防災士の資格を持つ災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんに、災害時に活躍するアウトドアグッズを聞くシリーズの2回目です。前回の「水編」に続き、今回は「火編」です。災害時には電気・ガス・水道といったインフラがストップし、火は使えません。そんな時に活躍するグッズをご紹介します。
100円ショップで買える圧倒的な軽さと携帯性
「防寒対策をしていても、避難しているときに温かいものって欲しくなります。お湯は精神的にも安心感を与えますからね。まずは、火をおこすアイテムを紹介します。オススメはジェルタイプのパック燃料(写真右下のピンク色)です。一度火をつけると約20分燃えます。ちょうどお米1.5合が炊けるんですよ。材質はメタノールで、加熱調整する必要もない優れもので、なんと100円ショップで買えるんです」(和田さん。以下同)
「キャンプなどではガスバーナータイプを使う人が多いと思いますけど、ガスに比べて圧倒的な軽さと携帯性が魅力です。旅館で鍋料理が出されるときによく見るものですけど、ただね、約20分間、燃え続けますから、何を熱加工するか段取りをしっかり組むことが大切です。
火をつける役目としてスライド式のガストーチ(写真左下)も重宝します。このSOTO製はキャンパーもよく使っていると思いますけど、炎温度1,300度Cの強力耐風バーナーで、収納は縮めてコンパクトになるのでいいですよね!」
消耗品が手に入る生活圏のお店でさえ、アウトドアでも災害時でも十分に使えると話す和田さん。「最近の100円ショップは馬鹿にできない!(笑)」と聞いて、新しい視点でお店に行ってみたくなります。
クッカー選びのポイントはコンパクトさと熱伝導性
火をおこすアイテムの次は、調理グッズです。ここでも和田さんのこだわりがあります。
「多種多様なクッカーが登場しているので、クッカー選びだけで楽しくなるキャンパーも多いと思います。底面積が広く、熱が食材に伝わりやすい『フライパン型』や、バックパックにパッキングしやすい縦長の『深型』なんかもあります。
キャンプの場合、デザインの好みや適材適所で選んでもらえれば良いですが、今日持ってきているのは(写真右上)、蓋つきの『角型』として炊飯や山ごはんの調理で大人気のメスティンです。これでパエリアを作ったこともあります。災害時に使いやすいクッカー選びのポイントは、取手が折りたたみ式でコンパクトになったり、熱伝導性が高いものを選ぶと良いと思います。
それから、折りたたみ式のポケットストーブは必需品ですね(写真右上の下)。軽量かつコンパクトで、本折りたたみ式で携帯性に優れていますから、トレッキング、登山、ファストハイク、ソロキャンプ、釣りなど様々なアウトドアシーンに適用し、非常時にももちろん役に立ちます。私はバーベキューのサブとして使うこともありますよ!
そして、“お湯を沸かす”という最も大切なアイテムとして、ケトルも常備しておきたいですね。今日は長年愛用しているアルミ製のコンパクトケトルを持ってきました。熱効率が良いため0.6Lのお湯を短時間で沸かすことができます。傷がつきにくい加工が施されているので、少し荒っぽく使っても大丈夫です(笑)」
軽くて、コンパクトで、でも丈夫で、利便性にも優れているアウトドアグッズは、最小限の荷物で最大のパフォーマンスを必要とする災害時にとても重宝すると和田さんは力説します。
キャンプで飲む温かいコーヒーが好きな方も多いことでしょう。災害時に飲む温かいものは体を温めることはもちろん、心も温めてくれます。非日常を楽しむアウトドアスキルが、緊急時に活躍する。災害時に活躍するアウトドアグッズという視点はますます大切になる気がします。
<紹介したグッズ>
燃料:パック燃料 鍋・着火用(ダイソー)
ガストーチ:スライドガストーチ ST-480C(SOTO)
クッカー:メスティン(トランギア)
ポケットストーブ:Esbit(エスビット)
ケトル:パッカウェイケトル/0.6L(コールマン)
次回は「灯(あかり)」をテーマに引き続き、和田さんに解説して頂きます。
<PROFILE>
和田隆昌(わだ たかまさ)
NPO法人防災防犯ネットワーク防災担当理事。災害危機管理アドバイザーとして、自治体や企業の災害対策支援、被災地の視察、災害に関する講演活動、メディア出演を通じた情報発信を行なっている。アウトドア雑誌の編集者としての経歴を持ち、防災観点のアウトドア知識の活用などにも精通している。
著書:『中高年のための 「読む防災」』ワニブックスPLUS新書 など
取材・文/山田洋 撮影/横田紋子