シンプルに野営を楽しむブッシュクラフト。あえて便利な道具を使わず、フィールドにあるものを利用するスタイルは、まさに自然の知恵。実践する人の技術力が試される。
そんなブッシュクラフトは、北欧をはじめとした欧米各国に広く愛好者がおり、日本でもブッシュクラフター(ブッシュクラフトを行なう人)が徐々に増えてきた。
松竹芸能所属のお笑いコンビ、「うしろシティ」の阿諏訪泰義(あすわ たいぎ)さんも、ナイフと焚き火、そして野営を楽しむブッシュクラフターのひとり。自身のSNSやYouTubeチャンネルで、ブッシュクラフトについて発信し続けている。
荷物を減らすために始めたブッシュクラフト
「父親は釣りが好きで、母親はガーデニングが好き。今、キャンプを楽しんでいるのは完全に両親の影響ですね。子供のころは嫌いだったんですが、大人になると似たようなことばっかりしているんです(笑)」。そう語る阿諏訪さんは、10年ぐらい前からソロキャンプをするようになったという。
「最初は誘う人がいなかったから。みんな、『なんで寒い時期に行くんだよ』って。だからひとりで行くようになりました」
一年を通してひとりでキャンプを楽しむようになり、徐々に野営スタイルへと変化していく。そのきっかけは荷物を減らすために始めたブッシュクラフト。足りないものは現地で作ることに「これは楽しい!」と気づき、不便を楽しむようになった。
木を削って道具を作り、端材を焚き付けにする
フィールドでは、つねに木を見て、木に触れるのが阿諏訪さんのキャンプスタイル。ナイフで木を削り、即席のウッドペグでタープを固定したその次は、薪からスプーンをつくる。モーラナイフの「ウッド カービング 120」であらかた削り、丸曲がりの刃物に持ち替えてつぼ(すくうところ)を丁寧に掘る。
「ブッシュクラフトしたことない人は、木のペグやお箸づくりから始めてみるのが良いですよ。それだけでブッシュクラフト、グリーンウッドワークなので」
スプーンを作り出し、おおよそのカタチができたところで、木の削りかすを集めはじめる。そこにバンドックの焚き火台「LOTUS(ロータス)」をセットし、焚き付け代わりに削りかすを置く。グリーンウッドワークを行ないつつも、火熾しの準備を欠かさない。一連の流れがとてもスムーズだ。
「この焚き火台の魅力は軽くてコンパクトなこと。よく使うのはこれか、STCのピコグリルですね。どちらもちゃんと熱がこもる。サイドが少し立ち上がっているので(角度がついているので)、灰もこぼれないし、使い勝手が良いです」
キャンプ好き芸人が集まる『焚火会』では、各々がひとつづつ、焚き火台を持ち込むという。理由は単純明快で、「みんな、自分の火を他の人に触られたくないから(笑)」とのこと。阿諏訪さんもソロキャンプ向けのモデルを使って暖を取り、調理まで行なうスタイルだ。
「朝、火を熾すのが面倒なときはガスも使いますけどね。雨の日なんかも。でも、なるべくは焚き火で行ないたいです」。ストイックになり過ぎないのも大事。楽しむことを忘れない。
火熾しはチャークロスに火打ち石、火打金を使う
焚き火台の上に木の削りかすを置いて、次に取り出したのが黒い布状の「チャークロス」だ。綿100%のTシャツの切れ端を不完全燃焼させた、お手製の着火剤。そこに火打ち石、火打金を使って火を熾す。
「チャークロスは四角い缶の真ん中に穴を空けて、その中にいらなくなったTシャツを細かく切って入れて、焚き火に放り込むだけでできます。そうして作ったチャークロスを火打ち石にかぶせ、火打金を使って火花を散らします。この火打ち石も拾ったものです。火打金だけ持って川へ行って、片っ端から叩く。そうして火花が出るやつ見つけたら持って帰る。これ、阿蘇(熊本)で拾った石です」
左手でチャークロスをかぶせた火打ち石を固定し、火打金を持った右手を振り下ろすこと数回。火花が散り、チャークロスに種火ができた。すぐさま木の削りかすの中に種火を入れ、息を吹き込むとブワッと炎がたった。
そうして出来た焚き火に、さらに木の削りかすを入れて炎を安定させる。小さな火を大きく成長させていくのもブッシュクラフト技術のひとつ。阿諏訪さんは丁寧に、焚き付けから細い薪へと大きさを変えつつ、自分の焚き火を“作り上げて”いった。
火をコントロールするための道具と技術
火の調整には、ippoproductsのファイヤーブラスター「IBUKI」を使用するとのこと。火吹き棒としての使い勝手はもちろん、コンパクトに収納できるのも魅力だ。
だが、ファイヤーブラスターが無いときは、両手の親指と人差し指を使って小さな穴をつくり、息を吹き込むことで、ふいごの効果があるという。無いものは作る。材料すらないものは工夫する。自然と対峙するアイデアこそが、ブッシュクラフターのスキルに直結する。
タープの下で焚き火をするため、無駄に火を大きくすることはしない。薪の組み方は並べて置くことで炎が立たず、火の粉が飛ばないという。
「キャンプでの楽しみ方はまず焚き火、その次が自然をみること、散策ですね。その次にグリーンウッドワークで、最後が料理。これって、家ではできないこと順なんです。料理は家でできるし(笑)」
そう、キャンプの魅力を語る阿諏訪さんだが、料理本を出すほど料理も大得意。気になる焚き火料理とは…。次回は「うしろシティ阿諏訪さんの焚き火料理」編をお届けします。
PROFILE:うしろシティ 阿諏訪泰義
松竹芸能所属。1983年神奈川県出身。金子学とお笑いコンビ「うしろシティ」を結成。得意のキャンプと料理を活かし、キャンプ料理本も出版している。2021年8月キャンプグッズブランド「Blue Moment」を立ち上げた。
野あすわ – YouTube :
https://www.youtube.com/channel/UCFoTc4bdk-AuG16Pwezzt0A
「Blue Moment」について
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000059.000047561.html
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取材・撮影/編集部早坂