ダーの村では、3年に一度、「ボノナー」または「チュポ・シュウブラ」と呼ばれる大収穫祭が10月頃に催されます。ボノナーは数日間、毎日夜になると始まり、周辺の村から何十人もの盛装した「花の民」の人々が集まってきます。
ボノナーの夜、村の広場で輪になって歌い踊る「花の民」の人々。彼らにとって、祭りで歌う歌はとても大切な存在です。ブロンゴパと呼ばれる役職の人は、ボノナーで歌う歌、結婚を祝う歌、子供の誕生を祝う歌など、無数の歌を記憶していると言われています。しかし最近は、このブロンゴパの後継者がなかなか見つからないという問題を抱えているそうです。
「花の民」の人々自身の言語であるドクスカットは文字にあたるものを持たないため、ブロンゴパの後継者が見つからないと、無数の歌の歌詞も忘れ去られてしまう危険性があります。最近は祭りの際などに歌を録音し、その発音をアルファベットに置き換えて記録に残すという試みも行われているとのこと。わずか3000人ほどの少数民族である彼らにとって、自らの伝統と文化を保ち続けることは、けっして容易ではないのです。
今回ご紹介したダー・ハヌーの人々との話をはじめ、各地で行われるさまざまな祭りや行事、人跡まれな山中へと分け入った旅や、凍結した川の上を歩くチャダルの旅など、かつて僕がラダックで足かけ1年半にわたって暮らし続けた日々の体験を綴った本『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々』が、文章と写真を大幅に増補した「新装版」として新たに発売されました。
『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』
文・写真:山本高樹
価格:本体1800円+税
発行:雷鳥社
A5変形288ページ(カラー120ページ)
ISBN 978-4844136958
http://ymtk.jp/ladakh/ladakh_online.html
2016年3月29日(火)から5月29日(日)までは、東京・三鷹のリトルスターレストランの店内で、写真展「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」を開催します。会場までのアクセスや営業時間などの詳細は、下記のリンク先のページをご参照ください。
http://ymtk.jp/ladakh/2016/03/photolittlestar1601.html
2016年4月16日(土)14時からは、東京のモンベル御徒町店で、ブータン写真家の関健作さんとコラボトークイベントを開催します。このイベントは、今年の夏に予定している、関さんがガイドを務めるブータンツアーと、僕がガイドを務めるラダックツアーの説明会も兼ねています。今年のラダックツアーではこの記事でご紹介したダー・ハヌーへのプランも予定しています。参加方法などの詳細は下記のリンク先のページをご参照ください。
http://ymtk.jp/ladakh/2016/03/bhutanladakh1601.html
頼りは人力&動物力?! エコでのどかなラダックの農業スタイル
山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。2016年3月下旬に著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』を雷鳥社より刊行。
http://ymtk.jp/ladakh/