地元産の木材を多用した広々とした美しい建造物のなかに「マルシェ・ヴィソン」などが開業。
地元の食材を集めたマルシェを中心に第1期エリアがオープン
「美しい村」という意味が込められた複合商業リゾート施設『VISON(ヴィソン)』が、2021年4月29日に第1期エリアを開業する。
ヴィソンは、三重県のほぼ中央に位置する多気町にある119ヘクタール(東京ドーム24個分)もの敷地に開発された大型商業施設。第1期では、産直市場(マルシェ)、スイーツエリア、猿田彦珈琲が開業。あわせて4月29日15時には、民間の施設では初となる高速道路から直結するインターチェンジ『多気ヴィソンスマートインターチェンジ』も開通。これにより伊勢自動車道の伊勢方面から大阪、愛知方面へ向かう途中に気軽にアクセスできる。
第2期(2021年6月5日)では、温浴施設と木育エリアが開業予定。第3期(2021年7月20日)では、宿泊施設、食のエリア、農園エリアほか68店舗におよぶ全施設が開業となる。また、第3期では和歌山で生まれた人気のアウトドアショップ『Orange』も開業する予定だ。
有名パティシエやシェフも開発に参加した地元食材を生かした美食の新拠点
4月29日の第1期オープンを前にマスコミ向けに公開された内覧会に参加した。緑美しい山並みに囲まれた広大なスペースに、木材をふんだんに使った真新しい施設が鎮座する。地域の林業を持続させるためにあえて木造建築を選択。伊勢神宮に伝わる式年遷宮に習い、20年に一度、木造建築の一部を建て替えることで、地元の雇用や木材の有効利用を後押ししながら100年以上持続できるサイクルを目指しているという。
オープニングセレモニーで登壇した皆様。左から、ヴィソン多気代表取締役・立花哲也氏、多気町長・久保行央氏、「スウィーツ・ヴィレッジ」など食のゾーンをプロデュースしたパティシエ・辻口博啓氏、「マルシェ・ヴィソン」を監修したシェフ・手島竜司氏、猿田彦珈琲代表取締役・大塚朝之氏、大日本印刷モビリティ事業部事業企画室室長・椎名隆之氏。
魚・肉・野菜。そこは新鮮な食材の宝庫だった
この日公開されたマルシェ・ヴィソンを歩くと、新鮮な魚介類や松阪牛などこの地方を代表するブランド肉などを扱う店、そして、軽トラの荷台で地場産の野菜を売る露店が並んでいた。
地元の生産者が気軽に出店できるようにと作られた「軽トラ・マルシェ」。三重県内の農水畜産業者が日替わりで登場する。 マルシェには、周辺の農家が収穫した農産物も並ぶ。
現役の海女さんが獲れたての魚介類を提供
なかでも目を引くのは、魚市場のような鮮魚店と海女小屋が並ぶ一角だ。この日は、鳥羽の海で活躍する現役の海女さんが登場。近隣でとれたばかりのカキやホタテの美味しさをアピールしていた。鮮魚店には、その日の朝に水揚げされた近海物の魚やガスエビ、マグロなどが豊富に並んでいた。まさにマルシェ=市場の雰囲気だ。
鳥羽の海で働く現役の海女さんがとった食材を提供する「海女小屋 なか川」。 中川でいただけるカキやホタテを試食。カキには手島シェフ考案のエシャロットワインビネガーが彩を添える。ひじきご飯も絶品だった。
パリ一つ星シェフが監修した食
精肉エリアには、多気町の竹内牧場による直営の牛精肉店『若竹』ほか、炭火で焼いた肉を提供する地元の人気店『薪炭炙庵 秀』、産直肉市場の肉を使った料理を提供する産直屋台『バラック』などがある。
新鮮な食材を買うことはもちろん、調理されたものを食べられる、このマルシェ。じつは、フランス・パリで一つ星を獲得したシェフの手島竜司さんが監修を担当した。「新鮮な食材の味を1から100に引き上げる」ことを目指したという手島シェフがフレンチのワザを活かした繊細な味付けまで楽しめる。
肉レストラン「竜吟虎嘯(りゅうぎんこうしょ)」のスペシャルランチ。「伊勢松老重」は5000円。松阪牛と伊勢海老を松阪牛のス―プと伊勢海老のビスクをかければ味の変化を楽しめる。
フードロスを削減しながら新たなる名物を作り出す
「三重県は海と山の幸、そして農産物の宝庫です。このマルシェは、東の豊洲、西の多気といわれるぐらい、関西圏や関東圏の人たちが直接買い付けに来るぐらいのマルシェ(市場)になって欲しいんです。このマルシェの監修にあたり、SDGsを念頭に、できる限りフードロスをなくすサイクルを提案しました。鮮魚売り場で少し疲れてきた食材は、マルシェの中にある練り物店で美味しく加工して提供したり、捨てる部位が多いといわれるマグロは、廃棄されるはずの部位で出汁をとり、"那智そば"という新しい料理として提供しています。野菜についても、おつとめ品にするのではなく、ひと手間加えて料理として提供できるようにしています。地元で活躍されている職人さんや生産者さんたちと直接会話を楽しみながら、最高の食材と職人たちのワザを楽しんでください」と手島シェフ。
「脇口の鮪」で提供する鮮度抜群のマグロの刺身は、一味唐辛子を入れた醤油で食べる。これまでは廃棄されていたマグロの骨などで出汁を取った「那智そば」も豊かなコクと風味を楽しめる。
内覧会用に提供された魚介類は、驚くほどの鮮度に加え、手島シェフ考案のソースと地元職人が仕上げた味が個性を放っていた。肉類についても、時間をかけて低温調理することで食材本来の味を強く引き出すなど、こだわりを感じられるものばかりだ。
気軽にBBQ も楽しめる
さらに「リュウドゥテラス」では、1名1500円で備え付けのBBQグリルで、マルシェで販売されている食材を調理して食べることもできる。
新鮮な食材を購入して自分たちで焼いて食べることもできるBBQエリア「リュウドゥテラス」。 牧場直営の松阪牛精肉店「若竹」も出店。
今後の動きにも注目!
「『地域と共に』というコンセプトのもと、1社の商売のためではなく、6つの町や複数の企業、生産者さんたちと連携した持続性のあるスーパーシティを目指し、日本が誇る食、伝統文化、テクノロジーをきわめていきたいと思います」(ヴィソン多気代表取締役の立花哲也さん)
ヴィソンでは、国のスーパーシティ構想のもと、施設内での自動運転モビリティ、キャッシュレス・地域通貨の取り組み、遠隔医療クリニックなどの実現も目指している。地元の資源である食と林業を軸に持続可能なコミュニティを構築する大規模な試みとしても注目されている。
第2期では、子供たちが楽しく地場産の木と触れ合える木育施設や、この地域の名産である薬草を使った入浴施設がオープン。第3期では、世界一の美食の町とされるスペインのサンセバスチャン市から有名バル3店が日本初上陸。山並みの地形を活かして建てられるホテルや旅籠などの宿泊施設も開業するなど話題にもこと欠かない。
トレッキングやマウンテンバイクと組み合わせて楽しむのもあり
近隣には、日帰りで登山を楽しめる1000m級の山々や、勢和の森マウンテンバイクコースなどもある。魅力的なアウトドアフィールドに隣接する好立地ゆえ、フィールドで遊んだ帰りに寄ってみたり、キャンプに行く前に特別な食材を買うことで、この土地の食文化を知り、より豊かなアウトドアライフにつなげることができるだろう。
なお、現在、三重県の緊急事態宣言中につき、2021年5月11日までは、周辺地域の方々を対象とした営業を実施している。
【施設情報】
VISON(ヴィソン)
所在地:三重県多気町ヴィソン672番1
https://vison.jp/
※営業時間など最新情報は上記WEBサイトをご覧ください。
こちらは、第3期にオープン予定のホテルエリア。 2021年7月に全エリアの開業を目指すヴィソンの完成予想図。
取材・構成/山本修二