灯油ストーブは冬キャンプの強い味方だがリスクもある
冬キャンプで使用する暖房器具というと、薪ストーブ・ガスストーブ・灯油ストーブが一般的でしょう。
それぞれに違った魅力がありますが、なかでも手軽さと暖房性能のバランスが取れている灯油ストーブがとくに便利。
灯油ストーブを使用することにはたくさんのメリットがあり、正しく使えば冬キャンプを劇的に快適にしてくれる優秀な道具です。
しかし、火をあつかう道具であるため、やはり使用における注意点もあります。とくに、灯油ストーブをテント内で使用することを考えている方はより一層の注意をしなければなりません。
そもそもテント内では火気厳禁なのですが、凍えてしまうくらいなら安全への配慮を行ないながら使用したい、という状況もあることでしょう。
そこで本格的な冬キャンプシーズンをむかえようとしている今、灯油ストーブの便利さをお伝えするとともに注意喚起をするため、冬キャンプで灯油ストーブを使用することのメリットと注意点をまとめました。
※テント内での灯油ストーブの使用は、最悪の場合、死亡する可能性がある行為です。テント内で灯油ストーブを使用する際には、絶対に締め切った状態で使用してはいけません。かならず通気性を保ち、換気をしながら自己責任のもとで行なってください。
灯油ストーブが持つ8つのメリット
冬キャンプで灯油ストーブを使用するメリットは以下のとおりです。
1 ランニングコストを安く抑えられる
2 燃焼が安定しているから温度管理が楽
3 使用方法が簡単かつシンプル
4 点火してすぐに暖かくなる
5 夜は照明としても役に立つ
6 天板で湯沸かしや加熱調理ができる
7 燃料を満タンにすると長時間連続で使用可能
8 自宅でも使用できるから無駄な買い物になりにくい
以上が冬キャンプ用の暖房器具として、灯油ストーブを選ぶことのメリットです。
まずコストに関してですが、灯油ストーブは安い製品だと1万円を切る価格で販売されています。そのため導入コストもそれほどかからないのですが、注目すべきはむしろランニングコストの安さ。
テント内で使用できる小型の灯油ストーブは、灯油1リッターあたり3〜5時間ほど燃焼します。灯油自体の価格がリッターあたり70〜90円とすると、1時間あたりのコストは14〜30円ほど。24時間使い続けても336〜720円で済む計算です。
いっぽうで薪ストーブを1日中使用するとなると、1束500〜600円かかる薪を何束か消費することになります。
薪を足すペースは人によって異なるので正確な合計金額は算出できませんが、灯油ストーブよりも多額の燃料費が発生することは、まさに火を見るより明らかといえるでしょう。
総じて使い勝手に優れているのも灯油ストーブの特徴です。多くの灯油ストーブの場合、ダイヤルを回して点火ボタンを押すか、レバーを押し下げるだけで点火します。
そして一度点火すると、長時間手をかけずとも燃焼を続けてくれるのがいいところ。消化するときもほぼワンタッチ操作でOKです。
簡単すぎて味気ないといわれるとその通りですが、簡単だからこそ人によっては苦行のようにも見える冬キャンプのハードルを下げてくれる側面もあります。
また、暖房としての機能にくわえ、照明やコンロの代わりとして使用できるのも見逃せないポイントです。製品によってはまぶしいくらいに強い光を発するものもあります。
このことは「8 自宅でも使用できるから無駄な買い物になりにくい」というメリットにもかかる部分ですが、キャンプ用としてだけでなく災害時の備えとしても優秀です。
いくらキャンプが好きな人でも、実際にキャンプにいくのは週に1回か2回がいいところでしょう。さらに冬キャンプに限定すると、1年のうちに楽しめるのは数えるほど。
そのためだけにお金を出して暖房器具を購入するのは、少々気が引けるという方も少なからずいることと思います。
だからこそ、家でも使用できるというのはとても大きなメリットになるのです。
以上のように、灯油ストーブは正しく使えば非常に便利で使い勝手の良いアイテムであることがわかります。あくまで「正しく使えば」ですが。
灯油ストーブを使用する際に意識して欲しい3つの注意点
たくさんのメリットがあり非常に便利な灯油ストーブですが、使い方を間違えると場合によっては命に関わる重大な事故を起こす原因となります。
そのため灯油ストーブを使用する際は、これからお伝えする3つの注意点を意識してください。
一酸化炭素中毒への対策を万全にする
灯油ストーブの使用において、とくに注意しなくてはならないのが一酸化炭素中毒。場合によっては死にいたることもある恐ろしい中毒症状で、空気中の一酸化炭素の濃度が高くなることで起こります。
灯油ストーブで一酸化炭素が発生する原因は不完全燃焼によるもの。そしてその不完全燃焼は十分な酸素が供給されないことで発生します。
換気が十分でない空間で長時間灯油ストーブを使い続けると、段々と酸素が少なくなり、不完全燃焼が発生し、その結果一酸化炭素が発生するということです。
一酸化炭素自体は無色透明でニオイもないため、発生していること自体に気づくことはできません。
そのため万が一、灯油ストーブをテント内で使用しているときに頭痛やめまい、吐き気などの一酸化炭素中毒特有の症状があらわれた場合には、すぐにテントを開け放ち、外に出て新鮮な空気を吸う必要があります。
近くにほかのキャンパーがいたら、遠慮せずに助けを求めましょう。
テントのなかでそのまま失神するという最悪の事態だけは、なにがなんでも避けなくてはなりません。
そしてこのような事態を避けるために大切なのは、テントを閉め切った状態で使用しないことと、十分な換気をすること。
灯油ストーブに異常がない限りは、これで一酸化炭素中毒のリスクを大幅に低減できます。
また、「一酸化炭素チェッカー」も忘れずに使用しましょう。一酸化炭素チェッカーとは、ある一定以上の量の一酸化炭素を検知すると音や光で知らせてくれる警報機です。
冬キャンプで暖房器具を使用するにあたり、必須のツールとして準備しておきましょう。
それにくわえて、「二酸化炭素濃度計」も使用するとより安心です。
二酸化炭素は一酸化炭素のような強い毒性はないものの、空気中での濃度が高くなると酸欠状態を引き起こし、頭痛やめまいなどの症状があらわれることがあります。
また、二酸化炭素は空気よりも比重が大きく、低い場所に溜まりやすいといわれている物質です。
そのため、二酸化炭素濃度の上昇を防ぐためには天井近くの通気口だけでなく、テントの入り口などの低い位置でも換気をするのが効果的。
空気と比重がほとんど同じ一酸化炭素を排出することも考慮し、テント内の空気が上から下までしっかり換気が行なわれるように工夫しましょう。
スカート付きのテントを使用している方はとくに注意が必要です。
近くに燃えやすいものを置かないこと
灯油ストーブを使用する際には、火災が発生しないように配慮することも重要です。かならずテントの幕からはなれた場所に設置するとともに、近くに燃えやすいものを置かないように常に気を配りましょう。
風が強い日や雪が降っている日は、テントが倒壊する可能性があることも忘れてはいけません。テントが倒れることで灯油ストーブの上に覆いかぶさり、炎上するということも考えられます。
そうならないようにテントをしっかり設営することも大切ですが、万が一火災が起きてしまったときのことも考えておくべきです。
消化器を用意しておくのがベストですが、それが難しい場合はバケツに水を入れて置いておくのがいいでしょう。スペースに余裕がある場合は、水を多めに用意しておくとより安心です。
もうひとつの備えとして重要なのが、灯油ストーブが炎上したとしても逃げられるルートを確保しておくこと。テントの入り口付近で火災が発生し、八方ふさがりの状態に陥らないようにしましょう。
就寝時は灯油ストーブを消してから寝ること
寝ているあいだになんらかの原因がもとで火災が起きたり、一酸化炭素の濃度が高くなったとしても、すぐにそれに気づくことは困難です。
もちろん凍死のリスクを承知のうえでとまではいえませんが、やむを得ずテントのなかで灯油ストーブを使用したとしても、寝るときだけは極力消火しましょう。
そうなると結局のところ、灯油ストーブ以外の方法で十分な寒さ対策を行なう必要があります。厳寒地や雪山でもなければ、厚着をしたうえで保温力に優れた寝袋を使用すれば問題ないでしょう。
古典的な方法ですが、湯たんぽを使用するのもおすすめです。寝袋のなかの足もとに入れておけばかなり快適に過ごせます。
灯油ストーブのうえでお湯を沸かしておけば、それを利用するだけなので面倒なこともありません。
このように、起きているときには灯油ストーブで暖をとり、就寝中は火災や一酸化炭素中毒の危険がともなわない方法で寒さ対策を行なうようにしましょう。
正しく使って快適な冬キャンプを楽しもう!
すべての道具に共通していえることですが、なかでも火を扱うものは正しく使うことが重要です。それができれば灯油ストーブは手軽で便利、そして安全な代物。
そして灯油ストーブが活躍する冬キャンプは、ほかの季節では見られない景色が楽しめる魅力的なアクティビティーです。
世間的にはキャンプのオフシーズンであるためキャンプ場に来る人の数が少なく、不快な虫もいないので意外なほど快適に過ごせます。
空気が澄んでいて、鼻を通る冷たい空気が心地よく、夜は星空が綺麗に見え、温かい鍋料理がいっそう美味しい冬キャンプ。
今回お伝えした注意点を意識しながら、便利な灯油ストーブとともに楽しんでください。