長谷部家の夜遊びは、娘と一緒に夜の森を散歩しに行くことだ。4歳の娘は未だに夜の森の中には「オオカミ」がいると信じていて、それを探すことが2歳半頃からの壮大なミッションになっている。
オオカミガいる、いないはさておき、夜の森の散歩は大人も子供も楽しい。家族全員ヘッドライトとハンドライトを装着し、森へと出発をする。森といっても自宅のそばの雑木の保護林なのだが、ここは街頭などの人工的な明かりがひとつも無いので本当の夜を味わえるのだ。
夜の森の中でのルールは3つ決めてある。1つめは「ライトの光を人の顔に向けないこと」2つめは「転ばないように上下左右色々な場所をよく見ること」そして最後は「自分で歩くこと」だ。これを守れないと、夜の森へ行けないことになっている。そうはいっても4歳児。気持ちの面で約束が守れれば、興奮して忘れてしまうことに関してはもちろん見て見ぬふりをする。
スタート直後は、ライトを明るめにして森を歩き始める。こうすることで、闇の恐怖がかなり和らいだ状態で森になじんでいけるのだ。
「あ!パパ、オオカミがいたかも!」
「パパ!ライオンもいるかもしれないから気をつけてね!」
物音がする方向をあちこち照らしては、空想と夜の森のリアルが混ざり合った世界を進んでいく。
夜の森に身体が馴染んできたら、いよいよ生き物探しスタート。今日は地面を行き来する虫探しに夢中になった。光が照らされた一点だけが見える世界には、ザトウムシやダンゴムシ、そして静かに潜むバッタを発見する。今回の娘の主役は森の掃除屋「オオヒラタシデムシ」だった様子。少しも触れないくせに、ライトで行方を照らしながら追いかけまわす。
いっぱい遊んだ後の帰路は、少しずつ点灯するライトの光を少なくしていく。心が森になれたので、無駄な光を減らして夜の森が持つ本来のエネルギー感や音とうっすらと見える周りの景色を頼りに歩く感覚を大切にするのだ。
毎回、残念ながらオオカミを見つけることはできない。でも、夜の森は、子供の五感を日々刺激してくれ、「感じる」ということをダイレクトに体感させてくれているのは間違いないようだ。
皆さんも、キャンプや旅行の際には是非闇の中で遊んでみて欲しい。
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長谷部雅一
アウトドアプロデューサー。
アウトドアイベントの企画・運営を手がける「Be-Nature School」スタッフ。人と自然をつなぐインタープリターとしても活躍中。現在、SONY「Xperia」のCMにも出演中。
著作に『ネイチャーエデュケーション』1300円+税 みくに出版刊