古くから日本の漁業関係者の足元を支え続けてきた「ギョサン」
「ギョサン」という言葉をご存知だろうか?
漁港に行くと、網をなおしているおじちゃんが履いているあのサンダル。もはや日本の港町の風景の一部といっても良いような、そんなサンダル。それが「ギョサン」だということは、私も釣りやサーフィンを楽しむなかでいつの間にか認識していた。
海辺の釣具屋などにはどこも当たり前にギョサンが売られていて、何度となく買おうと思っていた。しかし既に「ハワイアナス」や「げんべい」のビーチサンダルをいくつも持っていた故、手を出すことなく時は過ぎて行った。そんな中、ギョサンが50年ぶりにリニューアルしていると聞き、なんだかとても興味が沸いて2足ほど注文してみた。
そもそも「ギョサン」とは?
「ギョサン」のことを調べてみると、元々小笠原の漁師の方々が愛用していていた一体成形の樹脂製ビーチサンダルだそう。漁業従事者が愛用し、漁協で売られているサンダル、略して「ギョサン」となったそうだ。
そして私が従来「ギョサン」と認識していたのは、丸中工業所の「ギョサンカリプソNO.110」というものだった。「PEAL」の文字がフットベッドに印字されているのが印象的で、多くの人がギョサンといえばこちらの製品を連想するのではないだろうか。この「NO.110」が2019年に「ギョサンカリプソNO.190TYPE−T」として50年ぶりにリニューアルしたそう(従来のモデルももちろん販売継続中)。今回はリニューアル後のギョサンを購入させていただいた。
リニューアルした「ギョサン」。その使用感は?
購入して1年ほど。結論からいうと、この1年間でもっとも履いた一足となった。
まずデザインがモダンで非常に合わせやすい。アイランドスリッパを彷彿とさせるプレーンなデザインで、アウトドアシーンだけでなくキレイめなコーディネイトにも違和感なく合わせられるのだ。また通常のビーチサンダルや従来のギョサンに比べてソールの厚みがあり、これによりちょっとした水溜りでも濡れにくかったり、ハイヒールのような効果で足も若干長く見える気がする。
漁業のプロに選ばれる理由とは?
そしてギョサンの大きな特徴である滑りにくさ。これは本当に特筆もので、漁港関係者の方などプロに愛用される理由がよくわかった。また若干ヒールが高いため前方に重心がいくため脱げにくい。様々な路面において安心感があり、とくに雨の日などは思わず手に取ってしまうのだ。
もうひとつ、ギョサンの大きな特徴である一体成形からくる耐久性と安定性。ビーチサンダルにありがちな鼻緒抜けの心配も皆無で、鼻緒の付け根に砂利なども溜まりにくい。またしっかりとした厚みと硬さがあるため、硬い突起を踏んでも突き上げの痛みもなく、ソールもなかなかすり減らず耐久性も非常に高い。
ビーチサンダルで横方向の動きをしたときに、ビーチサンダルから足が滑りヒヤッとしたことがある人は多いであろう。ところがギョサンには足裏と接する場所に滑り止めがついており、履き続けた1年間でほぼヒヤッとした体験はなかった。これは一体成形でしっかりと剛性があり、サンダル自体が歪みにくいこともポイントだと思う。
今後の期待としては、サイズの拡充について。現在のところワンサイズ展開のため、女性なども履きやすいサイズが増えるとより多くの方がはけると思う。
ギョサンは日本の良心だ
「ギョサンカリプソNO.190TYPE−T」をはじめ、長年様々なギョサンを製作されている山中工業所は、厳選した素材を用いてすべて国内生産だそう。しかしいずれのギョサンも1000円から2000円台と本当にリーズナブル。素晴らしい製品を低価格で生み出すたゆまない努力に、日本の良心をみる想いだ。
是非こうした素晴らしい日本の製品が、末長く作り続けられて欲しい。これからも漁港の風景を足元から支えて欲しい。そのためにも多くの人にギョサンを知っていただき、是非愛用して欲しいと願う。