立春を迎えた2月初旬。ひと足早い春を見つけてみようと、野草愛好家のんさんと一緒に野草探しに出かけた。探して、触って、嗅いで、味わって。野草を堪能してきた!
啓蟄のいまは野草が元気に「コンニチハ」
「まだ植物は冬の装いですが、東京都心はアブラナが咲き、フキノトウも出始めましたよ」
365日野草生活ののんさんから、そんな春の報せが届いたのは2月初旬。遠出もままならない今日このごろ、近所で自然に触れるべく野草探しを思い立った。もしかしたら、おいしい野草も見つかるかな♡ と、本心は花より団子なのである。
野草散策当日。のんさんと河原の近くの駅で落ち合った。歩きはじめて数分も経たないうちに、立ち止まる。
「あ、ノゲシですね。こんなところに。こっちはヒメツルソバ。ヒマラヤ原産の植物なんですよ」
えッ!?あのヒマラヤ?目を丸くするこちらをよそに道端の隙間、アスファルトの割れ目、そんな場所で逞しく生きる野草の姿をどんどん見つけていくのんさん。野草愛が止まらない。
「ここは元々あった植物もいますが、9割ほどは外来種といわれています。虫や風、あるいは人間によってタネが運ばれて根付いたということですね」
さきほどの道脇に咲いていたヒメツルソバ(小さなピンク色の花を咲かせる)も、はるばるヒマラヤ山脈からやってきたのだ。小さな土手に着くと、数本ではあるが薄い紫色のハマダイコンの花がもう咲いていた。陽当たりがよく暖かかったからだろうか。2月時分、多くの野草はまだ葉だけで花は咲いていない。あと1か月もすれば花が咲き始めると、のんさん。
しゃがみ込んで地面を見ていくと多種多様な野草がひしめき合っていた。そして、オオイヌノフグリやセイタカグチソウに隠れてフキノトウが膨らんでいるではないか。
「もうあるのか〜」と感心しつつ、天ぷらにするべく、少し頂戴する。そして、次に現われたのはアップルミントの群生。本当にリンゴとミントが混ざったような清々しさが鼻を抜ける。なんていい香りなんだ! ス〜ハ〜ッと思いっきり深呼吸。
「いい香りでしょう!ゼリーやクッキーにするのもいいんです。まだ小ぶりですが、向こうにはヨモギも出てきていますよ」
と、のんさん。ヨモギの葉の裏をルーペで覗くと、白い毛のような繊維がへばりついていた。この白い毛を集めて作るのが、お灸に使うもぐさ。よく燃えるという。ヨモギは北海道を除く広い地域で見られる。万葉集や百人一首にも詠われ、昔から日本人には親しみのある野草だ。
ヨモギといえば餅など春の若芽は菓子にも用いられるが、繊維質でつなぎの役割をする。
野草散策の締めくくりに、摘みたての野草にひと手間を加えて味わうことにした。もっちりのパンケーキや爽やか野草茶に変身。入浴剤の作り方も教えてもらった。ぜひ、お試しあれ!
◎野草探しの際の注意点
野草探しはとても楽しい。もし、摘むときには採集可能な場所か必ず確認をしよう。そして、食用にする場合には、有害植物と間違えないように必ず図鑑で確認するか、有識者の指導の元で行なおう!
◎あると楽しい♪野草探しグッズ
この日に出合った野草たち
小一時間程度の散策で30種類ほどの野草に出合うことができた。その一部をご紹介!
↓ノボロギク/黄色い小ぶりな頭花が愛らしい♪
↓ギシギシ/漢字では「羊蹄」。根は生薬になる。
↓メマツヨイグサ/平たくロゼット状になり越冬中。
↓カラシナ/種から「粒マスタード」が作れる。
↓セイタカグチソウ/空きに黄色い花が咲き、泡立つ薬草湯に!?
食べる?浸かる?野草を活用しよう!
活用その1 もちもちヨモギパンケーキ
〈材料〉2人分
ヨモギ…約40g バター…5g
塩か重曹…ひとつまみ
餡子、きな粉、黒蜜…お好みで♥
A
ホットケーキミックス…150g
卵…1個
牛乳…80㏄(指定分量より少し少なめに)
〈作り方〉
(1)ヨモギを水でよく洗う。
(2)鍋にお湯を沸かし沸騰したら、塩か重曹を入れてヨモギを入れる。すぐにヨモギの色が鮮やかに変わるのでそのまま10秒ほど茹でる。
(3)ヨモギをザルにあげて冷水にさらし、よく絞って十分に水気をとる。
(4)包丁で細かく刻み、スリコギでさらに細かくする。
(5)ヨモギとAをよく混ぜる。
(6)フライパンにバターを溶かし(5)を焼く。好みで餡子やきな粉、黒蜜をトッピングして完成!
活用その2 簡単爽やかアップルミントティー
〈材料〉
アップルミント…約70g
お湯…500ml
レモン…お好みで♥
〈作り方〉
(1)アップルミントをよく洗い、葉をちぎる。葉をちぎったり叩いたりして液胞を壊し、香りを立たせるのがポイント。
(2)(1)をティーポットに入れ、熱湯を注ぐ。
(3)3分ほど蒸らし、レモンなどを添えて完成!
活用その3 アップルミントの湯
活用その4 ヨモギ湯
〈用意するもの〉
ヨモギ
…好きなだけ!
だしパック…数枚
〈作り方〉
(1)ヨモギをちぎって、だしパックに詰める。
(2)鍋にお湯を沸かし、(1)を入れて5〜10分煮出す。
(3)(2)を湯舟に入れる。
※構成/須藤ナオミ 撮影/小倉雄一郎
※この記事は2021年4月号に掲載された記事を再編成しています。