そして、ゴールの戸土集落へ。ここは新潟県との県境に位置した日本海が見える集落でした。小谷村内なのに、集落に直接入るにはこの塩の道を歩く以外に手段はなく、新潟県を一旦経由しなければいけないという地。国道148号線ができてからは、買い物など生活面では糸魚川市との結びつきが強かったのでは?と想像してしまいます。でも「この地は信州小谷村 戸土」という石碑。地元有志によって建てられたものだそうですが、信州人としての確固たる思いがこういったかたちで残されているのです。
春から初夏にかけての塩の道は、主に東廻りの千国古道を歩きました。今回の鳥越峠越えで特に感じたのは、人が暮らす集落とそれを繋ぐ道の関係性。道沿いには4つの集落がありましたが、いずれも廃村となり、そのことで日常的に歩く人がいなくなり、道も次第に失われていっています。
いまは国道があるし、別に失われたところで買い物も不便はないのですが、生活の移動手段として「歩く」ということが少なくなってしまったいま。塩の道あるき=ロングトレイルというアクティビティの形を借りて、「歩く」という生活と密接した行為を取り戻すというのは意義のあること。都内に暮らしていたときに比べても、車でないとどこにも行けない(行かない)長野での暮らし。次回歩くときは、そんなことを思い出させてくれる塩の道を残すために私もナタを持って行こうかな。
※このコースは健脚向けです。専門ガイドをお願いするのがベターです
※塩の道の歩く際には、トレッキングシューズや雨具など山歩きの装備をしましょう
※ハチやクマなどに遭遇する可能性もあるので、対策は怠りなく
※山道だけでなく、住宅街や一般道も通るので車に注意をしましょう
■「小谷 塩の道の会」
・年会費:1000円
・参加費:1000円(保険代込、集合場所の小谷村役場までの交通費は実費負担)
・問合せ先:小谷村観光連盟 0261-82-2233
http://www.vill.otari.nagano.jp/kanko/index.html
文・写真/村岡利恵
(元女性誌編集者。都会育ちのアウトドア初心者なのに15年小谷村に移住。HÜTTE muu muuとしても活動開始)