コロナ禍でも、キャンプは依然として人気だ。ゴールデンウィークもほとんどのキャンプ場が予約で埋まり、新商品を発売してもすぐに完売してしまうものもあるとか。
そんな絶好調のキャンプ業界だが、その一方で壊れたものや不要になったキャンプ用品をメーカーはどうしているだろうか。今回は、そんな要らないものを別の形にして生まれ変わらせ、再利用できるヒントを与えてくれるプロジェクトを紹介する
キャンプ用品を再利用したまったく新しい取り組み
今回紹介する「MFYR」は、コールマンが企画する新プロジェクト。同社で出た廃棄物をデザイナーのセンスでバッグや小物に作り替えるもので、素材の多くは工場でやむを得ず出てしまった生地や部品がほとんど。
使用するものは中古品ではないので、汚れやキズはほぼなし。撥水性や耐水圧も製品同様なので、優れた機能性をそのまま街中でも使えるのが魅力だ。
また、カッティングする場所はすべて異なるため、ロゴプリントがあったりなかったりと、すべてデザインが異なるのもポイントである。
プロジェクトの第1号はバッグ。コールマンのロングセラーテントであるタフワイドドームⅤ/300やトンネル2ルームハウスなどの生地を再利用し、トートバッグとサコッシュを発売する。
先日行なわれた展示会では、参考出品としてウエアや小物も展示。発売はコールマン 昭島店とオンラインショップを予定。
広報担当者は「1点モノでデザインがそれぞれ異なるため、できれば昭島店やイベントでじかに商品を見ていただき、気に入ったものを購入してもらいたい」と話していた。
中里社長にMFYRの意気込みを伺った
会場にはコールマン ジャパンの中里豊社長の姿が見えたので、今回のプロジェクトについて伺った。
キャンパーでは考えられない視点に脱帽
— MFYRはコールマンでは珍しいサステナブルを全面に打ち出したプロジェクトですね。何がきっかけでスタートしたのでしょうか。
中里社長(以下、社長):社内で「廃棄されることが決まったけれど、まだ使える生地やパーツをなんとか新しい形に生まれ変わらせたい」というアイデアがあり、コールマンのクリエイティブデザイナーである松岡善之さんに相談したのが始まりです。
そこからバッグのアイデアが出て、コールマンバッグのデザインも担当している森由美さんが加わり、今回の製品化につながりました。
最初はバッグ類が有力と考えていたのですが、実はウエアもできると聞いて興味を持ちました。デザインから使う生地の場所まですべて森さんにお任せしたら、想像以上に素晴らしいものが完成したのです。1年の月日をかけて、お披露目することができました。
—ウエアを拝見しました。MA-1のようなアウターやベストなど目から鱗のアイテムばかりで面白かったです。社長のお気に入りのものを教えていただけますか?
社長:ウエアでは、このベストが一番気に入りました。これはコルネットストレッチⅡ/L-5という寝袋の上半分を使ったものです。下限温度はマイナス5度Cなので、これを着たまま寝てもよさそうですよね。
社長:このコートは、ソロキャンプで大人気のツーリングドーム/STの生地を使用しています。耐水圧1,500mmなので雨が中へ染み込む心配はありません。何よりベンチレーションを背中に配したアイデアに脱帽しました。こもりがちなムレを効率的に外へ排出してくれますね。
社長:バッグならこれがいいですね。縦長のデザインで寝袋やマットを収納しやすく、キャンプにもってこいです。普段使いのバッグとしてもいいですし、自分ならこれで海外出張もできちゃうかもしれません(笑)。
プロジェクトの概念を知って、行動してもらいたい
—続々とお気に入りアイテムが出てきますね! 今回発売する商品はどんな人に買ってもらいたいですか?
社長:このプロジェクトに少しでも共感されるすべての方です。同社はファミリーキャンパーをターゲットに製品作りをしているので、ある商品を作る際には大体のターゲットがわかります。
ですが、今回のプロジェクトはキャンプ用品の一部を使用していますが、誰にでも使えるようなデザインがほとんど。正直どんな人に興味を持ってもらえるのか楽しみです。性別や年齢より、「要らないものが別の形で息を吹き返す」というコンセプトを楽しんでもらいたいです。
今のキャンパーさんは、テントを複数点持っていると聞きます。見た目やブランド、家族構成で使い分けていると思うのですが、ライフスタイルの変化などで不要になることがあるかもしれません。
そんなときに、同プロジェクトを覚えていて、バッグや雑貨など何かしらの形に再利用してもらいたい。その行動こそが、プロジェクトの成功だと思っています。
—行動を起こすことが大事ですね。最後に、今後の展開や意気込みを教えてください。
社長:継続していくことが目標です。作る数は限られますが、引き続き松岡さん、森さんと協力してさらにラインアップを増やしていきたいです。
とはいっても、我々はあくまでキャンプ用品メーカーなので、これを全面に打ち出すことはしません。ロングライフ製品を目指して、いい商品を作ることを追求します。
コールマン 公式ページ
https://coleman.co.jp
文・撮影/小川迪裕