田舎で手作りの暮らしを始めたら 〝自然派ビレッジ〟ができました!
大阪府・千早赤阪村
菅原さん夫妻
菅原裕己さん
妻・由紀代さん
裕己さんは元教員、由紀代さんは大阪のテーマパークの元従業員。移住後に空家問題と向き合い、地域起こし協力隊として空家バンクの活動を開始、その後、一般社団法人化し、「ちはやあかさかくらす」を設立。
元小学校教師「スガちゃん」こと菅原裕己さんは、猿のように軽々と木に登る。木の上にいると気分が落ち着くのだという。南の国で初めてヤシの木につかまったときは、そのままてっぺんまで登ってヤシの実を落としていた、というのだから前世は本当に猿かもしれない。
こんなスガちゃんを中心に、大阪の田舎に今、おもしろいコミュニティができているのだ。
「動物っぽいから人が寄ってくるのかもしれませんね」と奥様の由紀代さんは笑っている。
転機となったのは、教員時代に行ったエジプト旅行だった。
「村でおっさんから家に呼ばれたんです。ついていったら彼がひとりで建てている家があって、このトイレすげえだろ、って自慢するんです。でも砂漠にレンガを積んでいるだけ。庭もすげえだろ、っていうんだけど、砂漠に草を植えているだけ。これでええんや、って思いました」
その後、教師を辞めて木工や農業を学んだあと、自給自足的な暮らしをするために、大阪の田舎に移住、購入した古民家を廃材で改修し、馬で農業を始めた。すると不思議なことに、どんどん人が集まってくるのだ。
「そのうち移住したいという人も出てきたので空家の主、何人かにあたってみたんですが、なかなか貸してくれないんです」
信用が必要らしい。じゃあ行政と組もう。空家の利用が村を活気づけるはず。そんな思いで、空家情報を整備し、借りたい人と家主をつなげる「空家バンク」を始めた。その活動や農作業のかたわら、スガちゃん自身が廃材を使って空家をどんどん改装する。おもしろそう、といろんな人が手伝いにくる。由紀代さんがマネージメントし、シェアハウスやカフェが次々にできていく。場所ができるとまた人が集まってくる。まるでスガちゃんを中心に、“自然派ビレッジ”ができていくようなのだ。
「都会にいたときは友達があまりできなかったんです。だからほんと人生が変わりました。服を作る人、野菜を作る人、狩りをして肉をとる人、いろんな人が集まって、仲間同士で衣食住が間に合っていく。めちゃくちゃ楽しいですね」
友達と自然に囲まれる暮らしかぁ。なんだ、理想郷じゃん。
建設中のキャンプ場に移動式サウナを設置
試作中のモバイルサウナ。軽トラの荷台サイズ。台座の脚はネジでジャッキのように上げられる形にし、車をバックして荷台にのせる。
得意な木登りで地域に貢献したいと、高所での伐採を行なう「特殊伐採」も勉強中。うしろで木にぶら下がっているのは相棒のマーくん。
「食べられる野草も多いので、炒めて食べたりします。育てなくてもいいというのは発見でしたねー」とスガちゃん。
廃業した店を廃材で カフェに改装。
人の集まる場所に大変身!
元茶屋を改装したカフェ「もぐらの寝床」。いろんな人が〝場所〟を求めてやってくる。薪窯ピザ屋も併設。平日なのに仲間がわんさか。
金剛山登山口に今年オープンした日替わりカフェ&レンタルスペース「もぐらの寝床」。廃材で改装した店内は温かい雰囲気で開放的!
「もぐらの寝床」の本棚。個人的お勧め本を10冊、毎月推薦人を替えながら紹介。人のつながりの一助になれば、と推薦人の紹介文も。
生木を手斧などで削って家具を作る原始的な工法グリーンウッドワークで生まれた椅子たち。不定期にワークショップも行なっている。
五右衛門風呂は流木と廃材で作ります
シェアハウスの庭に〝五右衛門露天風呂〟を設置。流木と廃材だけで作った。農作業を終えたあと、子供たちが大はしゃぎで入る。
道の駅まわりも手作りで改装
道の駅「ちはやあかさか」を委託運営。由紀代さんが店長を務める。夫が製作、妻がマネージメントという形でカフェなど4軒を運営中。
千早赤阪村の隣、河南町に古民家を購入。ふたりの田舎暮らしの原点。現在はシェアハウスとして仲間たちに貸し出し中。
縁側には蜜蜂の巣箱が。野生のニホンミツバチに営巣してもらうコツは、同地域に住むいい師匠を見つけることだそう。
自然派生活のコツ
1買い物は地元の個人店でやる
2草刈りは近所も率先して行なう
3地元の木を使って薪を作る
※構成/石田ゆうすけ 撮影/安田健示
(BE-PAL 2021年1月号より)