キャンピングカーの買い替え
決して安い買い物ではないキャンピングカー。しかしアンケートなどからわかるのは、多くのユーザーが「買い替え」を経験しているという事実です。
耐用年数の経過など、必要に迫られてのケースもあろうかとは思いますが、意外なほどの早期売却もあるようです。
たとえば日本RV協会のユーザーアンケート(2015)によると、1台目→2台目の買い替えを希望する理由は「使ってみると満足できない部分もあり、より自分に合ったものが欲しくなった」がトップ!
実は私も、過去に一度購入を失敗しています。
熟考して決断するはずなのに、どうして失敗が起こるのか。恥ずかしながら、私の経験をありのままお伝えします。
なお、失敗の原因の多くは「車の品質そのもの」と、「ユーザーの選び方」に分けられるはずです。今回は完全に後者であり、ビルダーの落ち度ではないことにご留意ください。
買ったのはこんな車
当時購入したのは、トヨタの「ライトエース」をベースにしたバンコン(バンをベース車両にしたキャンピングカー)。
就寝定員2名のフルフラットベッドに、水道設備、電子レンジ、ソーラーパネルを備え、ポップアップルーフ加工すれば8ナンバー登録も可能。キャンピングカーとしては小型ですが、小さなボディにたくさんの装備をギュギュッと詰め込んだ一台でした。
歴代の愛車は女性向けのコンパクトカーで、それでさえ凹ませたり、こすったりといったアクシデントは何度かあり、大きな車には苦手意識がありました。ぎりぎり運転できるのは「ライトエース」や日産「NV200」のようなコンパクトミニバンかな、というところだったのです。
また「生まれて初めてのキャンピングカー」だったので、本当に利用価値があるか、いつまで乗るかわからないという気持ちもありました。そのため、あまりに高額な買い物になるのを避ける心理も働きました。
結果的には当初の倍の金額がかかる乗り替えをするので「安物買いの銭失い」なのですが、失敗したときの傷を小さくしようと「中途半端」になってしまったんですね。
キャンピングカーの購入では、契約から納車まで半年以上かかることが普通です。いまか、いまかと待ちわびた納車日。ついに新車と対面した日は、天にも昇る気持ちでした。
ところが、です。
ベッドサイズの誤算
ベッドサイズは幅100cm×長さ180cmでした。法律上は大人1人あたり幅50cmあればいいので、就寝定員2名の基準を満たしているのですが、これはホテルなどでいうとシングルベッドサイズにあたります。
最近のビジネスホテルではセミダブル(120cm幅)をシングル利用できるところも多いので、いかに小さいかわかりますね。横幅100cmは、とても大人2人がゆっくりできるサイズではありません。
また、立っているときには身長180cmの人でも、寝そべると足が伸びるぶんスペースが必要になります。枕などの寝具を使うことを考えれば、身長プラス20cmほどのマージンは欲しいところです。
けれども私は「法律で決まっている」「同じタイプのキャンピングカーがたくさん流通している(=みんな使えている)」ということから、快適性を疑いもしませんでした。試しに寝そべってみることもしなかったのです。
結果、やはりベッドは狭い。2人なら肩と肩が触れあうほどです。寝返りを打つにも一気には回れず、少しずつ身体をずらすしかない。同乗者を起こさず寝返りを打つことは不可能です。
たたみ1畳ほどのスペースに、大人2人が寝ていることを想像していただければ、窮屈さが伝わるかもしれません。着替えをするにも、荷物の整理をするにも一苦労。仲のいい家族ならともかく、もし夫婦げんかの最中だったら……!
また、FFヒーターにしろインバーターにしろ冷蔵庫にしろ、狭い車内ではすべてがぴったり枕元にあるような感覚です。耳元でブーンと響く動作音が想像以上に大きい! 夜間はスイッチを切るしかありません。いろいろな意味で「眠れない」車になってしまいました。
不要だった装備
キャンピングカーを買ったならきっとキャンプをするだろうと、オプションでつけたサイドオーニングも「宝の持ち腐れ」でした。
もとから文化遺産や街歩きが好きで、アウトドア遊びはほとんどしない私。車を買ったからといって急にスタイルが変わるわけはなく、行き先は観光地に近い市街のRVパークが中心。結局、一度もサイドオーニングを展開しなかったのです。
さらに電子レンジも水道設備もほとんど使いませんでした。先の理由と同じで、自炊するよりも旅先で話題の店を訪ねるのが楽しみで、基本的に外食なのです。
つまり、自分の旅のスタイルと、車の装備がまったく合っていなかった。
いま思うに、コンパクトなボディを活かすのならば、水道設備も電子レンジも置かず、寝ることに特化すればよかったのです。8ナンバー登録にこだわる必要もありません。あれもこれも、という充実設備が車内を狭くし、かえって使いにくくなっていました。
故障は自己責任
それだけならまだよかったのですが、いくつかの故障や不具合が重なりました。ビルダーは誠実に対応してくれたものの、「次はどこが壊れるか」と悩みが尽きません。
よくいわれるのですが、キャンピングカーは「改造車」です。水もれ、電装トラブル、過積載によるタイヤの異変など、普通車では考えられないトラブルも多く起こります。
各ビルダー、独自の基準を設けて品質を追求しているかとは思いますが、最後は自己責任です。信頼できるビルダーを自分で見つけるしかありません。
遠方のビルダーから購入したために修理におもむくのも大変で、ついには「乗り続けるのは無理」という結論に達したのでした。
リセールバリューのあるうちに、ということで売却を決意。納車から売却を決めるまでわずか1年。実際に売却したのは納車から約1年半後のことでした。
失敗から得た教訓
失敗の要因は、キャンピングカーがどういうものか、自分が求める機能はなんなのか、を明確にせずに買ってしまったことに尽きます。
「ビルダーが提供する形」を過信してしまったのも、よくなかったです。一定の実績があるのだから、きっと最善の形だろう、という思考停止状態でした。本当は、自分にフィットする車はひとりひとり違うのです。
たとえば私が買った車も、おそらくシングルユースには十分です。車内に電子レンジがあるのは、コンビニで買ったものをさっと食べたい人には便利でしょう。多少の故障も、ビルダーの所在地近くに住んでいれば問題ありません。
その後、紆余曲折を経て現在の一台に巡り合いましたが、手痛い授業料でした。ビルダーが自信をもって出しているキャンピングカーでも、自分に合うとは限りません。
住宅でいうならば、多くの人の平均値にマッチするのが「建売住宅」だと思いますが、キャンピングカーには平均値なんてないのでは、とさえ思います。ではどんなところに気をつけたらいいのか、別の機会にまたお伝えしたいと思います。