【ソロ秘湯】秘湯マニアですら到達困難な『金花湯』を征する必勝法(北海道)
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    2021.04.24

    【ソロ秘湯】秘湯マニアですら到達困難な『金花湯』を征する必勝法(北海道)

     

    日本一到達困難と言われる、幻の秘湯とは!?

    みなさん、こんにちは!ソロ秘湯愛好家のゆみです。今日は北海道島牧郡島牧村に来ております。私がなぜ、ここにいるかというと……「秘湯マニアですら到達困難」とも言われる温泉にアタックするためなんです。その温泉の名は「金花湯」。秘湯ファンなら必ず一度は耳にしたことがある憧れの存在でもあります。ではなぜ、到達困難なのか??

     

    林道を往復46km(徒歩23時間)! 徒歩での日帰りは不可能

    1つめの理由は、温泉が山奥の僻地にあり遠いこと。往復46km(徒歩23時間)もあり、徒歩で行くと日帰り不可能。2つめの理由は、島牧村は道内でもクマの出没が多いエリアだから、クマと遭遇する危険があること。ツキノワグマさんではなく、狂暴なヒグマさんですからね(怖い、怖い)。

    林道は現在使われておらず、一部崩落していたり、川を渡らなければならない箇所があり自動車では厳しい……という悩ましい秘湯なんですが、じつは、金花湯を日帰りで征する強い味方があるんです。
    それは、『スーパーカブ』! オフロードタイヤを装着すればガタガタ道も走れるし、車体も軽量だから手で押しながら一緒に川を渡ることもできるんです!

    この日のためにバイク好きの友人から借りたカブ。

     

    準備万端、いざ、秘湯に出発!

    午前8時5分、村有林道千早川宮内線の峠付近にある林道ゲートに到着。

    「クマスプレーも、この日のために用意したひみつ道具も持ったし、準備万端。よし出発!」

    勢いよくアクセルを踏む。道は思ったほど悪くない。もう、誰にも私を止めることはできない! MAX時速30kmのスピードで奥へ奥へと突き進んでいく。しかし、心の中では「出会いがしらのクマとぶつかりませんように」と、ただ、ただ祈るだけ。

     

    クマ除けにエアロスミス!?

    カブのエンジン音が静まり返った山一帯に鳴り響く。

    「いいぞ!これだけの音ならクマも驚いて寄ってこないでしょ。そうだ。そろそろ例のひみつ道具も使ってみよう」

    タラララッタラーン! 取り出したのは、この日のためにアマゾンで購入したBluetooth対応のスピーカー。クマにわたしの存在を気づいてもらえるように、音量MAXでエアロスミスの『I Don’t Want To Miss A Thing 』をかけ、大声で熱唱。あの映画『アルマゲドン』の主人公になったがごとく、自分を奮い立たせてくれるんだな、これが。

     

    通称「バカ殿岩」からは最大の難所

    走り始めてから約1時間半で、通称『バカ殿岩』を通過。ここまでくればあと少し。ところが平坦で走りやすかった道が一転!

    路面はぬかるみ状態になり、目の前をガサ藪が阻み、運転に悪戦苦闘。オフロードタイヤがぬかるみにはまり、アクセルを踏むも前へ進めず、仕方なくバイクを降り手で押しながら歩く。怖いので再び、大声でエアロスミスを熱唱。

    岩のてっぺんに、ちょんまげのように木が垂直に生えている見た目が、志村けんの『バカ殿』に似てるってこと?

    この難所を越えればゴールは近いはず。

     

    道なき源流を沢渡り!?

    そして最後に待っていたのは『小金井沢』源流の渡渉。万が一、マフラーに水が入ってエンジンが停止したら、もうバイクを捨てて歩いて帰らなきゃいけない。浅瀬を狙って一気に渡っていく。川底は岩がゴロゴロ、平衡を保つのに必死。

     

    「秘湯マニアも(クマも?)うなる温泉」は最高に美しかった!

    午前10時5分、ついに温泉に到着。青空と白い雲の絵の具を混ぜ合わせたようなミルキーブルーの幻想的な色! 恐怖と戦いながらたどり着いた秘湯…。これほど愛おしいと思った温泉はかつてない。

     

    湯船から下を流れる小金井沢へ降りると、温泉でできた巨大な石灰華ドームが。触れてみると「確かに温かい! 生きてて良かったー!」

     

    「それでは、金花湯の一番風呂、いただこうかな♪」。ひとしきり周辺を観察したあと、一番風呂にワクワクしながら湯船へ近づこうとしたその時、「ガサ、ガサ…」後ろから何者かの気配。

    「ま、まさか、最後の最後にクマ登場!?」一瞬、背筋が凍る。恐る恐るうしろを振り返ってみると…。

    「ギャー!! クマではなく人!? それはそれで怖いじゃない!よくわからないけど、気が動転してクマスプレーを握りしめている私。ん? しかし、よく見ると、覗き見でもなく見覚えのある顔。

    「あれ!もしかして、ゆみさん?」名前を呼ばれ、我にかえると、なんと、そこにいたのは有名な秘湯マニアの大先輩だったというオチ。本州から遠く離れた北海道の山奥で、まさかの鉢合わせ。ソロ秘湯には、こんなミラクルもあるもんです。

     

    ~振り返って~

    10年越しの目標でもあった金花湯に到達できた時は嬉しさのあまり興奮状態と達成感で、ドラクエで言う「レベル」が一気に上がった感覚でした。わたしが訪れた2019年は、落石跡などは多少あるものの、何とかMTBやバイクで行けるようになりましたが、過去10年間は道の崩落や落石がひどく、近隣の温泉旅館の方に伺っても「金花湯へは、車もバイクも無理。歩いて行く以外ない!」とキッパリ言われてましたから……。

    決行する1年前、道が少し舗装され、バイクなら行けるようになったと聞いた時は「行くなら今しかない」と心に決めました。

    アタックする前は、先達者の話を聞いたり、温泉ブロガーの金花湯訪問ブログを読みあさりましたが、ほとんどの話は徒歩で往復22~23時間(テントで1泊)かかったとか。中には、虫に100か所以上刺され(ついでにマダニにもかまれ)、道に迷い、途中5回到着を断念しようかと思ったという話もあり、「マジか!これは、ほぼ遺書を残すレベル」と、正直ビビっていました。しかも、1泊するとなれば、テントや水、食料、着替えなどの装備も必要、クマとの遭遇率も高くなるわけで…。それがスーパーカブで行くと、往復にたったの4時間!  ぬかるみや川でも1回も転倒しなかったし、本当に優れモノだなぁと感じました。

    ちなみに、現地でバッタリあった秘湯マニアの知人は、その後、温泉の脇で単独テント泊。金花湯を1日独泉するという、何とも贅沢な時間を過ごし無事下山したようです(羨ましいやら、恐ろしいやら)。その彼、一箱持っていった熊除けの爆竹も、結局練習のため1回試しに鳴らしただけだったという余裕っぷり。

    「ひとりでカブに乗って到達したぜ♪」とドヤ顔していたわたしですが、上には上がいるなぁと感心しました。

    <コースタイム>※バイク
    林道ゲート(1時間40分)→バカ殿岩(20分)→小金井沢渡渉(5分)→金花湯

    <持ち物いろいろ>
    (服装)秋登山の格好 ※マダニがいるので長ズボン、長袖をお勧めします。
    (装備)クマスプレー、ワイヤレススピーカー(Bluetooth)、爆竹、ホイッスル、虫よけスプレー、登山靴:モンベル アルパインクルーザー 2500、サワタビ:モンベル、軍手、リュック:ノースフェイス テルス25 バックパック、レインウェア:ノースフェイス レインウェア レインテックス フライト、ツェルト
    (非常用)ガソリン2リットル
    (食料)おにぎり2コ(前泊の千走川温泉旅館さんで用意してもらいました。)、チョコレート、水1リットル

    <注意事項>

    ●一般に使用されていない未整備の林道です。道の崩落、落石などの危険性があります。
    ●訪問する場合は、クマ除けグッズを必ず携帯し、出来るだけ複数人で訪問してください。
    ●携帯電話は圏外で、四輪駆動の救護ものぞめないため、最悪の事態に備え、ツエルト、寝袋、非常食などを持っていってください。                                                                      ●6月中旬~9月初旬以外の時期は、雪の影響や日が落ちるのが早く、さらに到達困難となります。
    ●登山届はありません。近くの温泉宿に前泊し、事前に行くことをお知らせください。

    『金花湯』

    ●泉質:不明
    ●色・におい・味:ミルキーブルー、硫化水素臭、塩味、苦み
    ●入浴形態:野湯(湯船1つ)
    ●アクセス:「千走川温泉旅館」からバイク・車で20分で林道ゲート。林道ゲートから片道バイクで2時間、徒歩約11時間。

    関連記事:【ソロ秘湯】日本最南端の駅を経由して、『温泉Gメン』が取り締まる開聞温泉へ(鹿児島県)

         【ソロ秘湯】片道徒歩5時間……でも、絶対行った甲斐がある6月の「白馬鑓温泉」(長野県)

    ※地域の新型コロナウイルス状況を必ずご確認のうえ、感染拡大防止を意識した行動を心がけてください。

    私が書きました!
    渡辺裕美
    秘湯探検家。奈良県出身。会社員時代に体調を崩したことをきっかけに、温泉にハマる。これまで巡った温泉は、国内外含め2500ケ所以上。誰も行かないような秘湯や野湯にひとりで行くのが大好きで、オフはほぼ、秘湯探しか湯巡りに費やす。著書『わたしのしあわせ温泉時間 〜おとな女子がいく絶景秘境温泉の旅〜』がある。
    イラスト:藤本たみこ/温泉巡りに憧れるイラストレーター。東京都在住。少女漫画誌でデビュー後、漫画作画・イラスト・web素材製作などの仕事を幅広く手がける。

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