仮面舞踊の儀式が始まる前、本堂では大勢の僧侶の方々による読経が行われていました。読経が終わりにさしかかると、全員がいっせいに頭に紅い帽子をかぶりました。紅い帽子はヘミス・ゴンパの宗派(ドゥクパ・カギュ)の特徴です。
境内に押し寄せた地元の人々と外国人観光客の数があまりにもものすごく、文字通り立錐の余地もなかったので、本堂の屋根の上に上がって、そこからチャムの様子を見させてもらうことにしました。低いホルンや華やかな笛の音、太鼓やシンバルが響き渡る中、さまざまな仮面や服装の僧侶たちが入れ替わり立ち替わり現れて、荘厳な舞を披露していきます。
ヘミス・ツェチュで披露されるチャムの中でもっとも重要なのが、グル・リンポチェとその生涯を象徴する八変化(グル・ツェンギェ)の仮面をつけた僧侶たちが披露する舞の場面です。屋根の上からだとあまりよく見えなかったのですが、かろうじて拝見できたのが、このグル・リンポチェの仮面を身につけた僧侶の姿でした。
12年に一度の特別な祭りというだけあって、ものすごい熱気に包まれていた2016年のヘミス・ツェチュ。こうした信仰の場で、遠い昔から積み重ねられてきた人々の祈りは、今もこれからも、ラダックの人々の間で受け継がれ、互いの心を支え合う力となっていくのでしょう。
山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。2016年3月下旬に著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』を雷鳥社より刊行。
http://ymtk.jp/ladakh/
山本高樹 写真展「Summertime in Ladakh」
会期:2016年9月9日(金)〜30日(金)(月曜休)
会場:ポイントウェザー
神奈川県横浜市港北区綱島西1-14-18
http://pointweather.net/