登山道って誰が整備しているの?遊びっぱなしにしない、トレイルの守りびと
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    2021.06.11

    登山道って誰が整備しているの?遊びっぱなしにしない、トレイルの守りびと

    草が伸びて藪になっていたり、足元がぬかるんでいたり、倒木で通過するのも困難だったりしていたところが、次に訪れた時にはきれいに整備され歩きやすくなっていたことに気がついたことがありませんか?誰が登山道を整備しているのかということに少しでも興味を持ってもらえたらいいなと思い、僕らが行なっているトレイルワークス(登山道の整備活動)についてご紹介したいと思います。

    何か恩返しがしたいと考える人が集まった

    子どもがおもちゃで遊びっぱなしで、どんどん散らかっていくお部屋、ついついイライラしてしまいますね。

    僕も自然というフィールドを使ってハイキングをしたり、山ごはんを食べたり、ときにはトレイルランニングで走ってみたりしています。それなのに、楽しむだけ楽しんてフィールドをきれいにすることはしていないなと思ったのです。

    みなさんが使っている登山道の整備は誰がしているか考えたことがありますか?山域によって異なりますが、山小屋の管理人さんや山岳会など、さまざまな個人・団体が自発的に担っているというのが現状です。

    僕は、あるトレイルランニング大会を通じて、登山道を整備するという大切なことを教わりました。普段から登山やキャンプなども楽しむアクティブな人達の中には、自分達が歩いたり走り回っている登山道に何か恩返しがしたいと考える人々が少なからずいました。そういった方々に少しずつ声を掛けて、登山道を守る活動を始めることにしたのです。

    こうした登山道の維持をするトレイルワークスの活動に参加した方は、ゴミを拾うことはもちろん、大きな枝葉を脇に避け、不安定な石を積み直すなどを行なうようになり、登山道に対する意識が変化していきます。それだけでなく、トレイルワークスで時間を共有した仲間と山を歩く時間は益々かけがいのないものになっていくのです。

     今回紹介する、「トレイルの守りびと」とは、さまざまなアクティビティを山で楽しみ、山を愛する仲間たちのことなのです。

     勝手に木を切ったりするのは実はNG

    今回のターゲットは、2018年の台風で登山道をふさいでいた大きな倒木。倒木を撤去するといっても、登山道には所有者や管理者が必ずいるので、整備の前には、関係各所に申請や許可をもらわなければいけないのです。

    木の1本1本にも所有者がいるわけですから、勝手に撤去するのは実はNGなのです。これがなかなか複雑な事情があって、行政や企業だったり個人だったりする所有者や管理者を見つけるところから手間のかかる作業で、今回撤去した倒木も管理者が判明し、許可申請してからOKをいただくまで3が月もかかりました。

    車が入れない場所は、整備に必要な道具を背負子で担いでいく。

    そして向かったのは、軽自動車ぐらいの大きさはあろうかという大きな倒木が登山道を塞いでいる地点。作業現場までは車で入ることができないため、荷運びはすべて人力で行ないます。除去に必要な道具だけでも、ゆうに40kgはあり、すべての道具を背負子に縛りつけて登山道を歩いて行きます。

    この日、集まったのは6名、何か月も前からこの地点の土砂の撤去などを一緒に行ってきたメンバーです。大まかな作業方針を伝えて、具体的なことは作業前にああでもないこうでもないって話しながら作業をします。いろいろな意見を聞きながら作業方針を決定していくのは、なかなか楽しいものです。

    そして新しい登山道へと変わった

    みんなで協力して、ウインチで倒木を移動させる。

    倒木を除去して、登山道の通行止めは解消された。

    準備が整うと、ウィンチに極太のワイヤーを繋いで巨大な倒木を移動させていきます。あたりに、倒木のミシミシという音が響き渡ります。ついに元々あった登山道が顔を出すと、思わずみんなから歓声があがり、笑顔がこぼれます。思ったよりも時間がかかりましたが、朝からの雨も強くなることもなく作業は終了。

    倒木によりすっかり土砂に覆われ崩落してしまった場所から、土砂を掘り起こして登山道として登山者が歩きやすい幅になるよう道を再生していきます。こうして補修できた距離はわずかですが、これまで通行止めにより大きく迂回していた場所が解消されることは登山者からもとても好評なのです。

    道標が傷むのを防ぐために防水処理をする。

    また、ときには積もった落ち葉や土砂を丁寧に除去し、ぬかるみになりやすい場所に石を敷き、雨水が流れやすくなるように登山道を横切る溝を切り、水の逃げ道を作ります。迷わず安心して歩くことができるのも、登山道があるからこそ。行き先の書かれた道標も大切な存在です。柱が傷むのを防ぐために杭に防水処理を施すことも。こうやって作業に携わった人たちは整備した登山道を通る度に、作業をした時の思いが蘇るんじゃないかな。

    ひとりひとりにできることから

    大がかりなものでなければ、日頃のフィールドの維持管理は誰にでもできると思います。落ちた枝や石を登山道の脇にそっと移動するだけでも、後をゆくハイカーは安心して歩くことができるでしょう。ひとりが落ちているゴミを一つでも拾うように心掛け、後に続く人も同じようにゴミを拾えば、美しい登山道はいつまでも続くのです。

    登山道は、人が歩くことが無くなり、手を入れることがないと維持ができない場所です。だからこそ多くの人に登山道の整備体験をしてもらい、その面白さを見つけて欲しいと思っています。将来的には倒木のある箇所や、大雨・台風通過後の被害状況など、山域ごとの整備が必要な登山道に不具合がある箇所の情報が集まるようなコミュニティーを作り、登山道の維持整備に必要な計画を立てたり、仲間を募ったりする仕組みができるのが理想です。

    これからも登山道の維持管理に多くの人が携われるような活動の場をつくっていくことが大切だと思っています。僕らは、どこかに自分たちを必要としている人がいる限り続く、トレイルワークスの旅にまた出掛けていきます。

     

    私が書きました!
    JSPO公認山岳コーチ
    岸 正夫
    アウトドアの楽しみを多くの人と共有したいと“山ごはんクラブ”を主宰。キャンプだけでなく低山ハイキングから高山縦走まであらゆる山行を楽しむ。トレイルランニングやウルトラランニング歴も長い。遊ばせてもらっているフィールドに恩返しする気持ちで、ハイキングコースの整備に取り組んでいる。

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