瀬戸内海に浮かぶ小さな無人島「大久野島(おおくのしま)」には約900羽以上の野うさぎが生息しており、世界唯一のラビットアイランドとして親しまれています。
『定住者は居ないけれど、人間の代わりに沢山の人懐っこいうさぎ達が訪れる人々を歓迎してくれる』、そんな夢のような環境で自然に癒されながらゆっくりと過ごしてみるのはいかがでしょうか。
地図から消された秘密の島「大久野島」とは?
大久野島は一周およそ3.3kmの小さな島です。かつて「日本最大の海賊の本拠地」として栄えたことで知られる芸予諸島に属し、宮島や鳴門海峡などの景勝地と共に瀬戸内海国立公園として指定されています。
島内には約900羽以上の野うさぎが生息するといわれ、週末や長期休暇を中心に可愛いうさぎ達に癒しを求める多くの人々で賑わいます。
大久野島には「自然の小径」と呼ばれる全長約4kmのウォーキングコースが整備されており、瀬戸内海の美しい景色を眺めながら自然観察を楽しむことができます。
徒歩でも約1時間前後で散策できるので、島内各所でうさぎと触れ合いながら日帰りで観光するのもオススメです。
大久野島が地図から消されてしまった理由
この島には1929年から終戦までのあいだ第2次世界大戦のための化学兵器製造拠点が置かれ、秘密の毒ガス製造が行なわれていました。そのため、かつては「国家機密の島」として地図から抹消されていたそうで旧陸軍関係者以外は化学戦の事実を知らなかったといわれています。
島内には当時の面影を残す戦争遺跡が複数点在しており、廃墟となった建造物を間近で見学できます。また、現在は既に毒ガスの処分や関連施設の除染作業が完了しているので安心して訪れることが可能です。
自然豊かな島に重い歴史を刻む戦争遺跡の数々
島内には毒ガス製造時代の研究室・薬品庫をはじめ、機密書類の保管や毒ガスの検査が行われていた建物、貯蔵庫、砲台跡などの戦争遺跡が点在するほか、毒ガス製造による犠牲者鎮魂の殉職碑をともなう神社や灯台、美しい砂浜、カフェやキャンプ場を運営する宿泊施設「休暇村」などが位置しています。
発電場跡
毒ガスを製造するために電力を供給していた発電場跡で、当時は重油を燃料とするディーゼル発電を行なっていました。敗戦前には、動員学徒の女学生が風船爆弾の弱い部分をこんにゃくノリで補修する作業も行なっていたといわれています。
北部砲台跡
日露戦争以前にあたる1902年に設置された芸予要塞の砲台跡で、合計8門の大砲が設置されていました。
毒ガスの製造時代には大きなガスタンクが置かれていたそうで戦後の焼却処分によって発生したヒ素汚染が1996年に発覚し、3年後に土壌の洗浄処理が施されました。
周辺にはトンネルのほか、司令塔跡、地下兵舎跡、発電機関舎などの施設が残されています。
長浦毒物貯蔵庫跡
長浦毒物貯蔵庫跡は、島内最大規模を誇る毒ガス貯蔵庫です。
この場所には約100トンの容量を持つタンクが6基置かれていたそうで、建物の前に迷彩色で塗装した高さ3〜4mほどの小山を築いて海上から見えないよう工夫が施されていました。
コンクリートの内側が黒く焼け焦げているのは、戦後処理の際に毒性を取り除くため火炎放射器で毒ガスを焼却処分した跡です。
手ぶらキャンプも楽しめる!島内唯一の宿泊施設「休暇村」
大久野島は小さな島なので日帰りでも十分観光を楽しめますが、時間に余裕のある場合はぜひ1泊以上滞在してゆったりと流れる“島時間”を満喫することをオススメします。
ここでしか実現しない特別なアウトドア体験
島内に位置する宿泊施設は「休暇村」1軒のみですが、オーシャンビューのキャンプ場を併設しているので潮風を感じながらアウトドアも楽しめます。
「キャンプサイトにうさぎ達が訪ねて来る」なんて素敵な体験も、大久野島ならではだと思います。
また、この島では一般車両の走行を制限しているため小さなお子さま連れのキャンプでも比較的安全に過ごせるほか、レンタル備品のラインナップも充実しているので手ぶらでのキャンプも可能です。
※ 第2桟橋から無料シャトルバスを利用できるので、大きな荷物を持っていても大丈夫。
島内を散策した後は天然温泉でリラックス
大久野島には神経痛や高血圧・冷え性などに効果のある天然ラジウム温泉が湧いています。
休暇村本館にある「大沓(おおくつ)の湯」および「小沓(こくつ)の湯」は宿泊客でなくても利用可能なので、ぜひ訪れてみて下さい。
◆ 日帰り温泉
利用時間 11:30〜15:00(14:30受付終了)/入浴料 大人420円・子ども370円
大久野島を訪れる際に注意すること
島内に生息するうさぎは野生なので、ルールを守って安全に触れ合いましょう。
1.うさぎのエサは持参する
島内でうさぎのエサは販売されていないので、フェリーに乗船する前に必ず購入しておく必要があります。
うさぎに適した野菜はニンジン・キャベツ・小松菜・チンゲンサイなどです。そのほか、リンゴやバナナなどの果物も与えることが可能ですが、消化不良を起こさないためにも与える量は少なめを心がけましょう。
2.人間の食べ物を与えない
うさぎに人間の食べ物を与えると体調を崩す恐れがあります。
3. ゴミのポイ捨て禁止
うさぎの生活環境を綺麗に保つためにもゴミは必ず持ち帰るようにしましょう。
レジ袋や釣り糸などのプラスチックゴミは島を汚すだけでなく、海の生態系にも深刻な影響を与える原因となるので絶対にポイ捨てしないで下さい。
4. 島にうさぎを捨てない
ペットとして飼われているうさぎが島の厳しい環境下で生きていくのは、とても困難なことです。島の外からうさぎを連れてきて遺棄するのは、絶対にやめてください。
5. うさぎの飛び出し注意
島内を自転車で走行する際は、うさぎの飛び出しに気をつけて下さい。通行人やうさぎと接触してケガをしないよう、なるべく時間に余裕を持った行動を心がけましょう。
休暇村のレンタサイクルは2時間800円から利用可能ですが、坂道もあるので普段あまり自転車に乗り慣れていない方は徒歩で観光することをオススメします。
6. うさぎに触らない
うさぎはストレスを溜めやすい生き物なので追いかけ回したり、脅かしたりしないでください。
また、野うさぎは抱き上げられるのに慣れていないため暴れてケガをする可能性があります。小さなお子さまと旅行する場合は手を噛まれたりしないよう、目を離さないようにしましょう。
大久野島へのアクセス
大久野島へは広島県竹原市または愛媛県今治市からアクセスできます。
広島県は忠海港(ただのうみこう)と竹原港、愛媛県は大三島の盛港(さかりこう)からフェリーに乗船するのですが、どちらも大久野島桟橋(第2桟橋)に向かいます。
忠海・盛港発着の時刻表は大三島フェリーの公式ホームページをご確認下さい。また、竹原港発着のフェリーは別会社によって運航されているので時刻表の確認や問い合わせを行う際は注意が必要です。
◆ 広島県から行く場合
竹原市東部の忠海港から大三島フェリーを利用して約15分、料金は片道310円(子ども160円)です。
忠海港はJR呉線の忠海駅から徒歩10分圏内に位置しているため電車でアクセスするのが便利です。港までお車で向かう場合は山陽自動車道 本郷ICが最寄りで県道59号経由で所要約20分が目安です。
また、2019年冬より竹原港からもフェリーの運航が行われているのですが毎週火・水曜日および年末年始は定休日とされているため、必ず運航スケジュールを確認してから利用することをオススメします。
◆ 愛媛県から行く場合
「芸予諸島最大の島」として知られる大三島北東部の盛港から大三島フェリーを利用して約15分、こちらも片道310円(子ども160円)です。
盛港まで車で向かう場合は西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)大三島ICから北へ約8分、港の駐車場を無料で利用することが可能です。