白神山地のふもと「西目屋村」で生まれる高品質な薪
世界自然遺産・白神山地のふもとに広がる、青森県の西目屋村。大自然に囲まれたこの場所に、“薪の作り手”の役目を担う企業があります。
その名も「メヤマキ」。正式な会社名は「西目屋薪エネルギー株式会社」です。
販売している薪はすべて、周辺の地域で採れた間伐材から作ったもの。間伐材とは、山を良い状態に保つために切り倒した木のことです。
薪を作るために木を切るのではなく、山の手入れにより発生した木を薪にする。
まさに今話題のワードである「サスティナブル(持続可能)」な事業といえます。
そこから生まれた薪は県外から買いつける人も多く、たくさんのリピーターを抱えるほど高品質。
そしてホームセンターやキャンプ場ではまず手に入らない、めずらしい薪の販売も行なっています。
今回はメヤマキがキャンプ用として販売している薪をご紹介するとともに、薪作りに込める想いをお伝えします。
【白神の炎】ナラを中心とした広葉樹の薪
ナラを中心に、カエデやヤマザクラなどの広葉樹をミックスした「白神の炎」。
世界自然遺産である白神産地から着想を得た、なんとも“みやび”なネーミングです。
薪どうしを打ち鳴らしてみると、「カン、カン」とかん高い音が。これは十分に乾燥させた広葉樹の薪、特有のものです。
メヤマキが販売する薪はすべて、1年間に渡る自然乾燥をおこないます。最終的な薪の水分量は、理想的とされる15〜20%程度が目処。
よく乾いた薪は煙が少なく、煤(すす)も出にくく、パチンと爆ぜにくい特徴があります。
至極シンプルにいうと、とても快適に焚き火を楽しめるということです。
長さは30〜35cmほどで、一般的に販売されている薪と同等のサイズ。
なお、白神の炎を購入すると、焚きつけ用として針葉樹の薪が1本ついてきます。この気づかいもうれしいところ。
【目屋の燈火】焚きつけに最適な針葉樹の薪
「目屋の燈火(めやのともしび)」は、針葉樹の薪のセット。「目屋」とは、白神山地のふもとにある地域の名前です。
使用されている樹種はスギ。着火性がよく、短時間で大きな火力を得られるのが強みです。
焚き火を始める際、最初から広葉樹の薪に火をつけようとしても上手くいきません。そのため、まずは火がつきやすい針葉樹の薪に着火するのが基本です。
手軽に大火力を得られる目屋の燈火は、火起こしの段階で使う焚きつけとして、さらに料理をするときの燃料としても重宝します。
【津軽の灯り】甘い香りを放つリンゴの薪
リンゴの産地ならではの伝統的な薪を、全国の一般ユーザー向けにリファインした薪。それが「津軽の灯り」です。
津軽の灯りの特徴は、ほのかな甘い香り。箱を開けると、独特かつ心地よい香りがふんわりとただよいます。
メヤマキがある青森県では、昔からリンゴの薪がストーブの燃料として使われてきました。
県外に出回ることはあまりなく、ほとんどがリンゴ農家やその周辺の人たちのなかで使われます。
そのため、キャンプ用の薪として販売されているのは非常にまれ。「じつはこの薪、リンゴの木なんだよ」と、ちょっとした話題にもなります。
【ミニマキ】ソロキャンプ向けの長さ15cmの薪
「ミニマキ」は全長15cmほどにカットされた小さな薪。リンゴの薪と同様、なかなかお目にかかれないレアな薪です。
ソロキャンプ用のコンパクトな焚き火台に最適化されており、キャプテンスタッグの「カマド スマートグリル B6型」や、笑’sの「コンパクト焚き火グリル『B-6君』」など、定番のアイテムに幅広く対応します。
そしてミニマキは、以下の3種類から欲しいものを選べます。
・白神の炎
・目屋の燈火
・白神の炎と目屋の燈火のセット
見た目が可愛らしいミニマキですが、じつはかなりのコストがかかっている薪でもあります。
ミニマキは普通の薪とくらべ、割ったり切断する回数が多く、基本的に1本1本手作業で作られるからです。
自分で切るのが大変な広葉樹の薪(白神の炎)も用意されているのが、とてもありがたいところ。
火持ちが良い白神の炎は、「薪の追加で忙しくなる」という、ソロキャンプ用の焚き火台にありがちな不都合を解消してくれます。
つい忘れがちな「薪の作り手」という存在。メヤマキが薪作りに込める想い
キャンプにおける一大イベント、焚き火。
普段はできない豪快な直火料理を楽しむ人に、ゆらめく炎が演出するムードに陶酔する人。
キャンプ場を訪れる人それぞれがお気に入りの焚き火台を持ち寄り、思い思いの時間を過ごしています。
おそらくキャンプが好きな人の多くは、焚き火台にもこだわりを持っていることでしょう。
ブランドのこだわりであったり、デザインのこだわりであったり。それもまた、さまざまです。
しかし焚き火をするうえでさらに重要な存在である、薪はどうでしょうか?
なかなかクローズアップされることはありませんが、焚き火に必要不可欠な薪にも、その後ろには作り手の存在があります。
「私たちは薪をただの燃料としてではなく、キャンプを演出する最重要アイテムとして手に取っていただきたいと考えています」
そう語るのは、メヤマキの代表・虎澤 裕大さん。青森県西目屋村の産業や、地域住民の暮らしを支えている方のひとりです。
虎澤代表はこう続けます。
「大切な焚き火の時間を、高品質な薪で静かに快適に楽しんでいただきたい。
薪となる木を育ててきた白神の大自然や、悠久の時間、私たちの薪作りに込める想いを、ゆらめく炎のなかに感じてもらえればと思います。
そしてわざわざ薪をお買い求めいただくのですから、薪が手もとに届いた瞬間から、キャンプへ行くのが待ち遠しくワクワクするような商品作りにこだわっています。
どのようなかたちで届くのかは、箱を開けるまでのお楽しみということで……」
この言葉から感じたのは、薪をただの商品として作って、売って、終わるのではなく、購入した人の“その後”まで考えているということ。
つまり薪に込める想いは、使う人へ贈りたい想いでもあるのだと。
実際に薪を作っている現場を見て、作り手としての気持ちを聞くと、薪を「ただ燃やすだけのもの」と粗末に扱うことはできなくなります。
なおメヤマキでは今後、薪だけでなく、木炭やナイフなどの関連商品を増やしていく予定とのこと。
薪の作り手がいったいどのような木炭、どのようなナイフを販売するのか。いちキャンパーとして楽しみです。