日本三大雪渓の「針ノ木雪渓」を滑る春スキー(スノーボード)のルートを紹介します。針ノ木雪渓の滑走は、4月中旬の「黒部立山アルペンルート」の開通に伴い解禁となります。
日本三大雪渓とは、白馬岳の「白馬大雪渓」、剱岳の「剱沢雪渓」、そして今回ご紹介の針ノ木岳へ続く「針ノ木雪渓」の3つです。「針ノ木雪渓」を滑る春スキー(スノーボード)のルートは「広大な雪渓を滑ってみたい」という方におすすめです。どのようなルートなのか知っていただくことで、春スキーをやってみたい、と思っている方の参考になればと思います。
ルート紹介
今回は、黒部立山アルペンルートの長野県側の玄関口でもある扇沢より登り、針ノ木雪渓、マヤクボ沢を経て針ノ木岳へ登頂。そして同ルートを、スキーやスノーボードで滑走するというものです。
登山口の扇沢から針ノ木岳山頂までは約5~6時間の行程です。健脚向けのルートにはなりますが、体力に自信のある方は是非一度は行ってみたいルートです。
駐車場
登山口の扇沢までは、自家用車で行くことができます。車は扇沢駅の目の前に有料駐車場が2つ、その1段下には無料の駐車場があり、いずれかに駐車をします。この駐車場は針ノ木岳や隣の蓮華岳へ行く登山者だけでなく、「黒部立山アルペンルート」に向かう観光客やスキー客も多く、無料駐車場は朝早い段階で満車になるため無料駐車場に停める場合は、早い時間に到着することをオススメします。
登山口~大沢小屋
扇沢駅の南側にある登山口から歩き始めます。例年であれば、登山口からシールを付けて、スキーで沢沿いを歩けるのですが、今年(2021年)は雪が少なく、途中の大沢小屋付近まで板を担いで歩きました。
なお、登山口の扇沢駅から大沢小屋周辺までは1時間ほどです。
大沢小屋~マヤクボ沢出合い
大沢小屋を過ぎると、あとはひたすら針ノ木雪渓を登っていきます。針ノ木雪渓は、横幅がそれほど広くありません。両脇の沢や斜面から落石などが転がってくる可能性があるので、物音には敏感になって、周囲を見ながら登るようにしましょう。
大沢小屋からマヤクボ沢出合いまでは1時間半ほどです。途中「ノド」と呼ばれる幅の狭くなっている箇所があります。ここは斜度も急になり、雪の状態次第では、スキー用アイゼンが必要になったり、板を担いで登る可能性があります。
マヤクボ沢出合い~針ノ木岳山頂
マヤクボ沢出合いから、雪渓をそのまままっすぐ登ると針ノ木峠となり針ノ木小屋があります。一般登山道はまっすぐ行きますが、今回はマヤクボ沢出合いからマヤクボ沢(稜線に向かって右方向)へ行き、直接針ノ木岳山頂を目指します。
マヤクボ沢を歩けるのは、雪が多く残るこの時期だけです。この日もスキーヤー(ボーダー)や登山者の多くはマヤクボ沢から針ノ木岳山頂を目指しました。画像ではなかなか伝わりにくいのですが、マヤクボ沢は斜度が急で、スキーのシール歩行は困難なため、アイゼンに履き替えます。またスノーシューでここまで登ってきたスノーボーダーの多くもアイゼンに履き替えていました。
ここから山頂は近くに見えますが、実はここからが長く一番きついセクションとなります。
標高が高くなるにつれて息苦しくなるので、一歩一歩ゆっくりと確実に足を運んでいきます。
山頂へ左側から巻いて登るルートと、右側から巻くルートがあります。いずれにしても、一度どちらかの稜線に出てから山頂を目指します。著者は山頂に向かって右側のルートを選択しました。
右から巻いて稜線に出ると、雪はほとんどなく岩の出てる登山道となりました。ところどころ急斜面に雪が付いてるのでピッケルがあった方が安心です。
マヤクボ沢の出合いから針ノ木岳山頂は、2時間半~3時間くらいかかります。
山頂からの景色
山頂からは360度の大パノラマが広がります。この日は高曇りだったので「真っ青な空」とはならず少々残念でしたが、遠くまで眺望が良く北アルプスの山々が臨めました。
山頂で一番最初に目に入ってくるのが黒部ダムと立山連峰、そして名峰の剱岳です。
北の方向には爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、白馬三山へと続く後立山連峰がしっかりと見えました。
東方面には蓮華岳。蓮華岳は初夏には高山植物の女王の「コマクサ」が咲き乱れる光景が素晴らしく、オススメです。
南の方向には、裏銀座の山々と槍穂高連峰が見えます。ちなみにこちらには七倉ダムも写っています。
そして、正面奥に見える黒く尖った山が有名な槍ヶ岳。
マヤクボ沢~針ノ木雪渓の滑走
下山の滑走は、針ノ木岳山頂直下から滑り始めます。稜線直下は斜度が40~45度ほどあり、かなりの急斜面です。バックカントリーの鉄則としては「絶対に転んではいけない」ということです。この斜度で転んでしまった場合、止まることはできません。自然の山には岩が出ている箇所も多く、激突したらケガでは済まない場合も多々あるので、安全に確実に滑ることを心掛けましょう。
広大な斜面を、自由気ままにシュプールを描くのは爽快です。この日は、お昼前には雪が緩んで程よい硬さのバーンが楽しめました。
日差しがなく、気温の低い日はバーンが固く危険です。滑走する際は、バーンの状況をしっかり判断することが大切です。
山頂直下は急斜面なので無理は禁物です。また、下から登ってくる方も沢山いらっしゃるので、雪崩の被害を出さないよう、登ってくる登山者の上の斜面を滑らないように気を付けましょう。
春スキーでは、斜面のところどころで、雪質が変わる可能性があります。スピードを出したまま、雪質が違うところに突っ込むと大転倒のリスクがあります。スピードを抑えて、どのような雪質が出てきても、対応できる心構えを持ちながら滑ることを心掛けてください。
まとめ
大自然を滑走するのはとても気持ちのいいものです。しかし、それと同時に雪質の変化、岩や木などの障害物への激突、雪崩の誘発など様々なリスクがあることも決して忘れないように行動をするようにしましょう。
※地域の新型コロナウイルス情報を確認の上、三密回避、マスク着用、うがい手洗いなど感染対策をしっかりと行なってください。