大地の香りを丸ごといただく豪快ナチュラルスモークから、手軽なおつまみ燻製まで。燻らす煙がじっくりご馳走を生みだす、スモーキーな香りで秋の味覚を堪能しよう!
もともと燻製は、貴重な食材を大切に最後まで食べるための先人の知恵だ。
「北欧では、動物1頭獲ったら、その辺で拾った木で燻製にして保存する。だから、同じ燻製を作っても、そのときの状況で違う味になる。一期一会の味に出会えるのが燻製の醍醐味なんです」
と、長野さん。最近は、そのスモーキーな香りに魅せられて、調理としての燻製も人気だ。
「キャンプに行ったら、まず火をおこし、肉をぶら下げてじっくり燻す。それ自体が面白い遊びになるし、最大のご馳走になる」
80度C以上の高温な煙で食材に火を通しながら燻すのを熱燻と呼び、焚き火の上方で30〜80度Cの煙でじっくり燻すのが温燻だ。
「初めてなら、鍋とスモークチップを使ってお手軽に熱燻もいい。煙の量も調整しやすいし、香りもいろいろ楽しめる。市販の燻製器を使った、おつまみとしての燻製も流行っていますよ」
この秋は、五感で楽しむスモーキーフードを味わおう!!
焚き火を使った豪快ナチュラルスモーク
焚き火から乾燥した空気が上昇気流でスーッと上がる。その熱風で火を通しながら煙を付着させる、ナチュラルスモーク。炎が上がるか上がらないかぐらいの火で燻す。
基本の作り方
1.下味をすり込み数日漬け込む
調味料をよくすり込み、ビニール袋に密閉して(魚はそのまま)冷蔵庫で2〜3日寝かす。
2.水につけて塩分を抜く
そのままだと塩っぱいので、水に浸けて塩抜きする。途中何度か水を替えながら行なう
3.焚き火で風乾しつつ燻す
焚き火の上部で熱風乾燥しつつ、食材に火を通す。周りを布などで覆うと時間短縮が可能。
かぶりつき丸鶏のスモーク
ムネはサッパリ、モモは若干脂がのったしっとりした味わい。甘くスモーキーな香りが、黒コショウの効いたハチミツと相性抜群。
〈材料〉
丸鶏…1羽
塩…丸鶏の重量の10%
黒砂糖…丸鶏の重量の5%
ブランデー…20㎖
粗挽き黒コショウ…適量
ローズマリー…1枝
ローリエ…1枚
ハチミツ…適量
〈下ごしらえ〉
塩、黒砂糖、ブランデー、粗挽き黒コショウ、ローズマリー、ローリエを合わせて丸鶏の外と中へ丁寧にすり込み、ビニール袋に入れて空気を抜き、冷蔵庫で2日間漬け込む。
〈作り方〉
①水に浸けて1時間ほど塩抜きする。
②水気を拭いたら焚き火へ吊るし、2時間熱燻して完成。
③切り分けて、黒コショウをふったハチミツなどを添えていただく。
内側に枝を十字に差し込み、開口部を広げておくと、中まで火が通り、香りがつく。
豪快ラムラックのスモーク
豪快に燻したら、骨ごと切り分けていただく。味付けは塩コショウでシンプルに。フルーツの酸味が旨味を引き立てる。
〈材料〉
ラムラック…1枚
塩…ラムラックの重量の2%
粗挽き黒コショウ…適量
タイム…適量
〈下ごしらえ〉
塩、粗挽き黒コショウ、タイムを合わせて肉へすり込んだら、ビニール袋に入れて空気を抜き、冷蔵庫で2日間漬け込む。
〈作り方〉
①水に浸けて1時間ほど塩抜きする。
②水気を拭いたら焚き火へ吊るし、90分ほど熱燻する。
③骨ごとにカットし、タイムを添えていただく。ワインで煮詰めた旬のフルーツを添え、一緒にいただくのもいい。
吊り下げ用のフックは、骨と骨の間の筋が絡むあたりにすると抜けにくい。
サーモンマリネのスモーク
表面がパリッとして茶色く色づいたら食べごろ。
淡白な味わいに、煙とマスタードでアクセントを。
〈材料〉
サーモンフィレ…半身
塩…サーモンの重量の4%
三温糖…サーモンの重量の2%
ディル…適量
粗挽き黒コショウ…適量
マスタード…適量
〈下ごしらえ〉
塩、三温糖、ディル、粗挽き黒コショウを合わせて身へすり込み、網に載せて冷蔵庫で2日間、水分を抜きながら乾燥させる。
〈作り方〉
①表面の塩を洗い流してから1時間ほど日陰で乾かす。
②尾側を上に焚き火へ吊るし、2時間遠火で温燻して完成。
③スライスし、マスタードを添えていただく。カキドオシの葉(材料外)を付け合わせに。
魚は水分量が多いので水には浸けず、洗い流す。
串は皮目側に通すと、縮みにくくはずれにくい。
(BE-PAL 2020年10月号より)