さて、今回使用するもうひとつの調理器、ロケットストーブについても簡単に説明を。ペール缶や一斗缶などの廃品を使えば簡単に自作できて、廃材を燃やして使うロケットストーブは、エコな暖房器具として近年注目を集めている。少ない燃料でも500~600度の温度を維持し、煙が少ないというのも人気のポイント。ちなみに今回のロケットストーブは、日高さんがイベントの1週間前に30分ほどで製作したものだ。
参加者が甘夏の皮をひたすら剥いたり、フランスパンやフルーツをカットして器に敷き詰めたりしているあいだに、日高さんが着火のデモンストレーションを行う。焚き口にかんなくずを詰めて、そこに火のついたマッチをポトン。炎が見えたら、適当な太さにカットした木材を投入して燃やしていく。するとストーブ本体に流れ込んだ熱が、急激な上昇気流に乗って上部の火口に届く、という仕組みだ。
無事に点火したら、鍋を置いてローズマリーといっしょに甘夏を煮込む。さわやかな香りが、あたりに漂う。
とろとろのおいしそうなコンフィチュールが完成したら、ロケットストーブの上に愛らしいフォルムのオーブンをセット。天火にかけて使用する「ピースオーブン」というもので、昔は家庭科の調理実習でも使われるほどメジャーな存在だったが、電気オーブンが台頭すると、急に廃れていったらしい。
立道さんから「よかったら、オーブンの中に手を突っ込んでみてください」と言われ、恐る恐る手を入れてみる。あちっ! ロケットストーブは火力が強いので、すぐに庫内が温まるのを体感して欲しかったとのこと。
さあ、次はいよいよパンプディングを投入。そのまま入れると、ロケットストーブから噴き上がった炭が表面についてしまうので、アルミホイルで覆うのを忘れずに。
すべての料理ができあがったら、お待ちかねの試食タイム。15人ほどが同時多発的に手を動かした成果がテーブルに並ぶと、参加者から「すごーい!!」との声が上がる。バイキング形式で料理を少しずつ取り分けたら、皆で「いただきます」。
パエリアはアサリのダシがお米に行き渡ったじんわりやさしい味。スパニッシュオムレツは卵のフワフワと、別に茹でておいたじゃがいものほっくりした食感がベストマッチ。おいしい、おいしい、とあっという間にペロッと平らげたら、お楽しみのデザートだ。
甘い香りを放ちながら、パンプディングがやってきた。焦げた表面がアウトドアクッキングならではという感じがして、とてもおいしそう。あちこちから歓声が聞こえる絶品のパンプディングをつまみながら、誰からともなくイベントの感想を話し始める。「ソーラークッカーって、食材を入れて放っておけるから楽かも」、「ロケットストーブを作っておけば、災害時に活躍しそう」、「アウトドア料理って男の人好きだし、きっとハマると思うから、これはぜひ男性陣に注目して欲しい」などなど。
なかなか実物に触れる機会がなくて、興味はあるけれどちょっと面倒かな、と思っていたソーラークッカーとロケットストーブ。今回、「きらくなさんぽんれすとらん」に参加してみて、何人か集まってやれば、思いのほか楽しく取り組めることがわかった。
いつか我が家の庭にも導入して、ますます庭で楽しく、面白く過ごせたら……という妄想を膨らませつつ、帰路についた。
きらくなたてものや
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ソーラーハウスにしかわ
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POMPON CAKES
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旅音(たびおと)
カメラマン(林澄里)、ライター(林加奈子)のふたりによる、旅にまつわるさまざまな仕事を手がける夫婦ユニット。単行本や雑誌の撮影・執筆、トークイベント出演など、活動は多岐にわたる。近年は息子といっしょに海外へ出かけるのが恒例行事に。著書に『インドホリック』(SPACE SHOWER BOOKS)、『中南米スイッチ』(新紀元社)。
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