——こういう旅をしながら写真を撮る中で、三井さんが感じていること、伝えたいと思っていることは?
三井:目の前にいる人たち、いろんな現場で働いている人たちは、単純に「すごいなあ」と思うんですよね。自分にそれを讃えることができるとすれば、カメラのシャッターを切ることかなと。撮っている時は目の前の人に対して、カメラを通じて「すごいね」と言いたいというか……写真家に見つめられて、大きなカメラで撮られるということには、何か特別な理由があるわけですから。彼ら自身はまったくそう思ってないんですけど、「あなたたちはすごいんだ」と、僕が介入することで伝えたいし、僕の撮った写真を見てくれる人たちにも伝えたい。そういう気持は根底に絶対あるんですよね。
——写真を撮ることは、三井さんなりのメッセージなんですね。
三井:そうなんですよ。そして、それは十分に伝わると思っています。「こんな風に撮ってくれたのか」と伝われば、相手も喜んでくれますし。
——今回のインドでの旅をふりかえってみて、何を感じていますか?
三井:自分なりの写真の撮り方、一つのスタイルのようなものを確立させたいとずっと思っていたんですが、それは、これまでインドをバイクで4周してきた中で、何とか確立できたかなと。僕自身は意識していなくても、「これは三井さんが撮った写真だね」と言われるようになったので、それはインドという国が鍛えてくれたと思います。ほんとに僕は、撮る時も特に意識はしていないんですけど。誰でも撮れますよと思ってて……。
——どの人も、海外でガイドブックにも載っていないような場所をバイクで何カ月もかけて回るとか、そこまでとことんやろうとは思ってないんじゃないでしょうか。
三井:ああ、それはあるでしょうね。「何でそんなことにこだわるの?」という部分は、それぞれの写真家で違うものがあると思います。僕がインドにある普通の工場とかに行って写真を撮って、「これがいいんだ」と感じている思いというのは、自分の写真を通じてしか伝えられないと思います。
——次の旅は……どうしますか?
三井:次……インドは4周したから、もういいかなと(笑)。東南アジアのいくつかの国をひさしぶりに回ってみるのもいいかもしれない。まあでも……インドですかね。次かもしれないし、何年か後かもしれないけど、いずれまた関わることになると思います。まだ行っていない場所もありますし、インドという国が変化していく様子を見届けたいという気持もあります。自分にとって「ホーム」と言える場所はインドだと、はっきり思っているので。
——これからも、旅の日々から生まれてくる三井さんならではの思いのこもった写真を拝見できるのを、楽しみにしています。どうもありがとうございました。
三井昌志 Masashi Mitsui
1974年京都市生まれ。 写真家。アジアの辺境を旅しながら、「笑顔」と「働く人」をテーマに写真を撮り続けている。著書に『渋イケメンの国 〜無駄にかっこいい男たち〜』『写真を撮るって、誰かに小さく恋することだと思う。』(ともに雷鳥社)など多数。主なフィールドはインド、バングラデシュ、ネパール、ミャンマー、カンボジアなど。
たびそら http://www.tabisora.com/
『渋イケメンの国 〜無駄にかっこいい男たち〜』
三井昌志 著 雷鳥社 本体1600円+税
http://www.tabisora.com/travel/book8.html
三井昌志さんが今回のインドの旅について写真の数々とともに語り尽くす「帰国報告会2016」が、全国各地で開催されます。三井さんから直接レクチャーを受けられる写真教室も各地で同時開催されるそうです。
5月22日(日):福岡(終了)
6月12日(日):東京
6月18日(土):名古屋
6月19日(日):大阪
7月3日(日):東京
帰国報告会2016の詳細はこちら↓
http://blife.exblog.jp/25551035/
写真教室の詳細はこちら↓
http://blife.exblog.jp/25551002/
聞き手:山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。2016年3月下旬に著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』を雷鳥社より刊行。
http://ymtk.jp/ladakh/