世界から注目される”和紙職人”がいる富山県立山町の「川原製作所」で和紙作りを体験!
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    2021.03.29

    世界から注目される”和紙職人”がいる富山県立山町の「川原製作所」で和紙作りを体験!

    私が書きました!
    グルメサイクリングガイド
    指田真琴
    1979年、神奈川県藤沢市生まれ、富山県在住。富山グルメサイクリングツアー代表。年間500軒以上外食し「美食」を追求。2014年から富山県で食と自転車をコラボしたグルメサイクリングツアーを開始。他に類のないサイクリングガイドを目指しています。https://www.facebook.com/toyama.gourmet.cycling.tours/ instagram:@maksashida

    茹でた「楮(こうぞ)」を豪快に引き上げる川原隆邦さん。

    センスあふれる「川原製作所」にて、濃密な和紙制作体験

    富山県中新川郡立山町虫谷。立山の麓にある小さな集落に、フルオーダー制の和紙職人・川原隆邦さんの「川原製作所」がある。その類まれなるアイデアとセンスにより、近年ではアメリカの大手エンターテインメント企業からの制作依頼や、ルーブル宮パリ装飾芸術美術館への作品展示など、日本のみならず世界から注目されている「川原の和紙」が、立山から旅立っている。

    今回は川原製作所の工房にて、ほかではあまり見られない和紙の原料の栽培、収穫、紙漉き前後の工程すべてを体験させていただくことになった。その一連の工程をモデルさんに体験してもらいながら紹介していきたいと思う。

    食べて美味しく、和紙には欠かせない「トロロアオイ」

    体験をしてくれるのは、陶芸家の連理さん。手にはトロロアオイの花。

    11月中旬、早朝工房を訪れると「トロロアオイを採りに行きましょう」と川原さん。歩いて1分のところにある畑には「トロロアオイ」という和紙を制作する上で欠かせない植物が栽培されていた。収穫は大体10月から11月いっぱい。ピーク時にはトロロアオイの花の部分、通称「花オクラ」が毎日のように畑を埋めつくす。

    和紙に使用されるのは根っこの部分のみであるが、花はエディブルフラワーで食べることができ、ほかの花よりも野菜のような甘みが感じとれて美味しい。一日花であるゆえに、飲食店でも目にすることは少ないが、川原さんのところでは、たくさん咲いた日には料亭などに出荷をしている。

    和紙の原料「楮」とは

    「楮(こうぞ)」を重たそうに持ち上げる連理さん。楮とはクワ科の植物で、木の部分を窯上で蒸し、表面の黒皮を剥ぎ、黒皮裏面に残るわずかな繊維だけを削いで和紙として利用している。

    工房に戻ってくると、大きな窯に和紙の原料「楮」が茹でられていた。体験時は楮を引き上げるのみだが、実際は窯の湯を焚くだけでも3時間ほど必要となり、柔らかい状態になるまでは丸一日を要するという。

    今回はタイミングを逃したが、11月初旬には開墾ツアーも行なわれ、楮の収穫体験もできるのだとか。

    和紙づくりで一番しんどいのがこの作業。冬場は水に10秒手を浸しているだけでもきつい。

    茹であがった楮を大きな水槽に入れ洗う。茹でる際に、アクにより茶色く染まってしまうため、長くて2~3日浸しておきアクを完全に抜き白くする。

    20回も叩けばもうヘトヘト。川原さんは18年続けた結果、親指と人差し指の間にある「母子内転筋」が発達し、手だけ見ればまるでアスリートだ。

    洗い終わった楮は、木槌で叩き柔らかくしていく。叩き具合により和紙の表情が決まってくるため、きめ細かい和紙にする際は数多く叩き続けなければならない。ある程度平になったら、塊に戻してまた叩くを繰り返す。気の遠くなる力仕事だ。

    トロロアオイからとろみを抽出

    トロロアオイの根っこ。(左)採れたて(、右)採取してから石鹸液にて保存されたもの。

    先ほどのトロロアオイの根をザルに入れ水に浸すと、とろみ成分が出てくる。冬場は大体1週間とろみが出っぱなしになり、一度も液を抽出せずにいれば粘度が増していく。制作する作品によって粘度の調整をしているそうだ。とろみ成分は通称「ネリ」と呼ばれており、楮の繊維をバラバラに分ける役割を担っている。

    紙漉きの準備

    「フネ」と呼ばれる紙漉きをする水槽に、叩き終えた楮とトロロアオイのとろみを投入し、かき混ぜていく。しっかりとかき混ぜることにより、楮の固まった繊維がネリによって1本1本ほぐされていく。

    いざ紙漉き!

    紙漉きに使われるのは、簾(すだれ)を更に繊細に作った「漉き簀(すきす)」という道具に「簀桁(すけた)」という枠を取り付けた物でおこなう。漉き簀は竹細工が有名な静岡県産で、20万円以上するという。

    本来は上記写真の4倍ほどの漉き簀を用いるが、今回は小さな和紙制作用の漉き簀を使用。繊維が裏に付かないよう、簀桁を垂直に下ろしすくう。繊維が多いときはあまり動かさず、じっと水分が抜けるのを待つことがポイント。

    水分が抜け繊維が簀に定着したら、再度すくうを繰り返し、自分が仕上げたい表情に簀桁を動かして繊維の位置を調整する。

    緊張の瞬間、紙絞り~紙干し

    紙漉きが終わると、簀桁から漉き簀を外し端から沿わすようにゆっくり台に置いていく。

    本来ならば圧搾機などで丸一日絞り、乾燥に適した湿り具合にするが、今回は裏技にて水分を抜く。その後、刷毛を使用し和紙を慎重に引き剥がす。焦って途中から破れてしまえば失敗となるため、緊張がピークになる瞬間だ。

    最後は薪によって温められた鉄製の乾燥機に和紙を貼り付けていく。刷毛を使用し、中心から外側に向かって空気を追い出しシワができないようにする。シワになれば失敗になるので、最後まで気が抜けないのだ。数分も経てば乾燥も終了。和紙は完成し工程はこれで終了となる。

    川原製作所を訪れて、プチ弟子入り体験してみては?

    ※訪問の際は事前に連絡が必要です。

    川原の和紙、富山に新たな「月」をつくる

    ここでひとつ富山県内にある川原さんの作品を紹介しよう。

    「サン柳亭の”月の間”」入口の障子戸。主室の照明を点けた姿。

    奥側入口の照明のみを点灯させた姿。あまりの姿の変わりように、思わず声を出してしまうほどだった。

    富山県の宇奈月温泉街にある、富山づくしをコンセプトにかかげている宿「サン柳亭」。この宿の露天風呂付き客室、通称「月の間」に川原さんの作品はある。主室側の灯りを付けた姿は、金箔をちりばめた平凡な円にも見えるが、ひとたび奥側に灯りを切り替えると、生命を感じるような美しき月が姿を現した。月の間でなら、あいにくの夜空でも十二分に宇奈月の”月”を堪能できるのではないだろうか?

    川原製作所では大きな作品から小さな物まで、和紙を通して自分の思いを形にしてくれる。実は私もガイドの際に使用する和紙をオーダー中。あなたも川原製作所で、気軽にフルオーダー和紙の相談をしてみては?

    川原製作所

    住所:富山県中新川郡立山町虫谷29
    http://www.birudan.net/

    撮影:徳光典子
    モデル:連理

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