コーティングされたナイロン素材が世に出回る前に、防水性のある素材として主流だったのが、蝋(ろう)引きの帆布です。
蝋引きの帆布とは綿素材の帆布に蝋を染み込ませたもの。蝋を染み込ませることで、素材に防水性を持たせ、耐久性もアップします。この蝋を染み込ませる加工を「蝋引き加工」といいます。
蝋引き加工は、自宅でも簡単に挑戦できます!アウトドアに持ち出すカバン、帽子、グラウンドシートなど、帆布でなくても綿素材のものならば、どのようなものでも加工ができるのです!
今回は市販のワックスを使用して、蝋引き加工をご紹介したいと思います。
ワックスについて
今回使用したのはRapid社のWaxcoatingです。実はこのワックス、著者が防水性のある綿素材のタープを個人輸入した際に、同時に購入したものなので、日本国内では手に入らない製品になります。
国内で手に入りやすいもので類似品は、FjallRaven(フェルラーベン)社のGreenland Wax(グリーンランドワックス)です。ただし、Rapid社のWaxcoatingがペースト状のワックスなのに対し、Greenland Waxは石鹼のような固形のワックスです。
著者が使用したRapid社のWaxcoatingとGreenland Waxは、綿素材を加工しやすい配合で、蜜蝋とパラフィンを混ぜ合わせたものです。綿素材を加工するための専用のワックスなので、綿になじみやすく、使用すれば、誰でも簡単に蝋引き加工ができます。
使用した素材
今回蝋引き加工を行ったのは、帆布のトートバックと、使い古された帽子です。
帽子のほうは長年の使用により、日焼けで色が退色してしまいました。
トートバックはキャンプで雨が降った時に放置してしまい、一部にカビが生え、ブラシでこすって洗いましたが、まだらに退色してしまったものです。この2つの素材を、蝋引き加工してみたいと思います。
必要な道具
・ワックス
・ウエス(雑巾)
・ドライヤーもしくはアイロン
蝋引き加工の手順
加工する素材の汚れを落とす
加工する素材をクリーニングします。トートバックの表面の汚れ、砂や泥をブラシを使って落とします。帽子は丸洗いできるので、手もみで洗濯しました。クリーニング後は、よく乾燥させます。
ワックスを塗りこむ
ウエスにワックスを適量つけます。
素材の隅から隅まで均等に、ワックスをのばすように塗りこみましょう。
グリーンランドワックスのような固形のワックスを使う場合も、手順はほぼ同じです。固形ワックスを、素材に直に押し当てて塗り込みましょう。あまり力を込めないほうが、均等に上手く塗れますよ。
ワックスを熱で溶かしてしみ込ませる
素材全体にワックスを塗りこんだら、ワックスを熱で溶かして、素材に馴染ませます。ドライヤーをまんべんなく素材にあてて、表面に付着しているワックスの浸透を促します。アイロンを使用する場合は、当て布を用意し、素材の上に当て布を敷き、その上から、低温、もしくは中温でアイロンがけをしましょう。
余分なワックスを拭き取る
ワックスが浸み込んでいない新しいウエスを使って、素材全体を乾拭きし、余分なワックスを拭き取りましょう。
よく乾燥させる
直射日光を避けた風通しの良い場所で、2〜3日かけて、よく乾燥させれば、でき上がりです。余分なワックスを拭き取った後、しっかりと乾燥させれば、手で触った際に、ワックスが手につくこともありません。
蝋引き加工の効果は?
表面を触ってみると、加工前より生地にコシが出て硬くなり、耐久性が上がっています。水をかけてみると、水滴の形がはっきりとわかるぐらい水を弾いていますね。雨を完全に弾くほどの防水性です。
全体的に色が退色していましたが、光沢がでて艶を取り戻し、見違えるほどに、見栄えが良くなりました!
トートバックのほうも、防水性と耐久性は帽子と同じくらいアップしましたが、素材が厚いためか、帽子ほどの光沢はでず、見た目には大きな変化はありませんでした。
蠟引き加工はどれくらい持つのか?
蠟引き加工をした素材にもよりますが、帽子の場合、毎日身に着けていると、1か月ほどで防水性が落ちてきます。ただし、その上から蠟引き加工を繰り返し、ワックスを重ねることで、どんどん防水性は強化されます。ただしそのぶん、素材自体はごわつきが強くなりますね。
さいごに
市販のワックスを使用すれば、誰にでも簡単に蝋引き加工ができます。ワックスを塗り、ワックスを熱で溶かす工程を何度も行えば、防水性をさらに高めることもできますよ。皆様もぜひ、お気に入りの綿製品を蝋引き加工して、アウトドアに持ち出してくださいね。