「ORGANIC FARM 暮らしの実験室」(以下、暮らしの実験室)で年末の恒例になっているのが「ラーメンワークショップ」。畑の野菜を収穫し、小麦を粉にして麺をつくり、ニワトリをさばいてスープをとるところまで、すべて原材料からラーメンを作るのである。
日本人には身近なラーメンだが、それがどんなものでできているかというと、実はあまりよくわからなかったりする。インスタントラーメンはもとより、多くの店で供されるラーメンは添加物や保存料、化学調味料などがいっぱい。言ってみればブラックボックス。スープの上にのった薄いチャーシューを食べるとき、果たしてどれだけの人がそこに命があったことを感じるだろうか。
暮らしの実験室のラーメンは、豚骨と鶏ガラでスープをとる。そこでまずやるべきことはニワトリを絞めて捌くこと。ニワトリをしっかりと押さえ、首の頸動脈を切れば、血が流れ出て、2〜3分経つとそれで絶命。その後、60〜65度の熱湯に2分ほどつけ、毛穴を開いて毛をむしると、そこにあるのはもうお肉だ。これがラーメン作りのスタート。あとは肉をさばいて、残ったガラでスープをとる。
麺は製粉した小麦を練ってつくる。もちろんこれも農場でとれた有機無農薬の小麦である。小麦の種をまいたのは1年前の秋。収穫は翌年6月ごろ。食べ物を作るって大変なのだ。
ブタは食肉処理場に送られてお肉になる。骨も戻ってくる。骨はスープに、肉はチャーシューにするわけだが、豚舎の柵に顔をのせて、つぶらな瞳でこちらを見るブタたちを見ると、ちょっと複雑な気持ちだ。ニワトリもそうだが、食べるというのは、つまりそういうことなのだ。私たちはほとんど場合、食べるという行為のその最終段階しか知らない。
ほぼ、1日がかりのラーメン作り。
普段、私たちが、手軽に食べているラーメンもちゃんと作ろうと思えばこうなる。
たかがラーメンとはいえ、それを通して、何か都会では見えない、本当は知らなくちゃいけないことがいろいろ見えてくる気がする。
身の回りにあるけれど、考えてみるとよくわからないこと。そういう“どこか遠いものを自分ごとにしていく”。これ、暮らしの実験室の隠れたテーマです。
『ORGANIC FARM 暮らしの実験室』
住所:茨城県石岡市柿岡1297-1
TEL:0299-43-6769
URL:http://www.kurashilabo.net/
文/和田義弥 写真/ORGANIC FARM 暮らしの実験室