——今回の本では、吉田さんが実際に訪れた168カ所のスポットのうち、「景色の美しさ」「文化的な面白さ」「人のやさしさ」「行きにくさ」「非日常感の強さ」という5つの尺度を設定して、吉田さん自身の絶景スポットランキングベスト20を紹介されてますよね。その順位は本を読んでいただくとして、このランキングのくだりがすごく面白かったんですが。
吉田:自分的には、実はおまけみたいな感じで書いた部分なんですけど、そうおっしゃってくださる方は多いですね。あくまでも客観的な視点でランキングを決めたいと思っていたので、そういう5つの尺度を決めて、1カ所ずつ星を付けていきました。ただ単純にベストテンを思いつきで選ぶとしたら、それはすごく気分に左右されちゃいますよね。
——上位にランクインしたスポットについては、吉田さんがその旅で体験した出来事のインパクトの強さも影響しているでしょうか。
吉田:そうかもしれないですね。僕が選んでランクインした場所でも、他の人にとっては全然たいしたことないというスポットはあるでしょうけど。いろんな絶景本を読んでいて、「ここは全然いいと思わなかった」という場所が載っていたとしても、それは普通のことだと思います。
——本の中で、自分にとって絶景は目的というより手段であって、むしろ旅をすること自体が目的だと書かれていましたね。
吉田:自分には結構、過程が重要なのかなと。目的地の景色自体は割とがっかりなものだったとしても、それ以外のことが思い出に残るような旅であればいいのかな、と思っています。
——実際にそういう旅の経験はありますか?
吉田:ロシアのキジ島という、島の中に歴史的な木造の教会が建っている場所に行こうとしたことがあったんです。夜行列車で行ったんですが、切符を取るのも大変だったし、結構遠くて、さんざん苦労してたどり着いたら、現地ですごく天気が悪くなっちゃって、キジ島に渡る船が出ないと言われて、結局見られずじまい。短期の旅行だったので、帰らざるをえませんでした。
——それは本当にがっかりでしたね……。
吉田:でも、その旅の夜行列車で一緒になったおじさんとすごく仲良くなって、いろいろ親切にしてもらったんです。同じ駅で降りたんですが、別れた後も小さな街なのでまた会うんですよね。「大丈夫か? ちょっとお茶していこう」とカフェに連れて行かれて、ケーキとかをごちそうになったり。そのおじさんとは言葉も全然通じなかったんですけどね。
——いいですね。そういう旅にも、きっと意味はあるんでしょうね。
吉田:これ、たぶん重要なポイントですよね。ツアーか個人旅行か、旅のスタイルにも左右されると思いますが、旅には絶対的な正解はないですよね。
次回のインタビュー後半では、絶景本を分析した後に吉田さんが実際に訪れた中国・黄龍と九寨溝の旅などについて、引き続きお話を伺います。
吉田友和 Tomokazu Yoshida
初海外=世界一周をきっかけに旅に目覚める。その後、週末海外を繰り返していたら、いつの間にか旅行作家に。『サンデートラベラー!』『自分を探さない旅』『10日もあれば世界一周』など旅の著書多数。
『思い立ったが絶景 世界168名所を旅してわかったリアルベスト』(朝日新書)
https://www.amazon.co.jp/dp/B01EAB0GZS
『ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン ベトナム1800キロ縦断旅』(幻冬舎文庫)
http://www.amazon.co.jp/dp/4344424859
聞き手:山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。2016年3月下旬に著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』を雷鳥社より刊行。
http://ymtk.jp/ladakh/