急なパンクでも、簡単に空気を補充できる優れものCO2ボンベ
サイクリング中の思わぬトラブルといえば、タイヤのパンクがあげられる。低い空気圧で段差を乗り越えてリム打ち(チューブを地面とホイルの間に挟んで穴をあけてしまうこと)をしたり、鋭利なものを踏んでタイヤとチューブを貫通させ穴をあけてしまったりと、その原因はいくつかに分かれている。
とくに近年は路面状態のよい舗装路のみならず、グラベルといった砂利道を走るライドも一般的になっており、パンクのリスクは低くない。予備チューブやタイヤレバー、空気入れなどはサイクリストが携帯する必需品というイメージだが、二酸化炭素が圧縮されたボンベで空気を入れる工具があるのはご存知だろうか?
使い方さえわかれば、サッと空気を補充できるうえ、かさばらない便利なアイテムであるCO2ボンベ。今回はその特徴や、使用上の注意点などをご紹介したい。
CO2ボンベを使用するのに必要なものとは
CO2ボンベ、と通称名で呼ぶこのアイテム、正確には「CO2カートリッジ」と「CO2インフレーター」という商品に分かれている。二酸化炭素が充填されている銀色の小さいタンクがカートリッジ。そして、その先端に取り付けてエアバルブへ突き刺して使用するものがインフレーターだ。
カートリッジが1本300円ほど、インフレーターは何度も使えて1000円強。コンパクトにまとめることができて軽いため、サイクリングの際は背中のポケットにしまっておいたり、サドルバッグに忍ばせることも可能だ。最近はMTBなどで、あらかじめサドルにアダプターが取り付いていて、スマートに格納できるようなパーツも登場している。
タイヤに空気を満たすのに、必要なボンベの量を計算してみた
さてこのカートリッジだが、空気圧を必要な分だけ補充するのに何本必要なのだろうか?気になって調べてみるも、タイヤの中の体積などはさすがに明記されておらず、あえて計算してみることにした。
詳しい計算方法は控えるが、ざっくりいえば、チューブが膨らんだときの断面積を求め、そこに円周の長さを掛ける。これでチューブが1気圧で膨らんだ際の体積になるので、あとは入れたい気圧を掛ける。
カートリッジの容量はグラム表記なので、体積に二酸化炭素の係数を掛ければグラム換算できる。具体的には以下のような結果となった。
ロードバイク / クロスバイク:<700C-23 / 8気圧:約11g> <700C-32 / 4.5気圧:約13g>
MTB:27.5-2.25 / <2.2気圧:約19g> <27.5-2.8 / 1.5気圧:約21g>
一般的なカートリッジの内容量は16gとなっている。カートリッジで圧送する場合、カートリッジ内の体積も計算に入れなければいけないが、それを踏まえてもロードバイク/ クロスバイクはカートリッジが1本、MTBは2本あれば充分だといえる。実際、私が過去パンクでカートリッジを使ったときも同じような使用本数になったうえ、メーカーもそのように指定しているので、まずこの本数さえ抑えておけば問題ないだろう。
使い方をおさらいしてみた
使い方は、タイプによって異なる。インフレーターに弁がついていないタイプは、カートリッジを突き刺すと二酸化炭素がいきなり圧送されてしまう。先にタイヤ側にインフレーターを取り付けてから、カートリッジを取り付ける手順となる。
インフレーターに弁がついているタイプ(市販の多くはこちらだ)は、先にカートリッジをインフレーターに取り付ける。カートリッジには既に穴があいているはずだが、弁があるので中身が漏れない。この状態でタイヤのバルブへ差し込んで弁を開放して二酸化炭素を送り込む。
上記のようにインフレーターの圧送方法はアイテムによって若干やり方が異なるが、大体は弁があって押し込むタイプなので、説明書を事前に読んでおけば問題がないだろう。エアツールなどと同じ感覚で、ものの数秒で充填される。
気をつけておきたい点
このCO2ボンベ、とても便利で軽量な反面、注意点が少しあって初見ではとっつきづらい印象がある。以下の2点をおさえたうえで安心して使っていただきたい。
1. タイヤにをCO2を補充した直後、つまりカートリッジからCO2が放出されるとカートリッジ自体が急激に冷える。これは圧縮されたCO2が膨張するときに気化熱で周囲から熱を奪うためだ。平たくいえばボンベの表面が凍ってしまうほど急冷されるので、カートリッジは絶対に素手で持たずグローブで持ったり、専用のカバーをつけておくことが必須だ。
2. 二酸化炭素は通常の空気(ほとんど窒素)に比べて分子のサイズが小さいため、チューブから抜けてしまう速度が早い。あくまで応急用と考えて、帰宅したあとに一度、二酸化炭素を抜き切り、自宅のフロアポンプなどで空気を補充するとよいだろう。
備えあれば憂いなし、便利なグッズを用意しよう
使い方さえ理解できれば急なパンクでも即座に対応ができる。一緒に走っている仲間をなるべく待たせずに済んだり、気温がとても高い日や低すぎる日でも、サッと修理ができる。まずは一度自宅などで実験してみてから、実践で使用してみていただきたい。