入れて消化したいと思っています」
BEATRIZ MARTIN VIDALイラスト
$16.95 2015年 Simply Read Books 36ページ 20.3×28cm
宇宙:
「写真表現は芸術か?」ここに隠された答えが……
『MARS 火星 未知なる地表 ―火星探査機MROが明かす、生命の起源』
「人工衛星から火星を自動撮影した写真集。写真表現は必ずしも人間を要せず創造性を生み出す……写真の本質を深くえぐった一冊です」
¥12,000 2013年 青幻舎 272ページ 35.7×29.5cm
フォトグラファー:永易量行さん
山岳雑誌から広告まで、幅広い撮影を手がける。精力的に撮影を行なう一方、ランナーとして年間4000km以上を疾走する。
※構成/麻生弘毅 撮影/永易量行 野川かさね
◎紹介している本の書誌情報は、すべて発行当時のものとなります。
(BE-PAL 2020年7月号より)