「みなさん、ちょっと上を見上げてください」とリーダーが足をとめました。「枝と葉っぱの伸び具合を見てください」
「ここがわかりやすいのですが、高く伸びた木々が重ならないように枝を伸ばしているのが見てわかります。これは偶然ではなく、お互いに光合成しやすいよう、木々が相談して決めているんですよ」。またまた〜と苦笑いしていると、どうやらそれは冗談ではありませんでした。「木々からはテルペン類などの揮発成分が出ていて、その出したもので枝葉の距離を測っているそうなんです」。その揮発成分はいわゆる森の香り。フィトンチッドという名でご存じの方も多いかもしれません。この時も、いい香りがするなあと深呼吸していたのですが、思わぬ森林浴となっていたようです。植物って動かないけれど意思を感じるというお話でした。
さらに歩くと、ギー、ギーと変な声が。これ知ってる! キツツキの声だ(野鳥好きなもので少しは知識あり)。「コゲラがいますね」とリーダーたち。さすが鳥好きの参加者の皆さん、双眼鏡を持っている方は一斉に探鳥を始めます。私も負けじと双眼鏡を……全然見つからない。
日本のキツツキの仲間で一番小さいコゲラ。スズメほどの大きさで木の幹をちょんちょん渡ってつつきます。ああ、見たかった。一緒に参加していた日本野鳥の会の職員さんによると、野鳥を見るポイントはまず肉眼で確認すること。そうか、いきなり双眼鏡で探そうとしたのが敗因でした。すると今度は……ジュルジュルジュリリと聞こえます。現れたのは白くて可愛い小鳥のエナガ。こちらもファンの多い鳥です。いた! 肉眼で枝先にいる姿を確認しつつ双眼鏡を……。み、見えない。いきなり行方不明。見失いました。まわりの参加者のみなさんからは「いた! いた!」との声。ああ、悲しい。