地方移住が密かなブーム。田園回帰を求める人々
精力的な経済活動を求める熱意ある若者たちが都市部を目指す一方、近年は都市部から地方へ移住する人々の割合が増加傾向にあるといいます。とくに子育て世代にその傾向が多く、子どもを育てるのに農村など地方環境が適していると考える人が増えているとか。
農林水産省によると地方移住の相談者は年々増加しており、2008年から2013年までの相談者数は2,901人から10,827人までとおよそ370%増加。どうして今、地方移住を希望する人が増えているのでしょう?
2019年に東京から北海道へ移住した私が感じた、田舎のリアルな魅力をお伝えします。
移住のメリット
田舎に移住してよかったと思う理由はいくつもありますが、その中でもとりわけ私のライフスタイルそのものに大きく影響したものがあります。
物価の安さ
東京に住んで十年。「海を身近に感じたい」と大胆な移住計画を実行したのが一昨年のこと。移住して最初に感じたのが物価の安さ。
多数の郷土で成り立っているこの国では、どこの地域にも名産品や地産品などがあります。もちろん地域によって物価の差はありますが、北海道ではやはりじゃがいも、玉ねぎ、トマトなどの野菜が安く、市場などへ足を運ぶと地物魚介は東京内市場の半額ほどの価格で買えてしまうことも。
何よりも地方は家賃の安さが魅力的です。都内のワンルームに住むのと同じ家賃で、地方なら戸建ての賃貸物件を見つけるのもそう難しくありません。暮らしにかかるお金が都市部より低く抑えられるのは、地方移住の大きなメリットの一つです。
時間の速度
地方はとにかく暮らしのスピードがゆっくりです。その理由は経済市場規模に関係している様子。多様なビジネスや商品、サービスがあふれる都市部と違い、地方における経済の新陳代謝はそう活発ではありません。
言い換えれば都市部よりも経済市場規模が小さい分、ゆとりのあるスピード感で生活できるということ。
都会での目まぐるしい暮らしに消耗したり疲弊したりする人が、地方でのスローライフに癒しを求めるのも頷けます。とにかくのんびり、ゆったり。地元の人たちと血の通ったコミュニケーションを楽しみながら、まだ歩いたことのない田舎道を散歩するのが楽しみです。
豊かな自然とロケーション
アウトドアマンとして思う地方移住最大のメリットは、やはり豊かな自然です。
海、川、山、そして広い大地。
キャンプに釣り、トラッキング、山菜狩りまで存分に楽しめるロケーションは、まさに「地方にあって都市にないもの」。
ファミリー層でにぎわうキャンプ場ばかりでなく、自然の中に放り出されたような気分になるような広大な大地で、ほとんどサバイバルに近いアウトドアを楽しもうと思えばそれができてしまうロケーション。地方移住でアウトドアはただの行楽でなく、自分の人生や生活の一部になったとさえ感じる今日このごろです。
自然と触れ合う機会が増えると気持ちにゆとりが生まれますし、何よりも趣味が充実して暮らしに張り合いが出ます。
「一生懸命働いたら、この後は家族でハイキングに行こう!」
「明日は野草を獲りに行こう!」
「気分転換に釣りに出掛けよう!」
と、気軽にそれができる環境は田舎ならでは。
移住を実現するために
実際に地方移住を実現するには、いくつかの課題があります。引っ越しの手間や費用、それにかかる時間や手続きの煩雑さなどが負担なのはもちろんそうですが、もっとも重大なのはやはり仕事の都合でしょう。
「引っ越すには仕事を辞めなければならない。でも仕事を辞めるわけにいかない」と悩む方は少なくないのではないでしょうか。
しかし時代の変化とともに働き方も多様化してきました。今後、仕事の都合によらず気軽に移住できる時代がやってくれば、地方移住希望者はいっそう増えるはずです。今すぐに移住を実現できなくても、やがて訪れるそのチャンスに備え、今のうちから具体的な移住先、移住後のライフスタイルなどを検討しておく価値はあるでしょう。
移住で生き方が変わる
生活環境は、人生のベースそのものです。環境の上に暮らしがあり、仕事があり、人間関係があります。もちろん人生のベースは快適さや喜び、発見に満ちているに越したことはありません。
田舎で山菜を採り、畑を耕し、魚を釣り、火をおこし、肉を干し、食べる。
それは文明の利器や先進的な科学技術とまったく正反対の価値観を示す行為かもしれません。でもどこか原始に迫るような、人間の生命力や安寧に寄り添うような、田舎暮らしにはそういう不思議な魅力があります。
「魂が安らぐ暮らし」を手に入れるために、地方移住が一つの有効な選択肢なのは間違いないと改めて感じています。