——噂の絶景スポット、どうでしたか?
吉田:中国人観光客の数が、本当にものすごいことになっていました。特に九寨溝。あれはもう、テーマパークですね。本の中でも「絶景はテーマパークである」と書いたんですが、それが結論の一つかなと思っています。まず、入場料がめっちゃ高いんです。日本円で6000円近くもする。ディズニーランドと何ら変わらない。そんなに入場料が高いのに、中に入ると、人でごった返していて、イモ洗い状態なんですよ。
——中国の観光客の人たちは、どんな風にして九寨溝を楽しんでいたんでしょう? やっぱりセルフィー(自撮り)?
吉田:セルフィーですね。日本人からすると、一生に一度は見ておきたい憧れの絶景みたいなイメージの場所ですけど、あっちでは、風景だけを撮るために三脚にカメラをセットして天候がよくなるのを待つような人は、全然見かけません。結婚したカップルが、ウェディングドレスとタキシード姿で記念撮影をしていましたが、それは象徴的な光景だなあと思いました。
——吉田さん自身は、天気の様子を見ながら撮影をされていたんですよね。本に載っている九寨溝の写真、きれいですね……。
吉田:その日、天気はあまりパッとしなかったんですけど、待っていたら、晴れてきましたね。九寨溝は、雨が降ると水面が波紋で埋まってしまって、写真の撮りようがないんですよ。だから、日本人っぽいですけど、待ちました。僕にとっては、写真を撮ることが旅の中で一番プライオリティの高い行為なので。
——今回の旅では、特に大きなトラブルはなかったんですか?
吉田:大丈夫でしたね。移動に使ったタクシーは、運転は荒っぽいし、途中でドライバーが二度も変わる謎の展開でしたが(笑)。でも中国の旅は、お金ではあまりモメない印象がありますね。旅先としてはそんなに大変ではないと思います。あの旅の後、新しい本を書くために何度かベトナムにも行ってたんですが、ぼったくりとか、あちこちで結構モメたんです。ベトナム、基本的にはいい人が多いんですが、そうでない人もいて、僕の印象では、東南アジアでは一番手強い国かもしれません。本を書く分にはネタに困らなくていいんですけど。他の国だと、インドも、旅行するだけで物語が展開するというか、いろいろ書けることが多いですね。
——書き手としては、やっぱりそういう国を旅先に選んでしまうんですか?
吉田:いやいや、楽なところがいいですよ(笑)。でも、楽すぎると正直つまらない、というのはあるかもしれないですね。何てわがままなんだろうと思いますけど。楽すぎるけど行っちゃうのは台湾とかかな。台湾やタイの人たちは、日本人には優しいですね。
——今回の本の中での旅もそうでしたが、絶景を見に行く、というのを、いくつかあるきっかけの一つにして旅に出るというスタイルでも、全然いいのかもしれないですね。
吉田:そうですね、絶景もきっかけの一つですよね。旅自体、そんなにえらそうなものでもないですし。絶景を見に行って、雨とかが降って、その絶景を見ることができなかったとしても落胆しすぎないような、どこかで納得して旅のできる人は、旅に向いているんでしょうね。
——最後に、吉田さんが『BE-PAL』の読者の方々におすすめするとしたら、どんなスタイルの旅がいいでしょうか?
吉田:そうですね……海外で、キャンプとかするといいんじゃないでしょうか。僕は韓国やタイでもキャンプをしたことがあります。キャンプ、結構好きなんですよ。国内でも時々やってます。大勢で集まってワイワイ騒いだりはしないですけど。一番おすすめなのは、アメリカの国立公園でのキャンプです。アメリカはキャンプ場の質が違いますよ。そういうキャンプをきっかけの一つにして旅に出る、というのもいいんじゃないですかね。
——そういうのんびりした旅、してみたいですね……。どうもありがとうございました!
吉田友和 Tomokazu Yoshida
初海外=世界一周をきっかけに旅に目覚める。その後、週末海外を繰り返していたら、いつの間にか旅行作家に。『サンデートラベラー!』『自分を探さない旅』『10日もあれば世界一周』など旅の著書多数。
『思い立ったが絶景 世界168名所を旅してわかったリアルベスト』(朝日新書)
https://www.amazon.co.jp/dp/B01EAB0GZS
『ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン ベトナム1800キロ縦断旅』(幻冬舎文庫)
http://www.amazon.co.jp/dp/4344424859
聞き手:山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。2016年3月下旬に著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』を雷鳥社より刊行。
http://ymtk.jp/ladakh/