中野可菜さん(33歳)
神奈川県出身。幼少期から家族とのキャンプやガールスカウトなどでアウトドアに慣れ親しむ。
宮城県・牡鹿半島
移住して6年でカヤックガイドに!
東日本大震災で、甚大な被害に見舞われた宮城県・牡鹿半島。初めて中野可菜さんが訪れたのは、その9月。仙台市を拠点としたボランティア活動のためだった。その2年後に大学職員の仕事を辞め、長年の夢だったカヤックガイドの準備をしていたとき、石巻市街に拠点を持つ復興支援団体を見つけた。
「当初は、半年だけお手伝いするつもりだったんです。でも、いざ牡鹿半島で活動を始めてみたら、〝支援している〟という自分の気持ちにおこがましさを感じました。ボランティアよりも地元の方のほうが遥かに元気。漁師さんの手伝いに行けば、『まずはカニ食え』ってワタリガニを渡されて(笑)。そのたくましさと明るさに、とにかく感動。いつかはここでカヤックガイドをやりたい、と思うようになりました」
その後1年半、石巻市街での生活を経て、牡鹿半島へ完全移住。格安の市営住宅を貸り、仲良くなった地元の人が復興応援隊の仕事を紹介してくれた。
「基盤が何もなかったので、まずは冬に牡蠣の養殖、春はめかぶの収穫をしながら地元の人との交流を深めました。でも、私はすごく人見知りなので何も話せないこともあったんです。それでも町のイベントに参加するようにして、カヤックガイドをしたいという想いを伝えました。そこから徐々に道が開けていったんです」
そして昨年、地元の人たちや先輩ガイドの力を借りて、念願だったカヤックガイドを開業することができた。
「移住してから開業まで6年かかりましたが、人との繋がりが深くなったおかげで協力してもらえることばかり。毎日が本当に楽しいです。もっとスキルを上げて、遠征ツアーや地域の方々と共同でできるイベントも開催したい。私の得意分野を活かして、少しでも地域に貢献していけたらと思います」
中野さんの歴史
2013年 大学職員を退職し、石巻で生活を始める。
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2015年 牡鹿地区復興応援隊で働き始め、牡鹿半島に完全移住。
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2019年 夢だったカヤックガイドとして独立。「なかのカヤック」を開業。
レンタルカヤックやウェットスーツなどを置く一軒家の納屋。家賃は月1万円と格安!
’15年から市営住宅で暮らす。シャワーはないが、こちらも月の家賃はわずか8600円だ。
ガイドとしてついに独立!
’19年に「なかのカヤック」を開業。当面は1日1組(定員1〜5名)のツアーを開催中だ。カヤックなどの道具はレンタル可能。
とにかくアウトドアが好き
狩猟
3年前に猟師の免許を取得。有害鳥獣捕獲がメインの仕事だ。
謝肉祭
猟期が終わると地元の方々を呼んで鹿肉を楽しむ「謝肉祭」を開催。
山登り
木登り
休みの日には、山登りや木登りなどフィールド遊びへ。半島内でできるアクティビティーを増やし、いずれはカヤックとセットで楽しめるツアーをしたいと考えている。
お気に入りスポット
江戸時代、支倉常長がローマに出帆した港が見える月の浦展望台。県外からの帰りに必ず寄って身を引き締める。
完全移住のコツ
1 町のイベントや集まりには積極的に参加する
2 わからない方言は調べて会話を楽しむ
3 移住先での居住生活を整えてから開業
※構成/中山夏美 撮影/田渕睦深 問い合わせ先/なかのカヤック https://nkn-kayak.com/
(BE-PAL 2020年9月号より)