世界一有名な環境活動家、グレタ・トゥーンベリの素顔に触れる『グレタひとりぼっちの挑戦』から、
知床・斜里町に暮らす人びとと自然に触発された映像詩『Shari』まで。
この秋はドキュメンタリー映画が豊作です!
CINEMA 01
グレタが起こすムーブメントを
始まりから記録
『グレタ ひとりぼっちの挑戦』
グレタの素顔にビックリ!
(配給:アンプラグド)
●監督・脚本/ネイサン・グロスマン
●出演/グレタ・トゥーンベリ、
スヴァンテ・トゥーンベリ、アントニオ・グテーレス、
エマニュエル・マクロン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ドナルド・トランプ
10/22~
新宿ピカデリーほか
全国順次公開
2018年夏。スウェーデン・ストックホルムにある国会議事堂の前で、15歳のグレタ・トゥーンベリが学校ストライキを開始。「大人はいうこととやることが違います」と気候変動対策を呼びかける。たったひとりで始めた運動はやがて世界に広がる──。親の影響でなく自らの意思で行動を起こし、各国首脳やローマ教皇と堂々謁見。加速度的に注目度が増すその中心で落ち着いて周囲をまっすぐ見つめ、地に足をつけて歩むグレタの姿に心を打たれる。スピーチ原稿に悩んだり家族と笑い合ったり、アスペルガー症候群でちょっと内気な女の子の素顔と。なんて不思議な子だろう!
CINEMA 02
クラスも授業もテストもなし。
ぜ~んぶ自由!
『屋根の上に吹く風は』
自由って? 教育って?
(配給:グループ現代 )
●監督・撮影・編集/浅田さかえ
ポレポレ東中野ほか
全国順次公開中
鳥取県智頭町の「新田サドベリースクール」。ルールづくりからスタッフ選びまで、すべての軸は子供の主体性。それ本当!?興味津々でスクールの日常へ。まずTVゲームに夢中な子供の姿が。「大人の価値観を押しつけるのも違うかな」とひたすら子供に寄り添うスタッフ。米づくり、英語の勉強、喫茶店経営と思いつきで走り出す子供たちを、放置でもなく口出ししすぎず見守るスタッフの忍耐強さ! 志があるからこその摩擦も描かれ、見応えある人間ドラマのよう。
CINEMA 03
ジェンダー平等、
その先進国にある共学の家政学校
『〈主婦〉の学校』
大臣になった卒業生も登場
(配給:kinologue )
●監督・脚本・編集/ステファニア・トルス
10/16~
シアター・イメージフォーラム
ほか全国順次公開
アイスランド・レイキャビク。1942年創立の家政学校は定員24人。寮で共同生活を送りながら3か月間、実践的家事全般を学ぶ。ベリーを摘んでジャムをつくり、編み物をしつつ「似合うわよ」と微笑み合う。浮世を離れた静逸な時間のなか、手仕事に精を出す生徒の姿は品があって楽しそう。食材を使いきって生ごみを減らし、破れた服を直して新しく買わずに済ます。家事はサステイナブルな学びに通じる。生活を自分の手でつくる力を養うって、ぐるっと回り時代の先端。
CINEMA 04
文筆家、松浦弥太郎の
初監督作
『場所はいつも旅先だった』
いますぐ旅に出たくなる!
(配給:ポルトレ)
●監督/松浦弥太郎
●朗読/小林賢太郎
10/29~
渋谷ホワイトシネクイントほか
全国順次公開
そこにはなにがあるだろう。どんな人が暮らしているのだろう。どんな幸せやどんな本当があるのだろう。「人びとの日常の営みを感じられるから」と早朝と夜に出かけたくなるという松浦。カメラはサンフランシスコ、スリランカのシギリア、マルセイユ、メルボルン、台北・台南と5か国6都市を訪ねる。カメラは歩く速さで動き、ときに道行く人と立ち話。街の素顔がのぞく映像と、小林賢太郎の朴訥とした語りと。映像付きでエッセイを読む気分。
CINEMA 05
エクアドル南部。
森と調和し、森に生きる先住民族の日常
『カナルタ 螺旋状の夢 』
遠い! けど どこか懐しい
(配給:トケスタジオ)
●監督・撮影・
録音・編集/太田光海
シアター・イメージフォーラムほか
全国順次公開中
シュアール族のセバスティアンはナタを手に「若者よ行くぞ」とアマゾンへ分け入る。妻で村長のパストーラは、チチャと呼ばれる口噛み酒をつくる──。英国で映像人類学を学んだ監督が1年間アマゾンに滞在。首狩り族と恐れられた彼らのいまの暮らしを目撃する。ご近所と助け合い、昼間からチチャを飲んで(子供も!)共同作業をしたり、葉を口に含んで薬草を探したり、夢を通して未来のビジョンを得たり。森と共にある人生観、目が釘づけに。
CINEMA 06
知床・斜里町の自然と人と、
人のなかの獣がせめぎ合う
『Shari』
ちょっと変化球!
(配給:ミラクルヴォイス)
●監督・出演/吉開菜央
●撮影/石川直樹
●出演/斜里町の人びと、海、山、氷、赤いやつ
10/23~
ユーロスペース、アップリンク吉祥寺ほか
全国順次公開
斜里岳の頂上で拮抗する雲と風、野生の鹿肉を食べて眠れなくなったこと、パン屋を営む移住者の素朴な暮らしに触れたこと。雪を踏むシャリシャリいう音や、雪を見上げる夜空の浮遊感。一方、記録的な小雪に「今年は異常」と口を揃える住民。そこに赤い毛糸の着ぐるみが現われる──。独特な感性で紡ぐ詩のようなナレーションと、写真家の石川直樹が映す澄んだ自然。フィクションの要素も含む、可憐で凶暴な映像詩。
※構成/浅見祥子
(BE-PAL 2021年11月号より)