100年近い歴史を持つ老舗ブランド「ハクキンカイロ」
皆さんがカイロと聞いて真っ先に思い出すのは、使い捨てカイロではないでしょうか。寒い季節に活躍する使い捨てカイロは、電源いらずのアウトドアユース向き暖房グッズです。
しかしもっと便利なカイロがあることを、皆さんはご存知でしょうか。そのカイロは使い捨てではなく何度も使えて、使い捨てカイロより高出力で温かい。
今回ご紹介するハクキンカイロは、実は100年近く前から存在している歴史ある商品。しかし最近になってキャンパーをはじめ、世界各国から注目を浴びているのです。
なぜ今になって注目されているのか。ハクキンカイロがどのような製品なのか、使用方法の説明を交えながらご紹介します。
ハクキンカイロは科学で発熱する、とても安全なカイロ!
まずは使い捨てカイロが発熱する仕組みから。
使い捨てカイロの中には、鉄粉に食塩水をかけたものが入っています。これを密封した状態で出荷し、使用者が封を切ることで、鉄粉が酸素に触れます。鉄粉は酸素に触れると酸化し、その際に発生する熱を利用しているのです。
物質が酸化する際に発生する、酸化熱を利用したものなのですが、ハクキンカイロも仕組みはほぼ同じ。
ハクキンカイロには、プラチナ触媒というものが使われています。燃料のベンジンが気化し、このプラチナ触媒に触れることで、ベンジンが酸化して発熱するのです。
燃料のベンジンに直接火をつけている訳ではないので、火事の心配もなく安全です。
ハクキンカイロの仕組みを発明したのは、的場仁市という人物で、現在のハクキンカイロ株式会社の創業者。
1923年(大正12年)に発明され、以来ハクキンカイロは改良工夫を重ねてきました。驚くことに開発当初の初期型から最新型まで、部品のひとつである火口は、互換性を保って作られているそうです。
100年近い歴史を持ちながら、消耗品の火口が互換を持って作り続けられている。これは長く製品を利用しているユーザーに、ハクキンカイロが寄り添っている証拠。ユーザーを大事にしている姿勢を感じないでしょうか。
フタには特徴的な孔雀の模様があるのですが、実はこの模様にも重要な役割があります。火口への酸素供給量を調整し、発熱温度をコントロール、発熱持続時間を調整しているそうなのです。
氷点下40度C以下の極寒でも機能するタフさを持ち合わせており、過去には南極観測船の常備品になっていた歴史もあるそうです。
ハクキンカイロを実際に使ってみた!
ハクキンカイロの使い方はそこまで難しくありません。
まずフタを外すと、ふわふわした綿のようなものがあります。これが火口で、ハクキンカイロが発熱する上でとても重要な部分。
ふわふわしたものはガラス繊維で、プラチナ微粒子が担持されている、プラチナ触媒です。
火口の交換適正時期は、1~2シーズン。性能を維持するために、1シーズンごとの交換を推奨しています。
ちなみに交換用の火口は、ハクキンカイロの公式サイトにて、1,000円以下で購入可能です。
火口を外したらベンジンを注入します。カイロ本体の内部には、脱脂綿が詰まっており、この綿がベンジンを吸収します。綿から発散されたベンジンは、プラチナ触媒と反応し、酸化熱を発するのです。
ちなみにこちらの脱脂綿も消耗品で、交換時期は5~10年。火口と比べると、脱脂綿の交換頻度はかなり少ないです。
ハクキンカイロの燃料であるベンジンは、メーカー指定の商品が推奨されています。指定されているベンジンは、エビスベンジン・NTベンジンの2商品。
指定品以外のベンジンを使用すると、プラチナ触媒の劣化、温度の上がり過ぎ、持続時間の減少、臭いなどの不具合を生じる恐れがあるようです。
指定品のベンジン2商品は、公式サイトで販売されているほか、ドラッグストアやホームセンターなどで購入が可能です。
ベンジンを注入する際は、付属のベンジンカップを使用します。
カップには2本の線が描かれており、1本目の線が約6時間、2本目の線が約12時間、温かさが持続する時間の目安になっています。
ベンジンの注入可能量は、最大2杯まで。24時間まで持続させることが可能です。キャンプで1泊する場合は、1杯半~2杯のベンジンを注入すると、調度良さそうです。
ちなみにハクキンカイロの発熱は、途中でやめさせることができません。基本的に一度注入したベンジンが発散し尽くすまで、発熱は止まりませんので、使いたい時間の分だけベンジンを注入する必要があります。
ベンジンを必要な量だけカップに溜めたら、カップを90度回転させ、ベンジンをカイロ本体に落とします。
カイロ内部の脱脂綿にベンジンが吸収されたことを確認したら、ベンジンカップを外します。
外したベンジンカップは、紛失しないように保管しておきましょう。最悪紛失した場合、ベンジンカップも公式サイトから購入可能で、定価は500円以下です。
外していた火口を、再度取り付けます。
ライターやマッチを使って、火口を温めます。
ここで注意する点は、あくまで火口は温めるだけ。火をつける訳ではなく、プラチナ触媒の反応を促進するために、火口の温度を高くするだけです。そのため火口に直接火を当ててはいけません。
火口に火を2~3秒近付けたら、火を消して蓋をします。
蓋をしたハクキンカイロは、付属のフリース素材の袋に入れて使用します。約20~30分で温度が最高まで上がり、素手で触るのが困難なほど高温になります。
ハクキンカイロの発熱量は、使い捨てカイロと比べて約13倍もあるとのこと。袋に入れる事で温度を和らげ、ポケットに入れたり、体に直接当てても問題ない温度になります。
ただし、体の同じ個所に長時間当て続けると、低温火傷をする恐れがあります。就寝時に使用する際などは、特に安全に気を付けて使いましょう。
使い捨てカイロはパッケージの袋がゴミになり、また本体自体も使用後はゴミになります。貼るタイプのカイロの場合は、剝離紙もゴミになりますよね。正直、環境に良いとは言えません。
その点ハクキンカイロはゴミが出づらく、繰り返し何度も使えるため、エコで環境にやさしいカイロとして、世界各国が注目しています。
私たちキャンパーも、自然の中でキャンプをする立場である以上、環境にはやさしくなければいけないと感じます。
繰り返し使えて、見た目もおしゃれなハクキンカイロ。皆さんも使ってみてはいかがでしょうか。