重さ9gの奇跡の注ぎ口
今回は山を登り、景色の良い山頂でコーヒーを淹れて飲むのがお好きな方必見です。それは何か月前に偶然Instagramで発見しました。初めてそれを見た感想は「何じゃこりゃ?」。まさに「異形(いぎょう)のモノ」でした。投稿者の過去の投稿を見てやっとそれが、コーヒーを淹れるための道具なのだと理解しました。
そのモノの名は「森乃雫(もりのしずく)」。素材はチタンで、重量は9g。手のひらに収まるコンパクト設計で、コッヘルやシェラカップに取り付けて使います。背負う荷物を厳選し、コンパクトにしてザックに詰め込む登山者にとって、ドリップポットは持って行くには大きいので、仕方なくコッヘルやシェラカップでドリップする、そんな方も多いと思います。
また、それらの注ぎやすいように加工して使う方も多いでしょう。もっとコンパクトで大きさも重量も気にならずに、そして点滴から細いお湯まで、簡単にコントロールできる……。森乃雫は、まさにそんな夢のような注ぎ口なのです。
この森乃雫を発明されたのは京都にお住まいの山口さん。きっかけは「山頂で上質のドリップコーヒーを飲むために!」だったそうです。 そんなコンパクトで超軽量のコーヒー道具をご紹介します。
「理系の発想」を駆使して開発に成功
発明者の山口さんにお話を聞きました。最初は普通サイズのドリップポットを担いでいたが、荷詰めにも苦労するので、シングル用の小さなポットに替えたそうです。
「ポットに替えても邪魔になり、山ケトルに替えましたが、もっと上手く注げないものかと緊急性の高い荷物を優先していくと、最終的にマグでこぼしながら注ぐことで落ち着きました」と山口さん。それでも1年ほどマグ用の注ぎ口がないものかと、探しまくったそうです。しかし、世の中にそれが存在しないことがわかり、なければ作ろうと思いたったとのこと。
森乃雫の構造は、①マグから吸い出したお湯をアーチ状の筒を通って溝にいったん溜め、②溝から細い注ぎ口を伝って流していく、という仕組み。アーチ状の筒から溝にお湯を溜めるためには、毛細管現象を利用してちょっとずつお湯を送っていく方法が最適と考えたそうです。
また、軽く小さく効率的に注ぎ出す基本デザインは「黄金比、黄金螺旋」という数学的な比率に当てはめてデザインを採用したとのこと。特許も取得されて、完成までトータル3年かかったそうです。
実際にこの「森乃雫」を使ってみました。マグネットでコッヘルやカップに挟み込んで装着するだけなので使い勝手も良し。いま流行りのメスティンにも取り付けてドリップもできるんです。
なお、使う前の注意事項として、この森乃雫は毛細管現象を利用してるので、直前に水に浸すか、ペットボトルの水をかけるなどして呼び水をしたほうが、最初の注ぎ出しがいいと感じました。
山頂のように水が貴重ではない場所では、取り付けてシンクか地面に試しドリップしてみても良いと思います。ゆっくりと傾けていくと、ポタッポタッとドリップに慣れない人でも簡単に点滴ドリップができます。
注ぎ方のアドバイスとしては、まずドリッパーの中心あたりを点滴ドリップしていきます。粉全体にお湯が染み渡った後は、もう少し傾けて細いお湯にして、円を描いてドリップします。やってみたら楽々でした。
逆に、太いお湯を出そうとすると、ドバッと注ぎ口の周りからお湯がこぼれ落ちてしまいます。それまでのドリップが台無し! 傾けすぎに注意が必要です。
コントロールが容易で出来上がったコーヒーを飲む時は、満足感と周囲の美しい景色がさににコーヒーを美味しくしてくれます。
この「森乃雫」は7月26日に東京のInterFM897「The Great Escape」という番組の「The Man Cave」のコーナーでも紹介されていました。
アウトドア大好きDJの井手さんも「アウトドアでコーヒーを作った時、チョロチョロうまく出せない……。そんな時に便利なのが森乃雫。いわば最強の注ぎ口で、チョロチョロと注ぐことができます!」と大絶賛でした。
見た目も精悍で、機能的にも優れている森乃雫。登山者だけでなく、キャンプや家でコーヒーを楽しんでいる方にもお試してもらいたい逸品です。