ロープワークの中でも、様々な場面で活躍するフリクションノット。これにはいろいろなやり方が存在します。それぞれメリット、デメリットがあり、場面や状況によって使い分ける必要があります。今回は、そんなフリクションノットの種類とメリット、デメリットについて紹介していきます。
フリクションンノットとは?
フリクションノットとは、ループ状のソウンスリングをメインロープに結んで、ロープを引っ張ったり、ロープにぶら下がったりする場合に使用する結び方です。一言でフリクションノットと言っても、その種類は数多く存在します。ちなみにメインロープと、フリクションコードの径の差が大きい方が制動力が増します。(メインロープに対して、細いフリクションコードの方が制動が効きやすいのですが、あまり細いと強度がでないので例えばメインロープが8~10mmの場合は5~6mmが推奨です。)
それぞれの結び方には、メリットやデメリットがありますので見ていきましょう。
マッシャー結び
フリクションノットの中でも、頻繁に使用される結び方のひとつです。特徴は、結び方が簡単で誰でも比較的容易に結ぶことが可能なことです。
マッシャー結びの作り方
マッシャー結びの手順1。
まずは、ループ状のフリクションコードを、ロープに巻き付けていきます。
マッシャー結びの手順2。
フリクションコードの、両末端の長さが同じくらいになったらこれで完成です。
マッシャー結びの手順3。
両方の末端に、カラビナを通して引っ張ればしっかりフリクションが効きます。
マッシャー結びのメリットとデメリット
マッシャー結びは、フリクションコードをただ巻き付けて、両末端を引っ張るだけです。とてもシンプルで、簡単にできるということがメリットです。しっかりテンションを掛けた後でも比較的緩みやすく、結びを移動させるのも容易です。
デメリットは、フリクションコードが固かったり、メインロープとの径の差が少なかったりした場合は滑りやすい事です。
クレイムハイスト
クレイムハイストは、マッシャー結びととても似た結び方で簡単に作れます。
クレイムハイストの作り方
クレイムハイストの手順1。
メインロープに、フリクションコードを巻き付けていきます。
クレイムハイストの手順2。
巻き始めの末端より、巻き終えた末端の方を多少長くします。
クレイムハイストの手順3。
巻き終えた下の末端を、上の末端のループに通します。
クレイムハイストの手順4。
ループを通した下の末端を、カラビナで締め上げればクレイムハイストの完成です。
クレイムハイストのメリットとデメリット
マッシャー結びと比べて、クレイムハイストの方が強い制動力が得られるのがメリットとして挙げられます。また、マッシャー結び同様に、シンプルな結びで簡単に作れます。
デメリットは、強いで制動力が得られる反面、テンションがガッチリ掛かってしまったら移動させることが難しく、結びを動かしながら登っていくような場面にはあまり向きません。
プルージック
マッシャー同様に、フリクションノットを代表する方法のひとつ。プルージックも強い制動力が期待できます。
プルージックの作り方
プルージックの手順1。
まずロープに巻き付けるように、フリクションコードのループを通して巻き始めます。
プルージックの手順2。
最初の手順を繰り返して、3回巻き付けます。この際に注意しなければならないのは、最初に巻き付けたフリクションコードより、内側に巻き付けていくということです。また、重ならないように綺麗に巻き付けなければ、制動力が得られません。
プルージックの手順3。
最後に、カラビナを通して末端を締め上げればプルージックの完成です。
プルージックのメリットとデメリット
プルージックのメリットは、比較的短いフリクションコードでも作れるということです。また、強い制動力が得られることもメリットのひとつです。
デメリットは、綺麗に巻いていかなければ作ることができないことです。マッシャーなどは片手でできるのに対して、プルージックは慣れないと片手で作るのは困難です。プルージックも強いテンションを掛けた場合、結びが動かしにくくなるので注意が必要です。
ブリッジプルージック
ブリッジプルージックは、先程紹介したプルージックの応用編です。
ブリッジプルージックの作り方
ブリッジプルージックの手順1。
プルージック同様にロープに巻き付けていくのですが、ここでポイントがひとつ。フリクションコードの、繋ぎ目のコブのところで巻き付けます。
ブリッジプルージックの手順2。
巻き付けていく際には、つなぎ目のコブが中心になるように巻いていきます。
ブリッジプルージックの手順3。
画像のように、綺麗に巻ければブリッジプルージックの完成です。
ブリッジプルージックの手順4。
末端にカラビナを通して締め上げれば、フリクションが効きます。
ブリッジプルージックのメリットとデメリット
ブリッジプルージックの最大の特徴は、テンションが掛かった結びをこのコブを使って簡単に緩めることができることです。緩める際にはコブを左右に2~3回左右に動かします。
デメリットとしては、結び目のコブがあることで締めきれず、滑りやすくなるということです。
マッシャートレイン
マッシャートレインはマイナーなフリクションノットですが、今回紹介するフリクションノットの中でも一番の制動力が確保できる、最強のフリクションノットです。
マッシャートレインを作る場合、巻き付ける動作の他に編み込んでいく動作があります。そのため120cm程度の長めのスリングが必要となります。また、巻き付けるのに細いスリングでないと強い制動力が確保できないため、ダイニーマ製のスリングを使用します。
マッシャートレインの作り方
マッシャートレインの手順1。
スリングを巻き始めるのにあたって、末端を長め(30cm前後)にとってから巻き始めます。
マッシャートレインの手順2。
ロープにしっかりフリクションが掛かるように、綺麗に巻いていきます。
マッシャートレインの手順3。
巻き始めの上の末端と下の末端が、同じ程度の長さになるまで巻き付けていきます。
マッシャートレインの手順4。
次に余った上下の末端を、さらにロープに編み込んでいくように交差させながら巻いていきます。
マッシャートレインの手順5。
末端までしっかり編み込み、両方の末端にカラビナを通して締め上げれば完成です。
マッシャートレインのメリットとデメリット
この結びの最大のメリットは制動力です。通常このようなフリクションノットを使う機会はほとんどありません。しかし、冬にロープが雪などで凍ってしまった場合、一般的なフリクションノットでは制動を効かせることができず、このようなフリクションノットを使う場合があります。雪山などでどうしてもフリクションが効かない場合は、是非お試しください。
デメリットは、作る手順が多く時間もかかることです。また、基本的にはこの結びを移動することは難しく使用用途は限られます。
まとめ
今回は一般的なフリクションノットから、あまり使われていない珍しいフリクションノットまで紹介してきました。
基本的には制動力が高い結びでは、移動させることが難しく、逆に動かしやすい結びだと、制動力が弱く滑ってしまいます。いろいろなフリクションノットを覚えて場面や状況によって使い分けることが大切だと思います。
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