舗装された林道に出たら、大野集落へたどり着きます。閻魔大王をはじめとした十王が祀られた十王堂や六地蔵、庚申塔などがあり、民衆の信仰心を垣間見られます。道標には「左ハ志ん志ゃう? あ、信州のことか!」と小さな発見。
このエリア、明治25年に国道が開通するまでは、旅籠や飲食店、小売業が並んでいたようです。歩荷も荷をおろし、中山峠に向かう前に一息ついたのかなと思いながら、私たちもお昼ごはんの時間。中山峠越えに備えます。
中山峠を歩くと、最初に出合う史跡にカンパ地蔵があります。カンパ=おできに効くと信じられていました。扉は支え棒で閉まっていますが、開けて拝むことができます(閉め忘れに注意)。
そこから少し歩くと、ウトウと書かれた道標が。聞き慣れない言葉ですが、ウトウとはU字にえぐられた道だそう。ひと1人が通れるくらいに底辺の細い道。「牛と歩荷とで歩くのではなく、馬を使って運べば早いのに何で牛なんだろう?」と最初は思っていたけれど、長年かけて牛と歩荷がゆっくり踏みしめて歩んでいき、ようやく道らしい道ができたんだろうなと往時のことを想像して、その途方もなく地道な歩みにはぁーとため息。