標高が下がってくるとバナナの木や瑞々しい緑の水田が見えてきました。山の上ではまだ小さかったトウモロコシがここでは花が咲いています。窓の外を眺めていると時間はあっという間に過ぎていきます。
乗客が少ないのをいいことにやりたい放題…最後には寝て静かになりました。
自分の荷物を背負って棒きれのダブルストックに長靴で、5歳児も無事歩き通しました。ホッとしたような、まだまだ旅を続けたいような複雑な気持ちを抱きつつバスに揺られていました。
数日という短い日程でしたが、子どもと歩くにはちょうど良いコースでした。子どものペースでゆっくり歩きながらも、谷を越えて、尾根に登り、さらにその向こうの谷へ降りる…畑道、森、集落、崖のトラバース…いろんな道を歩きました!子どもにとって数日続けて歩くのは初めてのことでしたが、ゆっくりでもちゃんと自分の足で歩いて遠くの目的地に行けるんだと実感できたと思います。
震災後のネパールがどうなってしまったのか、人づてに聞いても実感がわかず心配していましたが、想像していた以上にいつも通りの生活があり、人々の表情は明るく子どもたちも元気でした。街で見た伝統あるお祭りでは、人々の活気がみなぎっていて、こちらが圧倒されてしまうほど。
農村では崩れたままの家も目立ちましたが、もともと手仕事で作られたものなのですぐには出来上がらないのですね。木材を作るのも、石を削るのも手作業なのですから。目に見えて復興していかなくても山奥の時間の流れの中で生活を営みながら、ゆっくりともとの暮らしに戻っていくのだと思います。心配して行ったネパールですが、優しい笑顔や、力強い生活ぶりに励まされ、自分の生活を見つめなおすキッカケをもらった旅となりました。
5日目行程:シャブルベシ ー(バス)ー カトマンズ
文・写真/根本佐和子
カモシカスポーツ横浜店スタッフ。仲間と作った子供の外遊びグループで子連れハイキングや焚火キャンプを楽しむ日々。
ネパールというとヒマラヤの高峰がフォーカスされることが多く、メジャーなトレッキングコース以外は山麓の里山に足を運ぶ人は少数だと思います。山で暮らす人々の生活の術は便利さにあふれた生活をする私たちにはとても刺激的です。観光化されずに昔ながらの生活をしている人々と触れ合えるタマン・ヘリテイジ・トレイル。このトレイルはヒマラヤ山麓の東から西まで続く「グレイトヒマラヤトレイル」の一部と重なっています。
グレイトヒマラヤトレイルはUpper route(山岳ルート)とLower route(丘陵ルート)の2本あり、Upper routeは総延長約1,700㎞(標高3,000~6,000+m)、Lower routeは総延長約1,500km(標高1,000~4,000+m)で構成されています。ジャングルのような低標高から高山帯、氷河地帯まで様々なエリア通り、様々な民族の集落を通過する生活の道。ヒマラヤには白い山々に劣らない魅力あふれる里山のトレイルがたくさんあります。
「ヒマラヤは世界最大の里山だ」という考えのもとにグレイトヒマラヤトレイルを踏査しながらヒマラヤの生活道の魅力を伝えるプロジェクトがあります。ヒマラヤの里山の文化と生活道に興味がある方はチェックしてみてください。
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