意外と見えない「冬の天の川」はどこにある?
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    2021.01.22

    意外と見えない「冬の天の川」はどこにある?

    私が書きました!
    星空案内人
    廣瀬匠
    星空案内人 廣瀬匠天文系ライター。株式会社アストロアーツで天文ニュースの編集などに携わる。天文学の歴史も研究していて、パリ第7大学で古代インドの天文学を 扱った論文で博士号を取得。星のソムリエ®の資格を持つ案内人でもある。アストロアーツから来年の星空と天文現象を解説する『アストロガイド星空年鑑 2021』を発売中。観察のための基礎知識も満載で、これをきっかけに星を眺めた いと思った方にオススメの一冊です!

    冬の夜空を飾るオリオン座と7つの1等星たち

     冬の星空は、一年でいちばん華やかです。南の空に1等星が7つも集まっているのです。(正確には、前回ご紹介したカノープスを入れて8個ですが、この星は東京の緯度では地平線からちょっと顔を覗かせる程度なので、ほとんど見ることができません) 

    冬の南の空を飾る星座。

    上の図をご説明します。

    冬の星空の中心はオリオン座。全天の星座の中でも一、二を争う高い知名度を誇ります。均整の取れた美しい星座です。

    オリオン座の真ん中、腰のベルトにあたるのが三つ星です。まずはこれを見つけましょう。見つかったら、その北東(左上)で光る赤い色をした星がベテルギウスです。三つ星をはさんでベテルギウスの対極、青白く輝く星がリゲルです。ベテルギウスとリゲルはどちらも1等星ですが、リゲルの方が多少明るいです。

    三つ星を南東(左下)に伸ばすと、ひときわ明るく、青白く輝く星が目に入るはずです。これが太陽を除けば全天で一番明るい恒星、おおいぬ座のシリウスです。

    シリウスの北東寄りにも明るい星があります。こちらは、こいぬ座のプロキオン。オリオン座のリゲル、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンの3つを結んだ正三角形は「冬の大三角」と呼ばれています。華やかで雄大な大三角です。

    このほかにも冬の星空には3つの1等星が光ります。

    三つ星をシリウスの反対側へ伸ばした先にある、少しオレンジがかって見える1等星が、おうし座のアルデバランです。

    オリオンの北東寄りには、同じくらいの明るさの星が2つ並んでいるのが見えます。ふたご座の星で、金色に光るのがポルックス、銀色の星がカストルです。ギリシア神話では兄カストルと弟ポルックスという双子ですが、星としての明るさでは1等星であるポルックスのほうがわずかに上で、カストルは2等星です。

    最後に、おうし座やふたご座よりもさらに北寄りでで黄色っぽく光るのが、ぎょしゃ座のカペラです。カペラ、アルデバラン、リゲル、シリウス、プロキオン、ポルックスと6つの1等星をつないだ六角形は「冬のダイヤモンド」と呼ばれることもあります。

    オリオン座のあたりに1等星が集まっているわけ

    これほど1等星が集まっているのには理由があります。オリオン座の東側に天の川が流れているからです。先述の、ぎょしゃ座の方向からオリオンの右肩ベテルギウスをかするようにして下り、プロキオンとシリウスの間を流れています。

    天の北極を上、天の南極を下にして全天の夜空を世界地図のように展開した星図。冬の星座(右側)の中を流れる天の川は、春(中央)は日本からほとんど見えない南天を通り、夏(左側)に再び顔を覗かせる。

    私たちの太陽系は、無数の恒星が円盤状に集まった「天の川銀河」の中にあります。銀河の円盤面に沿った方向にはたくさんの星が集まっているため、これが天の川として見えるわけです。天の川は全天をぐるりと一周していて、その一部は日本の本州からは見えないところを通っています。日本より緯度の低い場所に行けば、その天の川に沿ってさらに1等星が数えられます。先述のカノープス、そして、ケンタウルス座の2つの1等星、みなみじゅうじ座の2つの1等星がひしめきます。これらは南天の星座として知られます。

    ただ、冬空の天の川は、夏の夜空ほど明るい流れではありません。そのため冬に天の川を観察するのはなかなかむずかしいのです。とはいえ、十分に暗い場所に行けばもちろん見られます。キャンプなどで暗い場所へ出かけたときはぜひ、夜空に冬の天の川を探してみてください。

    肉眼でいくつ見えるか?すばるで視力検査

    空気の澄んだこの季節、肉眼でも見える星雲・星団があります。肉眼で見て、双眼鏡で見て、どちらも楽しめる美しい星雲・星団です。

    その代表が「すばる」。西洋では「プレアデス星団」と呼ばれています。おうし座の肩のあたり、ちょっとモヤッと、しかしキラキラとして見えるのがすばるの星たちです。あなたは肉眼でいくつ見えますか? 

    双眼鏡で見た「すばる」(プレアデス星団)。画像:国立天文台広報普及室

    日本の民間ではすばるのことを「むつぼし」や「ななつぼし」と呼ぶことがあったそうです。実際、視力1.0前後の方が市街地から離れた場所ですばるを観察すれば、6つから8つほどの星を数えることができるはずです。ただ、第一印象では5つだけだったという話をよく聞きます。逆に9つ以上見えたなら、視力の高さを自慢できるかも?

    さて、肉眼ですばるの星を数えたら、今度は双眼鏡を向けてみてください。双眼鏡の口径と倍率、空の暗さにも左右されますが、最低でも20個の星が目に飛び込んでくるはずです。観測器具を使えば肉眼では見えない星が見えるということを実感するのに、これほどうってつけの天体はありません。

    次にオリオン座大星雲です。三つ星の下がボヤッとして、3つの星が南北に並んでいるのが見えます。これを「小三つ星」と言いますが、その真ん中をよく見ると、淡い光のかたまりになっているのがわかります。これがオリオン座大星雲です。

    すばるは星の集まり(星団)ですが、オリオン座大星雲は宇宙空間のガスが光り輝いている天体です。このような星雲を観察するには恒星を見るときよりも暗い空が必要ですが、条件が難しい分、目にすることができたときの喜びは大きいと言えるでしょう。

    市街地から離れたところで双眼鏡で観察すれば、鳥が羽を広げたような姿を確認できます。形をじっくりと楽しむためには、双眼鏡を三脚でしっかりと固定してください。また、写真のような鮮やかな色と形が見えることを期待してはいけません。天体を撮影するときは何分、何時間にもわたってカメラを星雲に向けて光を蓄積しています。人間の眼ではその瞬間の、淡い光しか見ることができません。

    双眼鏡で見たオリオン座大星雲。画像:国立天文台広報普及室

    もちろん、自分で撮影にチャレンジするのも大いにアリです! 本格的なカメラがなくても諦める必要はありません。最近はスマホカメラの性能が著しく向上しているので、最先端の機種であれば手持ちでオリオン座の形を写し取る程度のことは簡単にやってのけます。高性能スマホでオリオン座を撮影し、後で拡大してみたら大星雲が映っていた、なんてこともあり得ます。すごい時代になったものです。

    これからが冬本番。星空もいっそうきらめきます。防寒対策、感染対策をしっかり取って、冬の星空をお楽しみください。

     

    構成/佐藤恵菜

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