地震には強いの? 雨漏りは? 自然派生活に憧れる人なら一度は考えたことがあるだろうログハウスに関する素朴な疑問を「生き字引」に聞いてみました。
Q.ログハウスの種類はいくつあって、その特徴は?
A.
基本的にはハンドヒューンログハウスとマシンカットログハウスの2種類です。ログハウスというとハンドヒューン(ハンドカット)のゴツい丸太のログハウスを思い浮かべる人が多いようですが、現在の主流は機械でカットしたマシンカットのログハウスです。ハンドヒューンのメリットはいかにもな見た目と壁面の厚さによるダイナミックさ、マシンカットのメリットは性能品質の安定と暮らしやすさです。
Q.ログハウスとそうでない家の違いは何?
A.
ログハウスは天然のリラクセーション成分と呼ばれる「フィトンチッド」にあふれていて、その数値はコンクリートやクロス張りの住宅の約40倍といわれています。湿度が高いときはその湿気を吸収し、乾燥しているときには中の水分を放出します。天然のエアコンというわけです。さらに断熱性はコンクリートの約12倍もあります。夏は涼しく冬は暖かいのが特徴です。木材を組んで作られている家なので移築も簡単にできます。ログハウスに固有の特徴としてはセトリングと呼ばれる初期の現象があります。丸太が収縮することによって起きる壁面の高さ変化(沈み込み)で、その対策として窓やドアなどの可動部分、階段のスペーサーなどに独特の工夫があります。大屋根で外壁面を極力濡らさないように、屋根のひさしが大きく張り出しているのも特徴です。
Q.何年もつの?
A.
日本のログハウスである正倉院は、千二百年に建てられたものだといわれています。もちろん、屋根の掛け替えや補修など、こまめなメンテナンスをきちんとしていますが。シロアリ対策などのメンテナンスをすれば、一般のログハウスでも100年は余裕で持ちます。
Q.予算はどのくらい?
A.
サイズや材質、建てる地域によってさまざまですが、新築のマシンカットログハウスで約1500万円(床面積:約100㎡)から約2000万円(床面積:約150㎡)といった感じでしょうか。昔は坪100万円といわれていましたが、現在は坪50〜70万円。それに水道引込み工事や外構などで300〜400万円プラスと考えればいいと思います。中古のログハウスは立地条件、築年数、程度によって本当にまちまちです。
Q.メンテナンスはどのくらいの頻度で、何をすればいいの?
A.
まず、2〜3年後の一度めの再塗装ですね。そうすれば10年後まで塗装をし直さなくても大丈夫です。雨の直接かかるデッキ部分は毎年塗装をし直したほうがいいですね。収縮や膨張によってクラック(ヒビ割れ)が起きることもありますので、外壁はそのクラック内に丁寧に塗料を塗ってあげるといいでしょう。手をかけることで思い入れや愛着も強くなります。床なども飴色になり、キズですらも思い出になっていきます。
Q.雨漏りは大丈夫?
A.
木の乾燥度によっても異なりますが、ハンドヒューンログだとログとログの間にすき間があいて、そこから雨が入り込むことはあります。マシンカットログの場合は、横殴りの激しい雨の時など雨水が入りこむことはありますが、通常ではまずありません。
Q.木の種類は何があるの?何がベスト? 最上級は何?
A.
国産材ではスギ、ヒノキ、トドマツなどがあります。北米、カナダ材ではウエスタンレッドシーダー、ダグラスファー、スプルース、パインなど、北欧材ではパインやスプルースなどですね。耐久性などの性能の差は樹種によるよりも、施工・メンテナンスによるところが大きいです。地産地消という考え方もありますが、適材適所ということで決めてもいいでしょう。ちなみに、高価な材は、ヒノキやレッドシダーがあります。
Q.取り扱いで気をつけなければいけないことは?
A.
まずシロアリ対策です。家の周囲にエサを入れたポットを数か所に置き、シロアリが現われたらポットに駆除剤を入れると、駆除剤を巣に持ち帰り、巣から根絶やしにでき効果的です。ログハウスは薪ストーブ利用者が多いのですが、薪を壁にぴったり付けて積み上げておくと、シロアリの発見が遅れます。シロアリは湿気の多い木材が大好きなので、薪は別棟にして乾燥させるのがポイントです。日常では換気ですね。湿気がこもるとカビやシミなどの原因になります。水回り場所の換気をこまめにするのが肝心です。
Q.台風、災害などには強い?
A.
壁面が厚く低重心なので、屋根を飛ばされない限りは台風にも強いですね。ただし、多くのログハウスが鎧戸や雨戸を付けておらず、窓を大きめに作っているので、その対策は必要です。地震のときはログ同士がずれることで振動を吸収してくれる、いわゆる「制震装置」として働くことも含め、耐震性が非常に高いのが特徴です。
Q.ログハウス建設に適した場所は?
A.
施工時は組み上げる丸太を置いておく場所を確保しておかなければいけないので、作る家とほぼ同面積かそれ以上の空地が必要になります。その空地は庭や菜園、駐車場になるのですが、そういった意味で都市部では難しいと思います。見晴らしのいい場所は逆にいうと風が直接当たる場所であり、湖のほとりは湿気が多い。街から離れた山の中は買い物や病院などのアクセスがよくない。適する適さないよりも「何を大切にして暮らすのか」ということだと思います。
Q.中古のログハウス購入は、どこを注意すべき?
A.
どんな中古物件でもそうですが、前のオーナーがなぜ手放したのかが重要です。「せっかく作って気に入っていたけれど、仕事の都合でどうしても引っ越さなくていけなくなった」というのがベストですが、「作ったはいいけれど思っていた以上に不便だった」というのはあまりメンテナンスされていない可能性もあります。また、都市部でも同様ですが「周囲に暮らす人が変な人が多い」とか「ホーンテッドハウスだった」とかは手に負えません。特にログハウスは田舎に多く、ログハウスであることよりも、人間関係を含めて「田舎暮らしができるか」が問題になってくると思います。
■教えてくれた人
BESS技術本部
池田均さん
ログハウス最大手BESSにおいてログハウスに最も詳しい男。現在岩手県の災害支援にも関わっており、月1度東京に帰ってくる生活を送っている。