映画『TOVE/トーベ』が公開中
10月上旬、Visit Finland(フィンランド政府観光局)主催の映画『TOVE/トーベ』上映記念メディアイベントが、フィンランド大使館敷地内にあるメッツァ・パビリオンで開催されました。フィンランド産の木材を使用しているというパビリオンに一歩足を踏み入れると、空気が澄んでいるようで明るい気持ちになります。まずは映画『TOVE/トーベ』の紹介と予告編が上映されました。
1945年、小説のキャラクターとして誕生して76年。日本でも現役ばりばりに人気のキャラ、ムーミンの生みの親であるトーベ・ヤンソンが主人公です。14歳で雑誌のさし絵を手がけてキャリアをスタート、風刺画家、作家、そしてムーミンコミックスで世界的な名声を手にする彼女の、知られざる半生を描きます。既婚者でのちに政治家となるアトスや、同じく既婚者で女流演出家のヴィヴィカと同性愛が犯罪だった時代、己の心へまっすぐに、ジャズに合わせてむちゃくちゃ踊るみたいに自由に(→映画には実際にそんなシーンも!)生きていくトーベ。あのムーミン谷の物語が生れたその背景を知り、ムーミンののんびりとしたかわいさがより味わい深いものに思えてくるのです。
つぎにフィンランドセンター所長のアンナ-マリア・ウィルヤネンさんによるトーベ・ヤンソンの生涯についての紹介が。映画の舞台となった当時のフィンランドの時代背景や、トーベの描いた絵画、両親や恋愛相手の写真まで出てきて興味津々。大学の講義を聴くような気分で、トーベについての基礎知識を学びました。
また旅行会社「フィンコーポレーション」のCEOによる、トーベ・ヤンソンゆかりの地、映画のロケ地などをめぐるツアーの紹介。夏に開催された配信ツアーの映像などもあって、〝フィンランドに行きたい熱”が沸騰します。
主演女優アルマ・ポウスティがライブで登場!
そのあと映画『TOVE/トーベ』の主演女優、トーベを演じたアルマ・ポウスティがオンラインで「コンニチワ、ニホン!」とにこにこ笑顔で登場。映画の感想や家族付き合いがあったというトーベのこと、フィランドの魅力について語りました。
Q:この映画への出演が決まったときの感想は?
アルマ:幸せでとても光栄なことだと思ったけど、同時にナーバスにもなりました。フィンランド人に愛され、深くリスペクトされる方なのでプレッシャーがあって。演技を通し、とても誠実で真実を持って、強く生きた彼女の人生に触れることができた。素晴らしい経験でした。
Q:撮影秘話を教えてください。
アルマ:雪のシーンを撮ろうとしたら、雪がなくて困ったことがありました。またヘルシンキの郊外で、サウナのあと湖に張った氷に穴をあけて飛び込むシーンがあって。私自身は寒さが苦手なので、ちょっと大変でした(笑)。
Q:トーベ自身と、お会いしたことがあるそうですね?
アルマ:俳優だった祖父がトーベといろいろ仕事をしていて、彼女の自宅に招待されたことがあるんです。5歳だったので、あまり記憶はないんですけど。彼女は島に住んで自然のなかで多くの時間を過ごし、海で泳ぐのが大好きで。何時間でも泳いでいたそうですよ。
Q:トーベとご自身とで、共通点はありますか?
アルマ:トーベは自由と人権の不平等に対して戦った、厳しい闘士でした。自分を貫いて生きた、その価値観にはとても共感します。ユーモアがあるというか、ジョークが好きなところも共通するかもしれません。私自身も自然とつながることが好きで、今年から養蜂を始めました。やってみると新鮮で、とてもワクワクします。
Q:日本に来たことはありますか?
アルマ:まだないんです。可能になったら、できることならいますぐにでも旅したいんですけど。映画はすでに公開されたくさんの方に足を運んでいただいているようで、とても感謝しています。トーベの知られざる一面に触れ、楽しんでいただけたらうれしいですね。
トーベ・ヤンソンの生涯を描いた映画『TOVE/トーベ』は現在全国公開中です。彼女の生きざま、ムーミン誕生の背景、フィンランドの自然など、気になる方はぜひ映画館へ!
『TOVE/トーベ』(配給:クロックワークス)
●監督/ザイダ・バリルート ●出演/アルマ・ポウスティ、クリスタ・コソネンほか ●新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか公開中
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文/浅見祥子