キャンピングカーや車中泊可能なバンに特化したシェアサービスが、いま人気を集めている。仕事に遊びに、使い方は自分次第。実際にバンシェアのサービスを利用してドライブしてきた。
なにはともあれ体験してみよう! 夢のキャンピングカー
荷台部分が広い車を家のように作り込んで拠点にする「バンライフ」。遊びや仕事場など昨今用途はさまざま。旅や自然好きならちょっと憧れるスタイルだが、車を所有するとなるとハードルはかなり高い。でも、ちょっと乗ってみたい! そんな願いを実現させる「バンシェア」なるサービスがあると聞き、物は試しと、借りてみることにした。同サービスは、個人が所有するキャンピングカーや車中泊可能な車が150台以上登録されていて、直接オーナーから借りることができるのだ。
バンシェアを運営するカーステイのサイトからユーザー登録し、車を探してみる。地域と日程を入力すると候補の車が数台出てきた。大型のキャブコンやハイエース型のバンコンがずらり。実は、キャンピングカー運転経験はゼロのワタクシ、今回は運転しやすいバンを探す。家族でよくキャンプに出かけるというFamilyCamperCHIRINさんの古いタイプのワーゲンワンボックスに興味をそそられ申し込んだ。車の説明ページには「うちの道具でよければキャンプ道具お貸しします♪」との記載が。これは有り難い! 手ぶらでも寝泊まりができるではないか。予約リクエストをしてからほどなくして予約完了のメールが届いた。オーナーとはチャット機能を介し連絡できる。受け取り場所の詳細や些細な質問を気軽にできてチャットは便利だった。
いよいよ当日、車を受け取りに向かう。FamilyCamperCHIRINさんはすでに何度も貸し出している方。初バンシェアで初キャンピングカーなんです! と伝えると、
「機能がたくさんあるので、どんな感じにこの車を使いたいかによって合う説明をしますよ!」と、とても丁寧に話しを始めてくれた。キャンピングカーはいわずもがな機能が多彩。大まかな使い方を教わるだけでも時間が必要なので、借りる際はそのことも視野に入れるといいかもしれない。
今回は丸一日借りて、三浦半島へとトリップ。
道中雨に降られたりしたが、広い車内で快適旅。マグロにスイカ、地場産の旨いものをたらふく食い倒れ。夏には海水浴、車で巡るのがちょうどいいスポットでもある。さて、気になるのはバンシェアの料金。この度は、締めて1万4千2百円也(燃料代別)! なかなか手頃。どうです? 借りみたくなったでしょう。
キャンピングカー愛をのせ、実益も兼ねるシェアという選択
今回車を借してくれたFamilyCamperCHIRINさんは、すでに数台のキャンピングカーを乗り継いでいる。25歳のときに初めてのマイカーが初めてのキャンピングカー。そこから、キャブコン、アメ車、イギリス車とキャンピングカーひと筋。いまでは小さな娘さんたちもキャンプ好きに。キャンピングカーの魅力、そして、なぜシェアしようと思ったのか、オーナーのキモチを聞いてみた。
—そもそも、シェアしようと思ったキッカケはなんだったんですか?
もともと旧車やキャンピングカーが好きで、これまでも何台か乗り継いできたんです。キャンピングカー自体はこれで3台目です。キャンピングカーって、ものすごく維持費がかかるんです。旧車となると、さらにです。
そんなこともあって、家族からは「どうにかならないの〜?」と(笑)。バンシェアに登録したのは、維持費の足しになればという思いがありました。あともうひとつは、古い型のキャンピングカーは乗っている人がとても少ないんです。旧車やそうした古いキャンピングカーを好む人とつながりたいなという思いもありました。一般的な国産車と違って、故障したらどこに持っていくのか? とか、とてもノウハウが少ないんです。
—今回運転してみて、国産車とはひと味違った魅力をものすごく実感しました。ある意味、クセ強で。でも、「運転している感」ていうんですかね、それが心地良かったです。
こういう旧型の車を貸し借りするそうしたサービスはこれまでなかったので、ぼくみたいな人がお試しで乗って貰えたらいいし、そして自分の維持費もまかなえるという。それでこのサービスを利用してみようと思いました。
—実際に貸し出ししてみて、どうですか。
すごく楽しいです。最初は維持費をガンガン稼ぐぞ〜! みたいな感じだったんですが、だんだん変わってきましたね。この車の世界観とか、こういう人に貸したいという自分の思いなんかがあって。バンシェアの車の紹介ページにもそうしたコンセプトをしっかり打ち出すようにしました。すると自然と当てはまる方々が申し込んでくれるようになってきたんです。
バンライフを始めたいという方だったり、将来的にキャンピングカーを持ちたいという方々が借りてくれるようになりました。そして返却のときなどに、実際維持費はどのくらいなの? と、リアルなお金の話をしたり。そんな話ができて嬉しいですね。
—そうしたコミュニケーション、とてもいいですね。さて、ツボを押してしまいそうでこわいですが、あえて聞きます。旧車&外車キャンピングカーの魅力ってどんなところですか?
ははは。長くなりますよ〜。国産車とは設計思考がぜんぜん違うところですかね。その国ごとの道路事情が色濃く反映されていて、運転すると感じるんです。
この車のふるさとであるドイツはアウトバーン(速度無制限)があります。スピードが出て事故がおきた場合にいかに人命を守るか、みたいなところに重きが置かれている。だから、ドアもいちいち重たい。鉄板も厚くて重厚感があります。なにもかもがロングドライブ仕様、高速道路なんかで長距離乗るとようやく本領発揮します(笑)。
一方アメリカは、道路も真っ直ぐで、とにかく車はパワーみたいなところがあって。ハンドルも緩めで長距離を長時間走るということが苦じゃない感じです。アメリカのキャンピングカーは、古き良きオールドアメリカンな感じです。
そして、イギリスは、歴史が古くてウッディーな雰囲気のいわゆる純喫茶みたいなインテリアが多いです。欧米は馬車の文化があったので、家具を積んで長距離を旅するという日本にはない文化があって、その名残を感じますね。キャンピングカーのインテリアを作っている会社は、もともと幌馬車なんかを作っていたりして、歴史があります。
—そんな視点で見たことなかったです。面白いですね! もっと多くのつながりができるといいですね。ありがとうございました!
CarStay公式サイト https://carstay.jp/ja
FamilyCamperCHIRINさんの車のページはこちら→ https://carstay.jp/ja/cars/5db84cc476c37f544bfa11b4
※構成/須藤ナオミ 撮影/小倉雄一郎
※本記事は、2021年ビーパル8月号掲載の記事に加筆して転載しています。