さて、私のお楽しみは、ここからだ。風来望さんは基本素泊まり宿なのだが、この日は初シーカヤックフィッシングに挑戦したゲストさん(通称、先生)が、釣った魚で晩ごはんを作ってくれると言う♪ さっそく皆で車に乗り合わせ、町のスーパーまで買い出しへ。私は、シーカヤックフィッシングをしていないのに厚かましくお魚を頂く身分。というコトで、お礼代わりにお酒を購入するコトに。
宿の自炊用キッチンで、どんどん作られていく様々な料理たち。魚料理はもちろん、様々な手料理のオンパレード。「食べて食べて!」と先生は大判振る舞い! 素泊まり宿なのに・・・こんな豪華な晩ごはんを頂いちゃって良いのでしょうか?! つくづく、良い日に泊まったもんだ。コレだから、様々なゲストと過ごせるゲストハウス泊は辞められない。獲りたての魚の味と幸せとを同時に噛みしめるのだった。
ちなみに、料理は苦手という方のために、宿の庭に小さな『風来望食堂』なるものがある。自分がシーカヤックで釣った魚を、達さんがさばいて出してくれたり、他にも達さんが釣った地魚や天草産野菜(『風来望』の畑で作られた野菜もあり! )を使った手料理が格安で食べられるのだ。
しかも、海に沈みゆく夕陽を眺めながら。
世の中にあまり知られていないこの場所のこの絶景! どんどん進むお酒と旅&海の話。
毎日、こんな夕暮れ時を過ごしたいと思わずにはいられない。「移住して3年間、毎日この景色を見続けているけど、晴れの日も雨の日も、台風の日ですらも、ステキな場所だなって思えて飽きるコトがないの」そう語るのは女将の雅子さん。
そもそも、ゲストハウス開業のきっかけは、昔、あるじ夫妻がニュージーランドを旅した際、バックパッカーズ(=ゲストハウス)に泊まり「いつか、こういう宿をやりたい」と思ったのがはじまりだ。それから、達さんは、雅子さんと娘さんを残して、一人、ゲストハウスをするために気に入る土地探しの旅にでかけた。
流れ流れてたどり着いたのが、ココ天草下島。漁師をし、島内にも仲間ができ、そして、出会ったのが、とある会社の保養所だったこの建物だ。旅をはじめて約1年後にゲストハウスをはじめ、雅子さんと娘さんを呼び寄せて早3年。旅人や釣人だけではなく、島内の仲間も定期的に集う。「『風来望』での島内外の人たちとの一期一会。そして、再会が楽しくて仕方ないんだよね」という島内の常連さんも。
「アクセスの良くないこの地に、わざわざ来てくれるゲストさんには、本当にありがたい
って思うの」と、雅子さん。たしかに移動だけで、けっこうな体力を使う距離なのは間違いない。でも、私は声を大にして言いたい! 「だまされたと思って、一度、『風来望』に泊まりに行ってみて! 」と。あの海と魚と、そして、あるじ一家に出会えば、どんなに遠くても何度でも行きたいと、そう思わずにはいられない場所になるはずだから。
『天草西海岸Backpackers風来望』
住所:熊本県天草市天草町下田南3809-1
TEL:0969-42-3911
料金:ドミトリー2,500円/泊~(素泊まり)
アクセス:熊本市内から下田温泉まで路線バスで約2時間50分
下田温泉から宿へは送迎あり
※冬季休業(11/25~2月頃)
URL: http://www.amakusa-guesthouse.com/
◎イラスト・文・写真/松鳥むう(まつとり・むう)
イラストエッセイスト
離島とゲストハウスをめぐる旅がライフワーク。今までに訪れたゲストハウスは100軒以上、訪れた日本の島は76島。その土地の日常のくらしに、ちょこっとお邪魔させてもらうコトが好き。著書に『島旅ひとりっぷ』(小学館)、『ちょこ旅沖縄+離島』『ちょこ旅小笠原&伊豆諸島』『ちょこ旅瀬戸内』(いずれも、アスペクト)などがある。http://muu-m.com/