チベット人の映画監督、脚本家、作家として、これまでに世界各国の映画祭で数多くの賞を受賞している、ペマ・ツェテン監督。同監督の最新作で、2019年の東京フィルメックスで自身3度目となる最優秀作品賞を受賞した作品『羊飼いと風船』が、2021年1月22日(金)から、シネスイッチ銀座など全国各地の劇場で順次公開されます。ペマ・ツェテン監督にとって初めての、日本での劇場公開作品となります。
物語の舞台は、中国・青海省の広大な草原地帯。腕利きの羊飼いのタルギェは、妻のドルカルと、幼い2人の息子、年老いた父とともに暮らしています。家族から離れ、町の寄宿学校で勉強中の長男ジャムヤン。過去の出来事から出家し尼僧となった、ドルカルの妹シャンチュ。ジャムヤンの学校の教師で作家でもあるタクブンジャ。それぞれの登場人物の関わり合いの中に潜む小さなひずみは、物語が進むにつれて次第に大きくなっていき、やがて、彼らはある決断を迫られることになります。
中国で暮らすチベット人の牧畜民は、過去に文化大革命などの激しい弾圧に晒されながらも、輪廻転生を信じるチベット仏教徒としての伝統を、頑なに守り続けてきました。その一方で、現代社会特有の物資や文化の流入によって、牧畜民のライフスタイルは急激な変化の波に晒され、存続の危機に瀕しています。また、少数民族である彼らは、1世帯で3人までしか子供を持つことを許されておらず、違反すれば高額な罰金を払わなければなりません。彼らを取り巻くこうした現実の数々が、この作品の横糸となって、物語を形作っていきます。
チベットの美しい草原で暮らす牧畜民たちの暮らしと信仰を、時に叙情的に、時にコミカルに、そして時にリアルに描き出した『羊飼いと風船』。青空を漂う風船を見上げながら、物語の登場人物たち、そして観客の私たちは、何を思い、何を選び取るのでしょうか。
『羊飼いと風船』
監督・脚本:ペマ・ツェテン
出演:ソナム・ワンモ、ジンバ、ヤクシンツォ
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://bitters.co.jp/hitsujikai/
2021年1月22日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー!
同作品の原作を収録した短編集『風船 ペマ・ツェテン作品集』(ペマ・ツェテン著、大川謙作訳、春陽堂書店刊)も現在発売中です。