はじめまして。栃木県日光市で アウトドアショップを経営するかたわら、フライフィッシングやトレッキング、スノーシューなどのアウトドアアクティビティガイドをしている星野晃宏です。日光は世界遺産・日光の社寺や鬼怒川温泉などの観光地として有名ですが、その一方で日本最古の国立公園である日光国立公園をはじめとした素晴らしいアウトドアフィールドも広がっています。
釣りの魅力
「永遠に幸せになりたかったら釣りを覚えなさい」
これは中国の古いことわざにある一節。私自身も釣りを始めて約25年程ですが、最近この言葉の意味を少し理解できるようになってきた気がします。
釣りという遊びは、知っているだけで旅先での過ごし方に選択肢が増えたり、普段見慣れている景色をワクワクさせてくれる場所に変えてくれる力があります。そこには年齢も性別も関係ありません。
特に渓流でイワナやヤマメ、ニジマスなどを狙う釣りは、キャンプの合間やトレッキングとセットで楽しむことができ、アウトドアで過ごす時間をさらに充実させてくれます。またイワナやヤマメなどは、食べても大変美味しいことも魅力、自ら釣った魚を美味しくいただく経験は心身ともに充実感を与えてくれます。
渓流での釣りには「エサ釣り」、疑似餌を使う「ルアー」、鳥の羽などを針に巻いた毛鉤を駆使する「フライ」、そして和製フライともいえる「テンカラ」といくつもの釣法があります。
今回は特に初心者の方や女性もチャレンジしやすいルアーフィッシングにフォーカスを当てて、お話をしていきたいと思います。
渓流でのルアーフィッシング
渓流でのルアーフィッシングに必要な道具はロッド(竿)、リール、 ライン(糸)そしてルアー(擬似餌)のみ。シンプルな道具もルアーフィッシングの魅力のひとつです。虫などを触る必要がないので、女性の方も始めやすいです。
ルアーロッドの長さは5フィートから6フィート(1フィートは約30センチ)が渓流では扱いやすい長さです。竿の硬さはさまざまですが、比較的柔らかいものが扱いやすいでしょう。ラインの太さは4ポンド程度、そのラインを納めるリールは1000番から1500番というサイズが良いと思います。 釣具屋さんに行くと道具の種類の多さに圧倒されますが、最近は「トラウトフィッシング用」として売られているロッドやリールも多いです。また、最近は必要な道具一式がセットになっているものもありますので、最初はそうしたものを購入することで十分楽しむことができます。
魚を誘うルアーにも、さまざまな種類があります。渓流で使用する代表的なルアーは、「スプーン」「スピナー」「ミノー」の3種類。
特にスプーンは、湖に落としてしまった食器のスプーンに魚が食いついたことからルアーフィッシングが始まったため、ある意味ルーツともいえるルアーです。重さは3〜5g程度のものを、色は派手なものから地味なものまで、いくつか用意しておくことをおすすめします。
服装については、「ウェーダー」と呼ばれる胴長靴があると行動範囲も飛躍的に広がります。靴底はフエルトのものが、渓流では滑りにくくおすすめ。転倒のリスクもあるので、ウェーダーは必ずサイズのあったものを使用し、過信せずに流れが穏やかで深くない場所を選び、安全な場所で釣りをするようにしましょう。
道具を揃えたら、いざ渓へ!釣り方とルール
ルアーフィッシングは魚がいるであろうポイントにルアーを投げ込み、水中を泳がせることで魚を誘うという手法です。魚にはルアーがエサに見えたり、縄張りに入ってくる異質な敵に見えたりすることで果敢にアタックしてきます。
魚がいるポイントは季節や川の状況で大きく変わりますが、春先などは比較的流れが緩やかな所や、少し深い場所に、夏になるにつれて流れが早く浅い場所に魚が移動する傾向にあります。
また渓流魚は上流を向いて泳いでいることが多いため、基本的には下流から上流に釣り上がるのが基本。こうすれば魚に気づかれることなく ポイントに近づくことができます。
渓流魚は非常に警戒心が高く、他の釣りに比べても難易度が高いといわれています。慎重に近づくこと、丁寧に釣りをすることが魚と出合える近道です。
実際に釣りをする際、まずは釣りをする場所の情報収集から始めます。
河川での釣りを管理している漁協組合等のホームページなどで、釣りのルールを確認するところから始まります。「〇〇川 釣り」といった検索ワードで大抵の場合は調べることができます。
確認事項は以下のポイント。
1.釣りができる期間や場所
2.入漁券の購入方法
3.魚の持帰りの可否や釣法の制限など
釣りができる期間は概ね3月から9月といったところが多いですが、フィールドによって冬もOKというところも。逆に生態系の保護などを目的に、通年で釣りが禁止とされている場所もありますのでご注意ください。
日本で渓流釣りができるほとんどのフィールドは、事前に入漁券 を購入する必要があります。近隣の飲食店やお土産屋さんで入漁券を買うことができる場合もありますし、最近はコンビニのネットプリントで購入することができるフィールドも増えました。
釣法については禁止事項として定められていなければ制約はありませんが、特に「ルアーやフライの場合はキャッチ&リリース(魚の持帰り不可)」として、渓流の一部エリアを「ルアー&フライ専用区」として開放している場所もあります。そうしたところでは魚影も濃いため、初心者でも魚が釣れる可能性は高いです。
また実際に釣りを始める際も、他の人が釣りをしている場合は距離を空けたり、上流に入らないなどのマナーはとても大切。渓流釣りができる川は大きなフィールドではない場合も多いので、お互い安全に気持ちよく釣りができるよう、譲り合いの気持ちを忘れず釣りを楽しむようにしましょう。
美しい渓流と魚は手付かずのまま残っているケースはほとんどなく、漁業組合を始めとした多くの人々の尽力で釣りを楽しめるフィールドとして守られています。必ず入漁券を購入し、マナーを守って釣りを行ないましょう。
魚を持ち帰らない場合は、極力魚にダメージを与えないように扱うこと、そして速やかにリリースすることが必要です。人間の体温は魚にとって非常に高温で、そのまま触ってしまうと火傷を負ってしまい魚にとっては致命的なダメージとなります。極力触らないように、また触るときは十分に手を水に冷やした状態で触るようにしましょう。
美しい渓流魚との出会いを求めて
渓流でのルアーフィッシングは手軽さと奥深さ、そして大物への挑戦とロマンのある釣りです。
釣りの中でも難しいと言われる渓流釣りですが、ぜひ二の足を踏むことなくチャレンジしてみてください。苦労した先に美しい魚との出会ったとき、きっとあなたも幸せになっているはずです。