屋久島「宮之浦岳」を海から登る!「ZEROtoSUMMIT」鹿児島篇
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    2021.08.02

    屋久島「宮之浦岳」を海から登る!「ZEROtoSUMMIT」鹿児島篇

    鹿児島最高峰「宮之浦岳」に、太平洋から走って登る!

    鹿児島県最高峰は、屋久島の宮之浦岳(1936m)。九州の最高峰でもある。その頂に落ちる雨粒は、東側は安房川(あんぼうがわ)、西側なら栗生川(くりおがわ)、真北の一部はかろうじて宮之浦川となり、太平洋にそそがれる。

    どの川をたどれば、ぼくはこの島と山のことがわかるのだろう。どうせなら屋久島を堪能したい。コロナ禍になる前の2019年5月、栗生港から花山歩道を登り、周回してから永田歩道を下ってみることにした。あとは現地でのフィーリング次第だ。

    海から宮之浦岳へ、そしてさらに海へ(今回用意したプラン)

    雨の屋久島に到着!

    鹿児島空港まで飛び、翌朝フェリーで屋久島へ。天気予報では5日間の滞在期間中、すべてドシャ降りの雨。もう開き直るしかない。

    初めて対面する桜島

    昼すぎに安房の民宿「もりちゃんハウス」につき、温泉、そして酒になだれ込む。雨が止む気配はない。もうなるようになれ、だ。

    尾之間(あのあいだ)温泉でひとっ風呂

    滞在中は屋久島焼酎「三岳」を飲み続けた

    0日目(偵察)

    ドシャ降りの中、丸一日をかけてコースを偵察する。

    観光案内所(屋久島ツアーオペレーションズ)、登山用品店、現地ガイドをあたり、情報収集。こういうのは現地でやるに限る。そしてすべての可能性を探る

    朝からひどいドシャ降り

    大きな成果を得た。計画変更、やっぱり大本命だった安房川を辿ることにしよう。リスクはあるが、チャレンジする価値はある。

    すさまじい豪流。うっかり足を滑らせて転落したら、確実に藻屑と消えるだろう

    シューズは翌日の本番に温存し、サンダルで偵察

    1日目(安房港から縄文杉、新高塚小屋まで)

    いよいよ本番。夜明けの安房港をスタート。雨が降りやむ気配はない。

    安房川の河口でゼロタッチ

    昨日ほどの雨の勢いはなく、恐ろしく吠えまくっていた激流も、だいぶおとなしくなっている。

    すっかりおとなしくなった安房川の支流。昨日と同じ川とは思えない。

    楠川別れで白谷雲水峡方面からの登山者たちが合流し、一気に混雑する。有名な屋久杉の前では撮影待ちの列までできていて、たまらずその脇を走り抜ける。

    縄文杉

    団体の列を追い越し続けているうちに、補給を怠っていたようだ。高塚小屋をすぎると、脚が動かなくなった。

    川と化した登山道。水流ランナー的にはありがたい?!

    急速に走意が失せていく。あわよくばワンデイでと思っていたが、早々に新高塚小屋に逃げ込む。寒気が止まらない。続々と入ってくる登山者たち。誰もがこのひどい雨にウンザリしている。

    持参した簡易テントは耐水性に乏しいため小屋に。雨は防げるが、テントに比べてちっとも温まらないし乾かない。

    電波の届かないスマホほど役にも立たないものはない。やることがないので、焼酎を飲み、衣類を乾かしながら、誰かが鳴らすラジオをぼんやり聴く。静かに夜は更けていった。

    2日目(新高塚小屋から宮之浦岳、ヤクスギランド、安房港まで)

    夜が明け、小屋を出る。雨中アタック開始だ。

    小降りだが、風が強く、気温は10度以下

    単独者を抜き、つづいて2人組パーティーを追い抜く瞬間、彼らの顔色がさっと変わる。ぼくは瞬時に事情を飲み込んだ。この日はちょうど元号が令和になった日だった。彼らは令和初の宮之浦岳登頂を狙っていたのだ。

    標高1670mで森林限界を抜ける

    焼野三叉路をすぎると頂上はすぐそこだ

    6:46 宮之浦岳登頂。展望はまったく無く、長居は無用。下山開始後、ずいぶん経ってからやっと登山者とすれ違う。令和初の宮之浦岳登頂者であったことは、間違いないだろう。

    令和初のサミットシャワー。容器を持ってこなかったため、水はトレイルバターに詰めてきた。

    点在する携帯トイレ用ブースでバッテリー交換

    深い深い森の中のランニング。人間どころか、昨日はあれだけみてきた鹿や猿もまったくいない。聴こえてくるのは雨粒がしたたる音、川のせせらぎ、鳥のさえずりだけ。

    踏み跡だけが頼りの深い森

    花之江河登山道を下る

    石塚小屋には誰もいなかった

    「みはらし台」で一瞬だけ主稜線がみえた。これが5日間の滞在期間中、最高の展望。

    やっと気づいた。屋久島の真価は、この森の深さ。その森の中に、溶けていきたい。

    新石塚沢の源頭部だろうか。稜線のすぐ下なのに、信じられない水量だ。

    余興でビャクシン沢をすこし遡行してみる

    ひとりで大和杉と向かい合っていたら、なぜか怖くなってきた。忘れかけていた自然への畏怖。

    ヤクスギランドで、森の静寂さは消えた。ここはもう下界、あとは海をめざして走るだけ。

    「太古の森をぼくたちは守ります。」「屋久島の人口は少ないけれど、みんなともだちだ!!」(道路見学会開催記念碑より)

    安房港の海にタッチし、鹿児島編完成。

    ZERO to SUMMIT and back to ZERO

    今回ぼくを支えてくれた道具たち(ザック=フェリーノ ラディカル30/シューズ=アルトラ トーリン・ニット3.5/ソックス=インナー・ファクト 五本指ソックス)

    そして、ああ、なんということだろう。毎回GPS腕時計でログを記録しているが、今回の貴重なデータに限ってなぜか消えていた。地図は下山途中に崖下に落としてしまったし、なんともついていない。令和初の宮之浦岳登頂は、ぼくの記憶と数枚の写真だけに儚く残ることになった。

    (掲載内容はすべて2019年時点の情報になります)

    私が書きました!
    プロ水流ランナー
    二神浩晃
    1972年、岐阜県生まれ、世田谷区在住。「世界の果てまで川ぞいを走る」を合言葉に、水流ランを提唱。四十七都道府県の最高峰まで一筋の川をたどって海から走る “ZEROtoSUMMIT 47” を実施中。2018年にプロ宣言し、世界進出を狙いつつ、ランニングによる表現のあらゆる可能性を試みている。

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