永らく自然と共生してきたアウトドアの達人たちは、どんなふうにSDGsを実践しているのか。言葉にとらわれない術は、その暮らし方にヒントがあるようです。
ひとつの物を
永く使うことから始めてみる
「インスタ映えという言葉をよく耳にします。キャンプ道具にしても、見た目重視で流行っている物やオシャレな物を次々と買い替える人がいますが、それって本来のオシャレじゃない。流行に流されず、自分の気に入ったものを破れても使う。ひとつのものを愛して使うことの方が、僕にはよっぽど美的に見える。
僕の家は継ぎはぎだらけ。解体物件の床材や建築廃材、流木と、本来捨てられる運命にある木をリユースして作っているから。でも、格好悪いと思ったことはない。この家は木の集合体であるとともに、記憶の集合体なんです」
ネイチャークラフト作家
長野修平さん
枝、石、貝など、自然物を使った造形が得意。山菜料理店で育ったこともあり、料理の腕前もプロ級。豪快な焚き火料理が代名詞。
ユーモアイラストを使うことで、
地球の言葉を誰にでも届く形で伝える
「今日もプラスチックレイン」
廃棄物の発生防止・削減・再利用により、廃棄物を大幅に減らそう!
「リサイクルしたりゴミを減らしたり、モラルとして日常的にやってはいるけど、SDGsに対して僕ができることといえば、地球の言葉を誰にでも届く形で伝えることだと思います。これまで広告制作に携わってきたので、モノの魅力をコンパクトに伝えることは得意なんです。なのでSDGsをひとコマ漫画でユーモラスに表現して多くの人に楽しく伝えています。アウトドアズマンであれば自然を大切にしてきたと思いますが、そこに自分の得意分野を+αすることで自分だけのSDGs貢献ができるのじゃないかと思っています」
サラリーマン転覆隊
隊長 本田 亮さん
転覆隊隊長であり、環境漫画家であり、葉っぱアーティスト。ジャンルを超えたクリエイションで自然の素晴らしさを伝えている。
生き物がいっぱい集まる農地を目指す環境農家は、里山再生の第一歩
「6年前から農業者になりました。農地は、最初は45年間放置された竹藪。2年かけて苦労して開墾しやっと昔の面影をとりもどしました。作物も作っていますが、ほんとうの目的は、昔ながらの農地の風景を取り戻すことです。小学生のころ遊んでいた農地は、生き物に満たされていて土の匂いがしたものです。自然に親しむための農地を再生する人のことを"環境農家"と名付けてがんばりたいと思います。私の好きな昆虫の種類も増えてきたので、今年は、夏の里山昆虫教室にやってくる子供たちの興奮した顔を見るのが楽しみです」
写真家 今森光彦さん
写真家、切り絵作家。人と自然が共存する里山をテーマに、さまざまな活動を展開。写真集、絵本、図鑑など、著書は130冊以上。
パーマカルチャーに憧れ
無駄のない暮らしを送る日々
「若いころ、永久持続可能な暮らし(パーマカルチャー)に憧れた。そこに必要だったのがシベリアの暖炉『ペチカ』。そこで10年前、セルフビルドで家とペチカを作って暮らしはじめました。ペチカは西洋の薪ストーブや暖炉と比べ、薪の量が4分の1ですむ超エコ暖炉。煮物、燻製、ピザなど料理ができて、暖がとれる。家庭菜園野菜をペチカで乾燥させて保存し、ペチカから出た灰は畑にまいて肥やしにしたり、台所用クレンザーにしたり。我が家の暮らしは1年中、ペチカを中心に無駄なく回っています。その幸福感はハンパない」
旅人 ババリーナ裕子さん
世界中を旅し本誌で連載もしていた。10年前、房総半島の海近に家をセルフビルド。家庭菜園、野草茶作り、塩作りなど、自然暮らしを満喫中だ。
※構成/大石裕美
(BE-PAL 2021年6月号より)