いよいよ冒険がスタートし、子供達が“最初の一手”にさしかかった。子供達は足場が土と落ち葉で滑る中、つま先の先まで背伸びをしたり、助走をつけて手をかける…。両手がうまくかかればあとは攻めるのみ。この竹の切り株に自分の全体重をうまく移動することが出来れば、自分がとりやすい動きでこの難関をクリアすることが出来る。
子供達は、自分の身長、手足の長さ、体重を活かしながらこの課題に挑んでいく。ある子供はアゴを切り株に引っかけ、またある子供はコアラのように抱きつき、数センチずつ竹の切り株ににじり寄る。怖くて涙が一粒頬を伝う子や、下唇がちぎれるくらい噛みしめながら手を伸ばす子と、様々な姿勢で挑戦している子供達だが、共通しているのは「命がけで真剣」であること。大人からすれば90cmほどの高さだが、子供達からすれば目の前にそびえる壁にも近い状況だろう。それだけに、僕の心の中にもギュッと力が入る。
この難関を越えた子供達は、次の急斜面を駆けるオオカミのように進んでいった。はじめは服の汚れを気にしていた子供も、四肢を駆使して力強く登る。
無事にサーキットを1周して帰ってきた子供達の目の中には、スタート前とは天と地ほどの差がある輝きを身につけて帰ってきた。キャッキャキャッキャと踊りながら、まるで全身で達成感を表現し、そして味わっているようだった。
子どの達の達成感は、お給食のおかわり回数に比例する。今日は3回、4回と何度も僕に報告をしながらおかわりをしに行く子供達がいた。「またお山を登りたい!」と口々にいう子供達。もちろん!また一緒に行こう。
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長谷部雅一
アウトドアプロデューサー。
アウトドアイベントの企画・運営を手がける「Be-Nature School」スタッフ。人と自然をつなぐインタープリターとしても活躍中。
著作に『ネイチャーエデュケーション』1300円+税 みくに出版刊