ベランダで四季折々の自然を楽しむローテーション栽培
奥行き1・2m、幅6mのごく一般的なベランダ。普段は洗濯物だって干してある。そんな手狭な空間も、いくつかのコツをつかめば、常に50種類以上の植物が育ち、四季折々の収穫が楽しめるベランダ菜園に!
「ベランダでのコンテナ栽培というと、ひとつの鉢に1種類の野菜を育てがちなんですが、私が実践しているのは、ローテーション栽培なんですよ」と話すのは、ベランダ栽培歴27年のたなかさん。
「ひとつの鉢の中を畑と見立てて、いろんな種類の野菜を寄せ植えする方法なんです」
いっぺんに旬がくるのではなく、常に何か食べられるように、収穫が終わったものから、少しずつ入れ替えていく。ただし、終わってもすぐ抜かず、地上部だけ切って根を残し、1か月ほど置いておくのがポイントだ。
「そうするとね、土の中の微生物が栄養になるものを食べて掃除してくれるから、根だけスッと抜けるのよ。土の中にも微生物の多様性が生まれて、わざわざ土を入れ替える必要がない」
ほかには、日当たりを確保するため、なるべく植物を高い位置に配置したり、日陰には日陰に強い植物を置くなど、環境に合わせた工夫も。野菜と一緒に花を植えることで、受粉に必要な虫も誘っている。
「収穫は全部しないで、最後の実を少し残しておいて、種を採るようにしています。うちのベランダで育ったから、うちの環境に合う種になっているの。それを育てるのが、また楽しみ」
ベランダガーデンのコツ
1ひとつの鉢に数種類植える
2高低差をつけて光を確保する
3床材を敷いて照り返しを防ぐ
リボベジ苗は空きパックで育苗する
リボベジで根出しした小さな苗は紙パックで育苗するとサイズ感ピッタリ。鉢に定植する際も切り開いて苗が取り出せ、作業が楽。
ローメンテナンスの多肉植物はベランダに最適
水をあまり必要とせず、手間のかからない多肉植物はベランダガーデンにおすすめ。形や色の違う品種も豊富。
コンポストで微生物を育てる土作りにチャレンジ
20年近く使っているというミミズコンポスト。エサは茶殻や米カス。ミミズの糞土は貴重な肥料になるため、他の鉢にまいて使う。
床には半日陰に強い植物を配置
棚の下段には、日陰でも育つミョウガやミツバ、パセリなどを育てている。床にウッドパネルを敷き、夏は照り返しを冬は冷え込みを防ぐ。
夏はグリーンカーテンで直射日光を防ぐ
春はエンドウ類、夏はツル性のキュウリなどをグリーンカーテンに。ツルの誘引用リングはナメクジ除けに抗菌作用がある銅線で手作り。
ローテーション栽培で空いたスペースを有効活用
収穫が終わった空きスペースは、1か月ほど待って根を抜いてから、新しい種をまく。花も一緒に植えると土の乾燥を防いでくれる。
自家採取の種でベランダ環境に合った植物を育てる
最後の実は種採集用にそのまま保管し、乾燥させる。まずは簡易的に水耕栽培で育てて発芽するかどうか試してみる。
高い位置で光を取り込み、作業効率もUP!
作業しやすいようコンテナは腰高に。植物に光もよく当たり一石二鳥。これはDIYで脚とキャスターを取り付けた。
次に植える苗が育苗しながらスタンバイ
種まきしたいがスペースがない場合は、小さなポットに種をまき、苗を育てておく。鉢にスペースが空いたら苗を植え替える。
いろいろな種を寄せ植えして防虫対策
ひとつのコンテナにトマト、タイム、イタリアンパセリ、バジルを寄せ植え。いろんな香りがあり、虫が寄り付かない。
窓の向こうに広がるのは、奥行き1・2mとは思えない、ベランダガーデン。どんな目線の高さにも緑があふれる。
イラストレーター&ガーデニングクリエイター
たなかやすこさん
腕時計メーカーのデザイナーとして勤務後、イラストレーターへ転身。独自の家庭菜園技を活かし、大学の市民講座や各地のワークショップも多数開催。著書に『ベランダ寄せ植え菜園』(誠文堂新光社刊)。
※構成/大石裕美 撮影/西山輝彦
(BE-PAL 2020年8月号より)