リュウグウの砂を携え、小惑星探査機「はやぶさ2」が約52億キロ(太陽・地球間が約1億5000キロ)の旅を終え、オーストラリアのウーメラ砂漠に帰還したのが、2020年12月6日のこと。あれから1年。日本科学未来館(東京都江東区)で、12月13日(月)まで、リュウグウの“かけら”が公開されている。
はやぶさ2の実物大模型がぐるりと見られる
JAXA(宇宙航空研究開発機構)協力による特別企画『帰還一周年「はやぶさ2」カプセル&リュウグウの“かけら”大公開』の見どころを紹介しよう。
まず、全長約6メートルの「はやぶさ2」の実物大模型。360度ぐるっと見られて大迫力だ。
「はやぶさ2」は2回のタッチダウン(着陸)を行なったが、その2回目は、小型衝突装置によって人工的にクレーターをつくった上で行なわれた。1回のタッチダウンだけでも成功とされたミッションで、敢えて2回目に挑んだことも話題になったが、結果的に大成功を収めている。
直径40cmのカプセルに入っていた物は…?
昨年の12月6日、オーストラリアのウーメラ砂漠に着陸したカプセルはレプリカだが、その中に収納された機材は実物が展示されている。
電池、カプセル位置を知らせるビーコン、パラシュートを開く制御装置、地球投入時には最高温度1万度にもなる熱からカプセルを守るシールド、着陸前に開いたパラシュートなどなど。とてもきれいに保管されていることがわかる。
リュウグウの砂のかけらを拡大鏡で見る
リュウグウは火星と地球の軌道を横切るように回る小惑星だ。最大の見どころはリュウグウから持ち帰られた砂だ。今回の企画展では、2回のタッチダウンで得られた砂のかけらが1つずつ展示されている。両方が一度に一般公開されるのはこれが初めてのこと。
それぞれ直径2ミリほどのかけら。実際に拡大鏡をのぞいてみると、黒っぽい粒である。素人の目には、そのへんに落ちている砂や石の粒と見分けはつかない。
しかしこれが「ただの石に見えるかもしれませんが、つい2年半前まで宇宙にあった石のかけらです」と、JAXA宇宙科学研究所の副所長の藤本正樹さんは語る。さらにサンプルは現在、複数の研究機関で分析が進められているが、すでに水や炭素を含んでいた痕跡が示されていると言う。
1回目のタッチダウン(2019年2月)で得られた粒は「リュウグウの表層の粒」。2回目のタッチダウン(2019年7月)で採取された粒は「より深くから採取され、太陽の影響をより受けていない」と説明された。1つの小惑星から条件の異なる砂を採取できたことも、はやぶさ2ミッションが高く評価される理由だ。ちなみに、1回目のタッチダウン地点は「たまてばこ」、2回目のタッチダウン地点は「うちでのこづち」と呼ばれる。
企画展では、カプセルの地球帰還から、採取されたサンプル(砂)がどのような流れで運ばれ、分析されているかの説明も行なわれる。サンプルの分析や保管、その記録作りなどの一連の作業をキュレーションと呼ぶが、現在は個々のサンプル粒子についての記載が行なわれている段階。年内には、アメリカNASAにもサンプルを送る予定になっている。
では、いつになったら分析結果がわかるのだろうか? というと、未定。
「将来的には分析技術も進歩し、そこでまた新たに分析されることも考えられます。どこまで分析したら終わりとは言えない」(企画展担当者)そうだ。
「はやぶさ2」が、はるばる小惑星リュウグウまで行って砂を採取してきたのは、地球の成り立ちを調べるため。地球上の石や砂を調べても、地球が生まれた後のことしかわからず、隕石は地球突入時に高温にさらされ、さらにその後も地球の影響を受けて変質してしまっている。「はやぶさ2」のミッションの先にあるのは、小惑星の砂や石に含まれる情報をもとに、もともと地球がいつ、何から、どのように生まれたのかの究明である。
リュウグウの砂のかけらから解き明かされるものは何か。地球はいつ、どこで、そのように生まれたのか? 他の惑星は? 太陽系は? しばし宇宙と地球に思いをはせてみよう。
会期:12月4日(土)〜13日(月) 10時〜17時 *7日(火)は休館日
会場:日本科学未来館(東京都江東区青海2丁目3−6)
入場料:大人630円、18歳以下210円、未就学児無料
協力 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
取材・文・撮影/佐藤恵菜