男の名は、野田知佑(のだ・ともすけ)。
いま40代以上の方なら、1980年代後半に、愛犬のガクとともに日清食品チキンラーメンのCMに登場していたベースボールキャップ姿のカヌーイストを覚えておられるのではないでしょうか?
幾星霜をへて、2013年夏。
75歳の野田さんは、「これが最後だろう」と、これまでユーコンの旅で使ってきたカヌーではなく、満を持してイカダでの旅に挑戦する決意をします。あの『NATIONAL GEOGRAPHIC』と同じようにカナダの丸太でイカダを作り、ユーコン川中流域700km、人力の旅に出ました。仲間7人と犬2匹をつれて。
イカダの上で、ゴールドラッシュ時代の作家ジャック・ロンドンの伝記を読み、120年前、蒸気船が苦心して通過した難所に挑みます。
オオヤマネコ、クマ、ドールシープ、オオカミなどの野生生物とニアミスしつつ、釣り上げたグレイリングを塩焼きにして旅人にふるまい、夜は焚き火のまわりでオランダ、フランス、カナダ、ドイツの旅人たちと、各々の人生を語り合いました。
キャンプ地に突然、レンタルカヌーでひとり旅をつづける30歳の日本人美女が上陸してきた! などという事件もありました。
広い夜空はしんと冷えて、8月にもかかわらず、夏の終わりを告げるオーロラが舞います。
ユーモラスでのんびりとした24日間の旅です。